講演情報
[S20-4]原発性免疫不全症に対する“遺伝子医療”の現状と展望
○内山 徹 (国立成育医療研究センター 成育遺伝研究部)
原発性免疫不全症(inborn errors of immunity: IEI)は、免疫系の分子の異常によって引き起こされる疾患である。現在400を超える原因遺伝子が報告されているが、早期の診断と治療によってその予後は比較的良好である一方、診断の遅れが致死的経過をもたらすことも多い。このような背景から、日本においては遺伝子解析を含めた早期診断のための体制づくりが進められ、現在、全国の免疫異常が疑われる患者に対して、専門家によるコンサルトおよび診療体制が確立されている。さらに、最重症のIEIである重症複合免疫不全症(severe combined immunodeficiency: SCID)は、海外を中心に新生児スクリーニングが普及しており、これらの国ではスクリーニングで発見される疾患となりつつある。感染症発症前の発見・診断は、造血幹細胞移植を含めSCID患者の治療成績・予後を大きく向上させることから、近年、日本においても導入の機運が高まってきている。
また、治療においても、IEIの多くが単一遺伝子の異常に起因していることや、造血細胞移植によって根治が可能であることから、造血幹細胞を標的とした遺伝子治療が1990年代より開発されてきた。機能遺伝子を導入された幹細胞は、造血細胞移植と同様に幅広い血球系における遺伝子の発現を可能にし、その結果患者の免疫機能の回復が期待できる。さらに、遺伝子治療では自己の細胞を用いることから、造血細胞移植でしばしば認められる移植片対宿主病(GVHD)の危険が無く、また一度の治療で根治が見込めるため、海外ではHLA一致ドナーが不在の患者に対して有効な治療選択肢として認識されている。このように、IEIを含めた小児の遺伝性疾患に対しては、診断から治療までを含めた「遺伝子医療」の確立が今後より一層重要になると考えられる。
また、治療においても、IEIの多くが単一遺伝子の異常に起因していることや、造血細胞移植によって根治が可能であることから、造血幹細胞を標的とした遺伝子治療が1990年代より開発されてきた。機能遺伝子を導入された幹細胞は、造血細胞移植と同様に幅広い血球系における遺伝子の発現を可能にし、その結果患者の免疫機能の回復が期待できる。さらに、遺伝子治療では自己の細胞を用いることから、造血細胞移植でしばしば認められる移植片対宿主病(GVHD)の危険が無く、また一度の治療で根治が見込めるため、海外ではHLA一致ドナーが不在の患者に対して有効な治療選択肢として認識されている。このように、IEIを含めた小児の遺伝性疾患に対しては、診断から治療までを含めた「遺伝子医療」の確立が今後より一層重要になると考えられる。