講演情報

[S5-2]臨床遺伝専門医には何が求められているのか:臨床遺伝専門医行動目標

山田 崇弘 (京都大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
「これまでどうだったのか」
臨床遺伝専門医制度は、2002年に日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会が共同認定する専門医の制度として開始された。到達目標は、全ての診療科からのコンサルテーションに応じ、適切な遺伝医療を実行するとともに、各医療機関において発生することが予想される遺伝子に関連した問題の解決を担う医師とされた。この到達目標(総論)の達成のために、旧来のプロセス基盤型教育に基づいていた到達目標(各論)が設定された。
「何が課題だったのか」
ヒトゲノム計画の完了や、次世代シークエンサーの発展・普及とともに網羅的なゲノム医療への対応が求められるようになったこと、そして2014年に発足した日本専門医機構による専門医改革などから、本専門医に対する考え方も大きく変わった。一番大きな問題は、臨床遺伝専門医は、具体的に何ができる専門医なのか?というアウトカムの実現のために必要な項目が網羅されているか?であった。
「どう変わった/これからどう変わっていくのか」
新たな目標は、アウトカム基盤型教育に基づき、学習者が最終的にどのようなことができるようになるかに焦点を当てて作成された。臨床遺伝専門医が行うべき行動という考え方に基づいて作成されたために、これまでの到達目標という呼称ではなく「臨床遺伝専門医行動目標」と改称された。2018年のパブリックコメントを経て、2019年に公表された。この行動目標とキーワードを網羅する教科書(臨床遺伝専門医テキストシリーズ全5巻)の発刊と遺伝医学セミナー改変によって学習方略が整備された。2022年からは、本行動目標に基づいた筆記試験と実技試験によって学習者評価が開始されることとなった。