講演情報

[S2-2]母体血漿中cfDNA分析による重症胎児発育不全に伴う胎盤限局性モザイクの出生前検査の検討

宮上 景子1,2, 白土 なほ子1, 和泉 美希子1, 廣瀬 達子1, 安井 理1, 濱田 尚子1, 松岡 隆1, 鈴森 伸宏2, 関沢 明彦1 (1.昭和大学 医学部 産婦人科学講座, 2.名古屋市立大学 産科婦人科学講座)
【目的】
胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)の原因は様々で、染色体異常が胎盤のみに存在する胎盤性モザイク(CPM:confined placental mosaicism)はその原因の一つとされる。母体血漿中cell-free DNA(cfDNA)をmassively parallel sequencing(MPS)法で解析することで胎児染色体異常の検出が可能であるが、その胎児cfDNAの大部分は胎盤由来であり、胎盤の染色体変化の検出が可能である。FGRの原因としてCPMの影響を調べ、FGR症例の中にCPMがどの程度存在するか、またcfDNAの解析が妊娠中にCPMを診断する方法となり得るか、さらには胎盤の染色体異常が胎児発育に及ぼす影響について検討することを目的とした。
【方法】
研究期間中に管理した胎児推定体重が-2SD以下のFGR53症例を対象に母体血漿中cfDNAをMPS法で解析し、染色体異数性を検出した。その結果を羊水あるいは臍帯血、および娩出胎盤の染色体検査結果と比較しCPM症例を確認した。
【結果】
母体血漿中cfDNAを解析した結果、53例中6例(11.3%)でCPMを確認した。6例の内訳はTrisomy2 : 2例、Trisomy 22 : 1例、Trisomy 16 : 1例、2番染色体由来のマーカー染色体 : 1例、7番染色体の低頻度モザイク: 1例であった。この6症例の中で、胎盤全体が常染色体トリソミーであった5例はFGRの程度がより高度であった。16番染色体トリソミーのCPM症例は、胎児の核型は正常であったが片親ダイソミー(UPD)の可能性を考え、出生後にSNP microarray検査を実施し、新生児はUPD16であることを確認した。この情報は小児科と共有し、継続的周産期管理を行った。
【結論】
FGR の中には CPM が関与していることがあり、その場合 FGR の程度はより重篤であった。表現型異常のないFGRの場合、母体血漿cfDNAを分析することで、非侵襲的にCPMの関与をスクリーニングすることが可能である。FGRの原因を特定することで、今後重症FGRの個別化した周産期管理につながる可能性を示唆している。