講演情報

[S14-2]東北メディカル・メガバンク計画におけるゲノム解析とデータの利活用

木下 賢吾1,2 (1.東北大学 東北メディカルメガバンク機構, 2.東北大学大学院情報科学研究科)
東北メディカル・メガバンク計画では、一般住民15万人の協力を得た前向きゲノムコホートの構築を行ってきた。現時点で、ベースライン調査と1度の追跡調査を完了し、現在は2度目の追跡調査を実施中である。このコホートは、日本人集団で最大規模の前向き一般住民ゲノムコホートとして、日本人のためのゲノム医療実現推進に向けての利活用が期待されている。
ゲノム解析としては、現時点で約5万人、将来的には10万人規模の短鎖シークエンサによる全ゲノム解析を官民一体となって実施している。この結果は、日本人一般住民集団のゲノム参照パネルとしてがんゲノム医療などのゲノム医療の現場や希少疾患の原因変異の絞り込みにも活用され始めている。参照パネルの規模を拡大することで、より観察頻度の低い変異をカタログ化し、病気の原因変異の絞り込みの精度向上を目指している。一方で、短鎖シークエンサの課題である構造多型の検出の限界を克服するために、長鎖シークエンサを用いた構造多型参照パネルの構築も進めている。長鎖リード解析はまだ費用面や技術面で大規模化することが困難であるため、ToMMoのコホートの特徴の一つである血縁関係のある111トリオ(333サンプル)を用いて、遺伝継承性から精度検証も実施しつつ、参照パネルの構築、公開を行った。さらに医療現場での利用を目指した精度向上策として、国際参照配列に変わる日本人基準ゲノムの構築も実施し、昨年12月にはその最新版であるJG2.1の公開を行った。
 本講演では、東北メディカル・メガバンク計画の狙いと、以上のようなゲノム解析の現状と今後の計画について紹介し、コントロール群のゲノムデータの公開という形でのゲノム医療の基盤構築による未来型医療への展望を述べたい。また、ToMMoの基盤活用として、情報利用の仕組みについても簡単に紹介する。