Presentation Information
[G9-O-3]Source and composition of natural gas produced from the Browse Basin in the Australian northwest shelf
*Toshinori INABA1, Norifumi MORITA2 (1. INPEX Solutions, LTD., 2. INPEX Corporation)
Keywords:
petroleum and natural gas,carbon dioxide,Australia,Browse Basin
ブラウズ堆積盆地(Browse Basin)はオーストラリアの北西大陸棚に約14万平方キロメートルに渡って分布し,層厚15000mを超える古生界~新生界を堆積させている。2000年,ここでINPEXはイクシスガス・コンデンセート田を発見した。中部ジュラ系と下部白亜系の砂岩貯留層から産出する可燃性天然ガスは,濃度にして10%程度の二酸化炭素を伴っている。
二酸化炭素は,可燃性成分にとって燃焼しない不要物であるとともに,環境面からは温室効果ガスとして問題視されている。もし探鉱に臨む時点で二酸化炭素が含有されると予想できるならば,探鉱の対象候補の中から二酸化炭素に乏しいことが期待できる地域のほうを優先するという選択肢が現れる。
ところが,ブラウズ堆積盆地では実測値の数が十分とは言えないため,実測された二酸化炭素の濃度のみからその濃度が低い地域を特定することは困難であった。そこで先ず産出された二酸化炭素の成因を考察し,それから堆積盆地の中で大局的な濃度の水準とその変化を推定することにした。二酸化炭素は有機起源(可燃性成分と同じ有機物の熱分解に由来)と無機起源(炭酸塩鉱物の熱分解やマグマに由来)に大別される。このような二酸化炭素の起源は,その炭素同位体組成と,ヘリウムのような共存する希ガスの同位体組成とを組み合わせて議論される。イクシスガス・コンデンセート田とその周辺で採取したガス5試料では,二酸化炭素の濃度は8.58%~16.34%(中央値10.24%),その炭素同位体組成δ13CCO2は-1.8‰~+0.3‰(中央値-0.6‰)であった。ヘリウムの同位体組成R/Ra比は0.48~0.80(中央値0.70,3He/4He比では6.6×10-7~1.1×10-6で中央値9.7×10-7)であった。Huang et al. (2015) に従うと,分析した5試料はすべて炭酸塩鉱物の熱分解に由来する二酸化炭素(Group B)に分類された。
ブラウズ堆積盆地において,主要な貯留層よりも下位の層準ではペルム系と三畳系に炭酸塩岩が含まれている。現時点までで把握されているこれらの炭酸塩岩の分布と被熱温度からすると,ブラウズ堆積盆地の天然ガスで,これまでの実測値を著しく超えるような高濃度の二酸化炭素が現れる可能性は低いと予想された。石油と二酸化炭素は,同じ堆積盆地の中でも生成・移動・集積のタイミングが異なることがある。その一方で,移動経路や集積場所は共通することがあるため,同じ貯留層に混ざり合って集積することがある。このような場合の二酸化炭素の濃度の水準を推定するためには,石油と二酸化炭素の成因や生成・移動・集積のタイミングを個別に考察した後に,両者を突き合わせて追加考察することが鍵になると考える。
引用文献
Huang, B., Tian, H., Huang, H., Yang, J., Xiao, X., and Li, L., 2015: Origin and accumulation of CO2 and its natural displacement of oils in the continental margin basins, northern South China Sea. American Association of Petroleum Geologists Bulletin, 99(7), 1349-1369.
二酸化炭素は,可燃性成分にとって燃焼しない不要物であるとともに,環境面からは温室効果ガスとして問題視されている。もし探鉱に臨む時点で二酸化炭素が含有されると予想できるならば,探鉱の対象候補の中から二酸化炭素に乏しいことが期待できる地域のほうを優先するという選択肢が現れる。
ところが,ブラウズ堆積盆地では実測値の数が十分とは言えないため,実測された二酸化炭素の濃度のみからその濃度が低い地域を特定することは困難であった。そこで先ず産出された二酸化炭素の成因を考察し,それから堆積盆地の中で大局的な濃度の水準とその変化を推定することにした。二酸化炭素は有機起源(可燃性成分と同じ有機物の熱分解に由来)と無機起源(炭酸塩鉱物の熱分解やマグマに由来)に大別される。このような二酸化炭素の起源は,その炭素同位体組成と,ヘリウムのような共存する希ガスの同位体組成とを組み合わせて議論される。イクシスガス・コンデンセート田とその周辺で採取したガス5試料では,二酸化炭素の濃度は8.58%~16.34%(中央値10.24%),その炭素同位体組成δ13CCO2は-1.8‰~+0.3‰(中央値-0.6‰)であった。ヘリウムの同位体組成R/Ra比は0.48~0.80(中央値0.70,3He/4He比では6.6×10-7~1.1×10-6で中央値9.7×10-7)であった。Huang et al. (2015) に従うと,分析した5試料はすべて炭酸塩鉱物の熱分解に由来する二酸化炭素(Group B)に分類された。
ブラウズ堆積盆地において,主要な貯留層よりも下位の層準ではペルム系と三畳系に炭酸塩岩が含まれている。現時点までで把握されているこれらの炭酸塩岩の分布と被熱温度からすると,ブラウズ堆積盆地の天然ガスで,これまでの実測値を著しく超えるような高濃度の二酸化炭素が現れる可能性は低いと予想された。石油と二酸化炭素は,同じ堆積盆地の中でも生成・移動・集積のタイミングが異なることがある。その一方で,移動経路や集積場所は共通することがあるため,同じ貯留層に混ざり合って集積することがある。このような場合の二酸化炭素の濃度の水準を推定するためには,石油と二酸化炭素の成因や生成・移動・集積のタイミングを個別に考察した後に,両者を突き合わせて追加考察することが鍵になると考える。
引用文献
Huang, B., Tian, H., Huang, H., Yang, J., Xiao, X., and Li, L., 2015: Origin and accumulation of CO2 and its natural displacement of oils in the continental margin basins, northern South China Sea. American Association of Petroleum Geologists Bulletin, 99(7), 1349-1369.
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