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[S-O-5][Invited] History of Noto Peninsula Earthquake deduced from coastal uplift traces

*Masanobu SHISHIKURA1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)
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Keywords:

Noto Peninsula Earthquake,Uplift trace,Marine terrace,Active fault,Earthquake history

2024年1月1日に発生したM7.6の能登半島地震(2024年地震)では海岸が大きく隆起したことによって浅海底が干上がる離水現象が見られ,防潮堤や岩礁に固着していた生物の遺骸や海成段丘の形成が確認された.現地で計測された地盤の隆起量は国土地理院の測地観測とおおむね一致しており,能登半島西部で最大4 mに達する(宍倉ほか,2024).海岸の隆起は半島北部の東端から西端までの沿岸全域で広範囲に生じており,これは沿岸海域に分布する海底活断層の活動がもたらしたものである.能登半島北部周辺海域の海底活断層は西から門前沖,猿山沖,輪島沖,珠洲沖の4つのセグメントに区分され(井上・岡村,2010),2024年地震ではこれらが連動したものと考えられる.一方,能登半島で近年に起きた地震や,生物遺骸の隆起痕跡の分布に基づけば,海底活断層はセグメントごとにも活動していることがわかる.門前沖セグメントでは,2007年3月25日にM6.9の地震が発生し,半島西部沿岸が最大0.5 m程度隆起した.海岸沿いには過去1000年以内の年代を示す生物遺骸が,少なくとも3つのレベルの見つかり,それらの高度分布からみて,1つ1つが異なる隆起パターンを持ちながら0.3〜0.5 m程度ずつ隆起したことを示している.特に最低位の生物遺骸は1892年の地震(M6.4とM6.3の2回)に関連している可能性が指摘された(Shishikura et al., 2009).猿山沖セグメントでは9世紀頃と12–13世紀頃の年代を示す生物遺骸が見つかり,それぞれ0.7–0.8 mずつ隆起していることを示している(宍倉ほか,2020).また輪島沖セグメントでは1729年の歴史地震(推定M6.6–7.0)で最大で0.8 m隆起したと推定される生物遺骸が見つかっている(Hamada et al., 2016).珠洲沖セグメントでは,2023年5月5日にM6.5の地震が発生しているが,この震源と活断層との関係は明確ではない.しかし最大0.24 mの隆起が同セグメントの範囲内で生じたことが確認された(宍倉ほか,2023).このように過去千年以内に限ってみれば,M7未満の地震が沿岸の様々な場所で数百年間隔で起き,それぞれ数10 cmずつ隆起していることがわかる.一方で沿岸には,完新世に形成されたと考えられるいわゆる低位段丘が,1〜3 mの比高をもって少なくとも3面(L1〜L3面)分布していることが確認されている(宍倉ほか,2020).特にL1面の高度分布は,2024年地震で最も大きく隆起した能登半島北西部や北東部の一部と変動パターンのピークが一致する.これは2024年地震と同様に,セグメントが連動してM7後半に達する地震が過去に少なくとも3回発生していた可能性を示唆する.今のところ低位段丘の具体的な年代に関するデータは得られていないが,一般的な縄文海進のピークであった6千年前頃以降であると考えると,2024年地震クラスの地震は千〜数千年間隔で起きていたといえる.したがって能登半島で起こる地震には階層性があり,M7未満で数百年間隔で起こる地震と,千〜数千年間隔で活断層が連動してM7後半の規模になる地震が起きている.また隆起のパターンで見ると,長期的には最終間氷期のいわゆる中位段丘の高度分布も,低位段丘の高度分布や2024年地震の隆起パターンと調和的であることから,能登半島の地形を規定しているのは,基本的に2024年地震と同様の活断層の連動による隆起であると言える.このような解釈は今後,他の地域でも起こり得る地震や地形発達の理解に向けて大きな助けとなるだろう.

Hamada, M. et al. (2016) Tectonophysics, 670, 38–47. 井上卓彦・岡村⾏信(2010)「能登半島北部沿岸域」.数値地質図S-1,産総研地質調査総合センター. Shishikura, M. et al. (2009) Geophysical Research Letters, 36, L02307. 宍倉正展ほか(2020)活断層研究,53,33–49. 宍倉正展ほか(2023)日本地震学会2023年秋季大会予稿集S22P-08. 宍倉正展ほか(2024)第四紀研究,63,169–174.

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