講演情報
[S17-3]染色体を切る、削る、眠らせる -iPS細胞とゲノム編集による自由自在なダウン症研究-
○北畠 康司 (大阪大学大学院 医学系研究科 小児科)
人工多能性幹細胞(iPS細胞)の発明は生命科学に新たな波をもたらし、ゲノム編集技術と組み合わせることでより深く踏み込んだ研究が進むと期待されている。私たちはダウン症新生児の臍帯血由来iPS細胞にゲノム編集技術を組み合わせることで、その多様な病態の発症メカニズムの研究を行っている。21番染色体そのものの選択的除去、ダウン症重要領域(Down syndrome critical region)とされる4Mb配列の欠失、XISTをもちいた可逆的な21番染色体の不活化誘導など、染色体工学を駆使することによって詳細かつ正確な疾患モデル系の構築に成功している。この細胞系をもちいて造血系へと分化誘導することで、ダウン症新生児に頻発する一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis;TAM)の病態を明らかにし、かつその責任遺伝子の同定に成功している。さらに1つの21トリソミーiPS細胞をもとに多様なゲノム編集を施すことで15種類以上のcell lineを確立した。これらはすべて遺伝子背景(genetic background)を共有していることから表現型のばらつきが小さく、より詳細な表現型解析が可能となる。このisogenicな細胞パネルを神経・アストロサイトへと分化誘導し、知的障害発症に重要な役割を果たすアストロサイトの異常増殖の原因遺伝子を同定することができた。
ダウン症候群は多くの遺伝子が関与する複雑な疾患であり、多角的な切り口からアプローチすることによってはじめてその全貌が明らかになる。本セッションではそのひとつの例としてご紹介するとともに、今後の治療薬開発への道についてもお話ししたい。
ダウン症候群は多くの遺伝子が関与する複雑な疾患であり、多角的な切り口からアプローチすることによってはじめてその全貌が明らかになる。本セッションではそのひとつの例としてご紹介するとともに、今後の治療薬開発への道についてもお話ししたい。