講演情報
[S6-2]長鎖シークエンス技術を用いたゲノム、トランスクリプトーム解析
○藤本 明洋 (東京大学医学系研究科 人類遺伝学教室)
次世代シークエンサー(NGS)は、リード長が短く、構造異常や転写産物全長の解析が難しいと考えられている。我々は、長鎖シークエンス技術を用いて、構造異常/多型の検出、および転写産物全長の解析を行った。
Oxford Nanoporeシークエンサーを用いて日本人11人(正常組織および肝癌)の全ゲノムシークエンスを行った。構造異常を検出したところ、8,004挿入、6,389欠失、27逆位、32重複が複数の個体から検出された。挿入の多くはトランスポゾンの挿入であった。また、プロセス型偽遺伝子の挿入も検出された。欠失の切断点の配列を解析したところ、欠失生成のメカニズムが推定された。非相同組換えによる欠失は、NGSを用いた先行研究では検出されていなかった。体細胞の変異解析においては、約1.5倍の構造異常が検出され、これらの中にはドライバー遺伝子の新規構造異常が含まれていた。さらに、NGSでは検出が困難な挿入の全長、複数の構造異常の集積、B型肝炎ウイルスの挿入の構造が観測された。
長鎖シークエンス技術は、転写産物全長の解析にも有用であると考えられる。我々は、トランスクリプトームの解析手法を開発し、肝癌と非癌部肝臓のトランスクリプトーム解析を行った。その結果、肝癌組織から60,011種類、非癌部肝臓から51,506種類の転写産物が同定され、 約7%はデータベースにない新規転写産物であった。また、B型肝炎ウイルス(HBV)とヒトの融合転写産物を同定した。特に、癌部では、ヒトのトランスポゾン(TE)とHBVの融合遺伝子が検出された。細胞株を用いた実験の結果、本研究で同定された複数の転写産物が細胞増殖活性に影響することが示唆された。これらの研究は、長鎖シークエンス技術の有用性を強く示唆する。
Oxford Nanoporeシークエンサーを用いて日本人11人(正常組織および肝癌)の全ゲノムシークエンスを行った。構造異常を検出したところ、8,004挿入、6,389欠失、27逆位、32重複が複数の個体から検出された。挿入の多くはトランスポゾンの挿入であった。また、プロセス型偽遺伝子の挿入も検出された。欠失の切断点の配列を解析したところ、欠失生成のメカニズムが推定された。非相同組換えによる欠失は、NGSを用いた先行研究では検出されていなかった。体細胞の変異解析においては、約1.5倍の構造異常が検出され、これらの中にはドライバー遺伝子の新規構造異常が含まれていた。さらに、NGSでは検出が困難な挿入の全長、複数の構造異常の集積、B型肝炎ウイルスの挿入の構造が観測された。
長鎖シークエンス技術は、転写産物全長の解析にも有用であると考えられる。我々は、トランスクリプトームの解析手法を開発し、肝癌と非癌部肝臓のトランスクリプトーム解析を行った。その結果、肝癌組織から60,011種類、非癌部肝臓から51,506種類の転写産物が同定され、 約7%はデータベースにない新規転写産物であった。また、B型肝炎ウイルス(HBV)とヒトの融合転写産物を同定した。特に、癌部では、ヒトのトランスポゾン(TE)とHBVの融合遺伝子が検出された。細胞株を用いた実験の結果、本研究で同定された複数の転写産物が細胞増殖活性に影響することが示唆された。これらの研究は、長鎖シークエンス技術の有用性を強く示唆する。