Presentation Information
[T10-P-7]Compositional homogeneity and grain size distribution in the most recent active part of fault gouge based on elemental mapping of a fault core of crush zone: preliminary result
*Yasuhiro OGITA1, Koji SHIMADA1, Masaya OGAWA2, Keisuke NOJIRI2, Yasumune SHIGEMITSU2, Akiyuki IWAMORI2, Ryo TATEISHI3 (1. JAEA, Tono Geoscience Center, 2. The Kansai Electric Power Company, 3. University of Toyama)
Keywords:
Active fault,Elemental map,Shiraki-Nyu fault
活断層と非活断層の判別は,地形判読やトレンチ調査,反射法地震探査などの変動地形学的,地球物理学的手法により行われるとともに,近年,断層破砕帯中軸部を構成する断層ガウジの化学組成に着目した手法が発展しつつある(例えば,立石ほか,2021,応用地質).断層破砕帯の化学組成を得るための蛍光X線分析等に供する試料は,これまで,積層し,肉眼的に色調・粒度が異なる,比較的連続的な厚さ数mm以上の断層ガウジ層を区分して採取している.このような手法では,採取試料の代表性を担保する化学組成的均質性の確認が重要であるが,断層運動で粉砕された細粒部は混合され均質化していることを当然視し,詳細な検討はなされてこなかった.そこで本研究では,断層ガウジ近傍の数ミリメートル~数センチメートルスケールの範囲における破砕物粒子の粒径分布や化学組成の特徴を把握することを目的として,偏光顕微鏡や電子プローブマイクロアナライザ(EPMA)を用いた微細粒子観察,化学組成分析(元素マッピング)を実施した.
使用した試料は,白木-丹生断層の露頭で採取された江若花崗岩を母岩とする断層破砕帯中軸部で,連続性の良い幅3~4 mm以上の褐色でやや粗粒な断層ガウジを上盤側に(中軸上位ガウジ),幅6~10 mmの帯桃明灰色で細粒な断層ガウジを下盤側に(中軸下位ガウジ)含む.露頭では,中軸上位ガウジの幅が20 mm程度まで広がる部分があり,中軸下位ガウジのフラグメントがレンズ状に含まれる箇所が認められる.また,中軸上位ガウジの上盤側の一部から,部分的に滲みだす~滴る程度の湧水が認められる.薄片の偏光顕微鏡観察では,中軸上位ガウジと中軸下位ガウジの境界はシャープで連続性が良い.また中軸上位ガウジは上盤側に細粒化部が連続的に認められる.露頭での中軸下位ガウジフラグメントとの包有関係も考慮すれば,中軸上位ガウジが最新活動部を含む層,中軸上位ガウジ上盤側が最新活動時の主すべり層と考えられる.
薄片中の最新活動面を含む断層ガウジ層に直交する方向に対して,原子力機構東濃地科学センターのEPMA(JXA-8530F)を用いて元素マップ(Na,Mg,K,Ca,Feの5元素)を取得した.元素マップの測定条件は,加速電圧15 kV,照射電流500 nA,プローブ径<1 mm(focused beam),1ピクセル0.5 mm四方,1ピクセルあたりの測定時間3 msとした.5120ピクセル四方(2560 mm四方)のマップを,断層ガウジ層を含む連続15領域(2.56 mm×38.4 mmの範囲)で取得し,破砕帯横断方向の破砕粒子の分布や化学組成の特徴を検討した.
下盤側から上盤側に向かって,粗粒な破片を多く含む断層ガウジ(下盤側ガウジ),中軸下位ガウジ,中軸上位ガウジ,中軸上位ガウジより粗粒で下盤側ガウジに比較すると細粒な断層ガウジ(上盤側ガウジ)が分布する.取得した元素マップから,破砕帯に平行な方向に5120ピクセルの元素強度の総和を計算し,その破砕帯横断方向の変化を0.5 mm刻みで確認した(図1).その結果,NaとKとで共通して,下盤側ガウジから中軸下位ガウジおよび上盤側ガウジから中軸上位ガウジに向かって,強度が減少する傾向がみられる.断層ガウジ中の粒状の破片は主に珪長質鉱物由来で,鏡下観察との比較から,斜長石はNa強度の高い粒子,カリ長石はK強度の高い粒子,石英は各元素の強度が0に近い領域に相当しており,Na,Kの強度プロファイルにはこれらの粒子,領域の影響を受けた変動がみられる.中軸下位ガウジ,中軸上位ガウジの領域では,各領域内でNa/K比が均質ないし緩やかに変化する傾向があり,かつ両領域でNa/K比の分布幅が異なる.このことは,マッピング幅の2.56 mmの領域で化学的に均質で,かつ化学組成が積層毎に異なる部分があること,すなわち,図中の両向矢印で示した範囲を数グラムずつ分取して化学組成分析を行う意味があることを示唆している.中軸上位ガウジのNa/K比およびNa強度にみられる凸部は,鏡下観察で識別された斜長石フラグメントに対応しており,最新活動部も含めて斜長石は普遍的に断層ガウジ中に散在していることが化学組成の点からも明らかとなった.発表では,Na,K以外の元素マップおよび破砕粒子の粒径解析結果を提示するとともに,他の断層破砕帯における元素マップおよびそれらの解析結果を示し,特徴を比較する.
本報告は,関西電力・富山大学・原子力機構の共同研究「断層岩化学組成データベースの構築と断層活動性評価への活用に関する研究」の成果の一部である.
使用した試料は,白木-丹生断層の露頭で採取された江若花崗岩を母岩とする断層破砕帯中軸部で,連続性の良い幅3~4 mm以上の褐色でやや粗粒な断層ガウジを上盤側に(中軸上位ガウジ),幅6~10 mmの帯桃明灰色で細粒な断層ガウジを下盤側に(中軸下位ガウジ)含む.露頭では,中軸上位ガウジの幅が20 mm程度まで広がる部分があり,中軸下位ガウジのフラグメントがレンズ状に含まれる箇所が認められる.また,中軸上位ガウジの上盤側の一部から,部分的に滲みだす~滴る程度の湧水が認められる.薄片の偏光顕微鏡観察では,中軸上位ガウジと中軸下位ガウジの境界はシャープで連続性が良い.また中軸上位ガウジは上盤側に細粒化部が連続的に認められる.露頭での中軸下位ガウジフラグメントとの包有関係も考慮すれば,中軸上位ガウジが最新活動部を含む層,中軸上位ガウジ上盤側が最新活動時の主すべり層と考えられる.
薄片中の最新活動面を含む断層ガウジ層に直交する方向に対して,原子力機構東濃地科学センターのEPMA(JXA-8530F)を用いて元素マップ(Na,Mg,K,Ca,Feの5元素)を取得した.元素マップの測定条件は,加速電圧15 kV,照射電流500 nA,プローブ径<1 mm(focused beam),1ピクセル0.5 mm四方,1ピクセルあたりの測定時間3 msとした.5120ピクセル四方(2560 mm四方)のマップを,断層ガウジ層を含む連続15領域(2.56 mm×38.4 mmの範囲)で取得し,破砕帯横断方向の破砕粒子の分布や化学組成の特徴を検討した.
下盤側から上盤側に向かって,粗粒な破片を多く含む断層ガウジ(下盤側ガウジ),中軸下位ガウジ,中軸上位ガウジ,中軸上位ガウジより粗粒で下盤側ガウジに比較すると細粒な断層ガウジ(上盤側ガウジ)が分布する.取得した元素マップから,破砕帯に平行な方向に5120ピクセルの元素強度の総和を計算し,その破砕帯横断方向の変化を0.5 mm刻みで確認した(図1).その結果,NaとKとで共通して,下盤側ガウジから中軸下位ガウジおよび上盤側ガウジから中軸上位ガウジに向かって,強度が減少する傾向がみられる.断層ガウジ中の粒状の破片は主に珪長質鉱物由来で,鏡下観察との比較から,斜長石はNa強度の高い粒子,カリ長石はK強度の高い粒子,石英は各元素の強度が0に近い領域に相当しており,Na,Kの強度プロファイルにはこれらの粒子,領域の影響を受けた変動がみられる.中軸下位ガウジ,中軸上位ガウジの領域では,各領域内でNa/K比が均質ないし緩やかに変化する傾向があり,かつ両領域でNa/K比の分布幅が異なる.このことは,マッピング幅の2.56 mmの領域で化学的に均質で,かつ化学組成が積層毎に異なる部分があること,すなわち,図中の両向矢印で示した範囲を数グラムずつ分取して化学組成分析を行う意味があることを示唆している.中軸上位ガウジのNa/K比およびNa強度にみられる凸部は,鏡下観察で識別された斜長石フラグメントに対応しており,最新活動部も含めて斜長石は普遍的に断層ガウジ中に散在していることが化学組成の点からも明らかとなった.発表では,Na,K以外の元素マップおよび破砕粒子の粒径解析結果を提示するとともに,他の断層破砕帯における元素マップおよびそれらの解析結果を示し,特徴を比較する.
本報告は,関西電力・富山大学・原子力機構の共同研究「断層岩化学組成データベースの構築と断層活動性評価への活用に関する研究」の成果の一部である.
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