講演情報
[S14-1]難病の全ゲノムシークエンス解析とデータ基盤の構築
○河合 洋介 (国立国際医療研究センター 研究所 ゲノム医科学プロジェクト)
次世代シークエンサーが医学研究や臨床検査に活用されるようになって久しい。難病領域ではターゲットキャプチャシークエンスによる既知の病原変異の同定や全エクソン解析による単一遺伝性疾患の新規変異探索に活用されている。一方、ゲノムの網羅的なショットガンシークエンスである全ゲノムシークエンス解析(WGS解析)は主に基礎研究で利用されてきた。次世代シークエンス技術の成熟と普及によりWGS解析を病気の診断や治療方針の決定に直接使う臨床応用も進みつつある。英国では希少遺伝性疾患とがんの患者とその家族を対象にWGS解析を行い、診断や治療に結びつける取り組みが大規模に行われている(Genomics England)。日本では2019年に厚生労働省が「全ゲノム解析等実行計画」を公表し難病とがんの個別化医療を推進するためにWGS解析を活用する方針が示された。国立国際医療研究センターでは難病のゲノム医療の実現に向けたさまざまな取り組みを行っている。難病のゲノム研究に先立ちコントロールとして利用可能なデータをナショナルセンターバイオバンクネットワークの保管サンプルのWGS解析を実施した。このゲノムデータの取得は東北メディカル・メガバンクやバイオバンクジャパンなどの拠点とプロトコルを共通化して汎用性の高いデータを取得することを目指した。令和2年度からはこれまでに難病研究で集められてきたDNAサンプルのWGS解析を実施し、臨床情報とともに研究応用可能なデータベースの構築を行っている。さらに令和3年度からは医療機関と協力して難病患者から新たに同意を得てWGS解析によって従来の遺伝子検査では解析が難しかった症例について病名の絞り込みと治療法開発につなげる実証研究も始めている。本演題ではこれらの取り組みの紹介をする。