講演情報
[S13-3]難病遺伝医療における保険診療の道のりと課題
○黒澤 健司 (神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
難病領域の遺伝学的検査(D006-4)は、平成18年の進行性筋ジストロフィー症のDNA診断以降に始まり、令和4年度診療報酬改定では新たに53疾患が追加となった。したがって現在は、全部で約200近い疾患の遺伝学的検査が保険適用となっている。また、時期同じく、昨年2021年10月からマイクロアレイ染色体検査(令和4年度診療報酬改定ではD006-26染色体構造変異解析)も保険適用となり、算定の要件としてはD006-4に準じた形になっている。こうした一連の流れは、確実に難病領域の遺伝学的検査が充実しつつあることを物語っている。しかし、遺伝学的検査が診療上必要な遺伝性疾患は多く残っている。遺伝学的検査の適用の条件となる分析的妥当性、臨床的妥当性、臨床的有用性を精査し、遺伝学的検査の導入を計画してゆくことは今後も重要と思われる。一方で、遺伝子・ゲノムの解析技術としては、個別の疾患・遺伝子ではなく、全ゲノム領域を対象とする網羅的な解析技術が主流になりつつある。技術的には、シーケンス機器、ライブラリーキット、解析パイプライン、データベース、いずれも一定レベルに達しつつある。つまりエクソーム解析を医療に持ち込む準備は整いつつある。そうなると、課題は精度、結果返却、解釈、遺伝カウンセリングなど、体制的な問題にフォーカスが絞られてくる。データ返却が検査センターからなされ、解釈を加えることによりその意義が生まれるマイクロアレイ染色体検査の保険適用はその前段階に位置付けられるかもしれない。シンポジウムでは、こうした保険適用となった遺伝学的検査の経緯や枠組み、今後の方向についてまとめたい。