講演情報

[SL3]時局講演

丸川 珠代 (参議院議員)
2018年より全ゲノム解析等の推進を自民党内から訴えてきた。全ゲノム解析・マルチオミックス解析等の結果を、臨床情報とともに搭載する情報基盤の構築は、日本人のための創薬、我が国におけるゲノム医療実装の基礎を成すものと考える。新たな治療法や医薬品の開発は、全ゲノム解析・オミックス解析情報を活用し、分子レベルまで進化した疾患メカニズムの解明を起点とする手法に軸足を移しつつある。日本の医薬品市場の規模や将来性を鑑みれば、日本人のための創薬に必要な日本人のゲノム情報基盤への投資は、国家が責任をもって行う必要がある。まず、全ゲノム解析等実行計画の掲げる2023年からの本格的なデータ共有開始を着実に実現したい。
 既に米英を中心に、豊富なゲノムデータセットの利活用が可能ではあるが、全ゲノム解析・マルチオミックス解析情報と共に、患者の経時的な臨床情報を収集・提供できている情報基盤は、世界に未だ存在しない。仮に我が国が、臨床経過の追跡性が高く、欠損の少ない臨床データと、幅広いオミックス解析データを基盤上に提供できれば、世界にも貢献できる。
 信頼性が高く質の高い臨床情報を経時的に収集し、研究開発に供するためには、現場の理解と負担軽減が欠かせない。医療情報政策・ゲノム医療推進特命委員会(古川俊治委員長・丸川委員長代理)では、医療情報の利活用と患者同意の在り方について、2023年以降の法改正を目指して検討を進めている。過去の治験における対照群(RWD)を承認申請等に利活用できる環境整備や、ゲノム情報による不当な社会的不利益を防止するための法令上の措置についても検討している。
 英・加・米・豪では希少疾患に対する全ゲノム解析等を一定の条件下で保険適用としている。情報基盤の構築を通じて、人材・体制の充実やA.I.によるインフォマティクスの深化、診断能力の向上をはかり、新たな知見の速やかな実装に道を拓きたい。