講演情報

[S5-1]なぜ教育改革に成人教育理論が必要なのか?

蒔田 芳男 (旭川医科大学病院 遺伝子診療カウンセリング室)
現在、学会で活動している先生方は、育ち方も共通であることを御存じでしょうか?
多くの先生は、たくさん知識を詰め込めば良い人になり、良い医療人になると信じられていた「詰め込み型知識」時代に育ってきましたよね。これをプロセス基盤型教育といいます。さて、周りを見てみましょう。この教育方法は、良き医療人になることを保証しているでしょうか?つまり、知識の量は、良き医療人であることと一致しているでしょうか?
いまや、その知識は膨大になり、かつ改変の速度が増加しています。知識は手の中に入る端末で調べることができる時代になってきています。そんな時代に「詰め込み型知識」は役に立っているのでしょうか?
今や、「詰め込み型知識」を持つ時代から、「そこにある知識を使いこなす時代」に入っていることを実感せざるを得ない状況にありませんか?私たちは、物事を学ぶには、目的、準備性や動機付けがどうしても必要になります(Knowles MS, 1970)。そのような考え方が成人教育理論であり、この理論に親和性の高いのがアウトカム基盤型教育になります。
アウトカム基盤型教育では、「何ができる人なのか?」というアウトカムを先に立て、その習得に必要な要素を構築し、構築された要素を受け入れることができる人を教育するという方法になります。カリキュラムの構築面では、積み重ねていけば、出来あがりはこのようなはずというプロセス基盤型教育とは真逆なアプローチとなるのは、そこに理由があります。
現在進行している教育改革がどのような状態にあるのか?の理解の助けとなるべく、アウトカム基盤型教育の中での位置づけがわかるよう今回のプレナリーレクチャーは構成されています。これからの学会の発展のために現状がどこにあるのか?を共有したいと思います。