講演情報

[SP]全ゲノム解析等の今後の動向

江崎 治朗 (厚生労働省 健康局 難病対策課)
わが国の難病患者への支援は、昭和47年の「難病対策要綱」の制定以降、約 40 年間にわたって法律に基づかない予算事業(研究事業や医療費助成等)として進められてきた。しかしながら、助成について難病の疾病間で不公平感があったり、長期の療養や社会生活を支える仕組みが不十分であったりといった課題があった。<br/> 平成27年には「難病法」が制定され、公平かつ安定的な医療費助成制度が確立するとともに調査研究の推進等が図られることとなり、指定難病の疾病数も大幅に増加した。<br/> 難病法制定から5年の節目を迎えるにあたり、令和元年5月から難病と小児慢性特定疾病(小慢)の合同委員会で議論が重ねられ、令和3年7月に「難病・小慢対策の見直しに関する意見書」(意見書)がとりまとめられた。そのなかでは、医療費助成の開始時期を申請時点から重症化時点に前倒しすることなど、法制定後に見えてきた状況と対応の方向性が示された。<br/> また、近年は難病研究において「全ゲノム解析等」が身近になりつつある。英国では2018 年に Genomics England が、がんや稀少疾患を対象に10 万ゲノム解析を完了した。わが国ではこれまで未診断疾患イニシアチブ(IRUD)等の研究の枠組みでゲノム解析等が実施されてきた。令和元年には、厚生労働省が「全ゲノム解析等実行計画」を策定し、令和3年までに難病領域では先行的に約5,500症例の全ゲノム解析が進められている。今後難病診療の現場で全ゲノム解析等が普及するためには、ゲノム診療に対応できる拠点を整備したり、専門スタッフを育成したりすることが重要となる。<br/> 本講演では、わが国の難病対策の歴史を振り返りつつ、指定難病患者への医療費助成制度や難病相談支援センターの枠組みを解説する。また、このたびの合同委員会の「意見書」のエッセンスや「全ゲノム解析等実行計画」の進捗など、国における最新の動きを紹介する。