講演情報
[S20-2]ゲノム検査におけるクローン性造血
○片岡 圭亮1,2 (1.慶應義塾大学 医学部 血液内科, 2.国立がん研究センター研究所 分子腫瘍学分野)
近年、本邦においても主に固形がんを対象として、多数の遺伝子を同時に調べる遺伝子解析パネルを用いたゲノム医療が普及しつつある。最近では、従来のがん組織由来のDNAを解析対象とする検査に加えて、血液検体に含まれる腫瘍循環DNAを解析対象とするリキッドバイオプシー検査が承認され、遺伝子解析パネル検査がより広く実施されている。後者のリキッドバイオプシー検査時の問題点の一つとして、腫瘍自体に存在する体細胞異常と、混在するクローン性造血に由来する異常の区別が挙げられる。クローン性造血とは、健常者においても末梢血に体細胞異常を認める状態のことであり、若年者では稀であるが、加齢とともに増加し、高齢者の約10%に認める。クローン性造血がある場合、造血器腫瘍を発症しやすく、特に併存する固形がんに対して化学放射線療法を受けた場合に、治療関連白血病・骨髄異形成症候群を発症するリスクが高い。さらに、欧米では心筋梗塞・脳卒中などの心血管障害の最大のリスク因子になることから大変注目されており、それ以外にも痛風や慢性閉塞性肺疾患への関与などが疑われている。クローン性造血では、DNMT3A、ASXL1、TET2など骨髄系腫瘍で認められる遺伝子変異の頻度が高いが、固形がんにおけるリキッドバイオプシーでは、TP53、ATM、CHEK2変異などの区別が重要となる。一方、治療関連骨髄性腫瘍においては、TP53やPPM1Dなどの変異が病態の進展に関与する。本発表では、クローン性造血の分子機構や病態、合併症、および、関連するゲノム検査における注意点などを含めて概説する。