講演情報
[S3-3]網羅的な解析における遺伝カウンセリングのポイント
○伊藤 志帆 (東京都立小児総合医療センター 看護部)
ゲノム医療時代において遺伝カウンセリングのニーズは多様化しつつある。わが国では、難病領域における網羅的な解析の臨床実装に向け、2015年に未診断疾患イニシアチブ(IRUD)による全国規模での網羅的ゲノム解析研究が始動し、2021年にはマイクロアレイ染色体検査が保険収載化された。これらの新たな解析手法の導入により未診断疾患における診断率の向上が期待される一方で、結果の解釈は容易ではなく、長期にわたる検査行程、過半数では診断に至らないなどの特性がある。遺伝学的に診断された場合でも、超希少疾患や新規疾患など医学的知見が限られること、Dual diagnosisの可能性など、網羅的な解析ではあらゆる可能性が想定される。検査前説明においては難解な情報をどのように伝えるか、各種検査の特性に関する遺伝学的知識およびカウンセリング技術が意思決定支援において求められる。
未診断疾患をもつクライエントとその家族が抱く心理社会的背景を想定しておく必要がある。クライエントのライフステージや症状の程度は受容段階に影響し、コーピングスタイルによっても検査を希望する時期は異なる。障がい観、診断への思い、遺伝的影響の受け止め方は、家族内で一様ではないこともある。継続的な関わりのなかで、その時々の思いの変化を汲み取り、クライエントにとっての自分らしさを共に考える姿勢がのぞまれる。診断を追求する行程が過去の経験を振り返る端緒となり、さまざまな葛藤や思いが表出されることが多い。遺伝専門職には、個々の患者家族の診断を追求する旅(diagnostic odyssey)の並走者としての役割が期待される。遺伝カウンセリングにおける診断の意義をともに考えるコミュニケーションプロセスは、新たな網羅的な解析手法が登場した際も重要視される要素と考える。
未診断疾患をもつクライエントとその家族が抱く心理社会的背景を想定しておく必要がある。クライエントのライフステージや症状の程度は受容段階に影響し、コーピングスタイルによっても検査を希望する時期は異なる。障がい観、診断への思い、遺伝的影響の受け止め方は、家族内で一様ではないこともある。継続的な関わりのなかで、その時々の思いの変化を汲み取り、クライエントにとっての自分らしさを共に考える姿勢がのぞまれる。診断を追求する行程が過去の経験を振り返る端緒となり、さまざまな葛藤や思いが表出されることが多い。遺伝専門職には、個々の患者家族の診断を追求する旅(diagnostic odyssey)の並走者としての役割が期待される。遺伝カウンセリングにおける診断の意義をともに考えるコミュニケーションプロセスは、新たな網羅的な解析手法が登場した際も重要視される要素と考える。