講演情報
[S7-1]不育症における染色体異常とPGT-SR, PGT-A
○加藤 恵一 (加藤レディスクリニック)
本邦では日本産科婦人科学会主導のもと、2006年に習慣流産(反復流産を含む)の染色体転座保因者に対するPGT-SR(preimplantation genetic testing for structural rearrangements)が、夫婦の保因する染色体構造異常に起因する流死産の回避を主たる目的として開始された。2017年には妊娠年齢の高齢化等による胚の配偶子形成時の減数分裂不分離がもたらす染色体数的異常胚の移植による妊娠不成立や流死産の回避を主たる目的とした「原因不明習慣流産(反復流産を含む)および反復体外受精・胚移植(ART)不成功例を対象としたPGT-A(PGT for aneuploidy)の有用性に関する多施設共同研究のためのパイロット試験」が施行され、2019年12月末からの「体外受精・胚移植ART不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象としたPGT-Aの有用性に関する多施設共同研究」開始にてPGTは急速に広まっている。
当院では2022年3月までに175組の染色体構造異常保因夫婦に対して当該染色体へのFISH法によるPGT-SRを実施し、134名の健児を得た。移植あたりの臨床妊娠率は58.8%、妊娠あたりのpregnancy loss率は19.5%で、流産絨毛染色体分析を実施した症例では保因する転座に起因する不分離は認めなかったが、他染色体に数的異常を認めた症例が散見された。
また、PGT-Aへは約1000組の夫婦が参加した。約5000個の胚盤胞を検査し、正倍数性は約20%、染色体異数性は約73%、モザイクは7%弱であった。正倍数性胚の移植あたりの妊娠率は約70%、流産率は約7%で、妊娠率の向上および流死産回避の観点におけるPGT-Aの有用性は明らかであった。一方では正倍数性胚を得られず移植に至らない夫婦がPGT-A参加患者の約40%を占めることや、正倍数性胚で妊娠しても約7%は流産の転帰となること等、PGT-Aの限界も可視化されつつある。
今回我々は、当院にてPGT-SRならびにPGT-Aを実施した経験から、不育症診療におけるPGTの意義について考察する。
当院では2022年3月までに175組の染色体構造異常保因夫婦に対して当該染色体へのFISH法によるPGT-SRを実施し、134名の健児を得た。移植あたりの臨床妊娠率は58.8%、妊娠あたりのpregnancy loss率は19.5%で、流産絨毛染色体分析を実施した症例では保因する転座に起因する不分離は認めなかったが、他染色体に数的異常を認めた症例が散見された。
また、PGT-Aへは約1000組の夫婦が参加した。約5000個の胚盤胞を検査し、正倍数性は約20%、染色体異数性は約73%、モザイクは7%弱であった。正倍数性胚の移植あたりの妊娠率は約70%、流産率は約7%で、妊娠率の向上および流死産回避の観点におけるPGT-Aの有用性は明らかであった。一方では正倍数性胚を得られず移植に至らない夫婦がPGT-A参加患者の約40%を占めることや、正倍数性胚で妊娠しても約7%は流産の転帰となること等、PGT-Aの限界も可視化されつつある。
今回我々は、当院にてPGT-SRならびにPGT-Aを実施した経験から、不育症診療におけるPGTの意義について考察する。