Presentation Information
[T10-P-8]Variations in cathodoluminescence spectra of quartz in fault rocks
*Yukiko FUKUSHIMA1, Hikaru Nitta1, Hideo TAKAGI2 (1. Graduate School of Creative Science and Engineering, Waseda University, 2. Faculty of Education and Integrated Arts and Sciences, Waseda University)
Keywords:
quartz,mylonite,pseudotachylite,cathodoluminescence,CL spectra,EPMA
【はじめに】地殻を構成する主要な鉱物である石英は,結晶成長時の温度や圧力の違いにより,転位や点欠陥といった格子欠陥や不純物元素 (Al3+, Ti4+, Fe3+ など) と Si4+ の置換を生じる.また形成後に受けた温度や圧力によっても欠陥の解消や新たな生成,不純物の移動などを生じる.こういった物質に内在する構造欠陥や置換不純物中心を鋭敏に検出する手法の 1 つが,物質に電子線を照射した際に生じる発光現象であるカソードルミネッセンス (CL) である.断層岩に対して CL 像を用いた例として,破砕された鉱物と二次的に形成された鉱物の識別 (e.g. Bestmann, 2011; Shimamoto et al, 1991)や,TitaniQ 温度計のための Ti 濃度の定性的または半定量的なマップとして数多く利用されている (e.g. Taylor et al., 2023).その一方で CL スペクトルを解析した例はほとんど見られない (Muller et al., 2002).そこで筆者らは,cm スケールの幅をもつマイロナイト帯とシュードタキライト脈中の石英粒子の CL スペクトルを測定し,縁辺部から中心部に向けての変化について調査した.加えて,EPMA による化学分析を行い,スペクトル変化の原因となる構造欠陥や不純物 (Götze et al., 2021; Stevens-Kalceff, 2009) について検討しつつある.
【測定試料と手法】マイロナイト帯は瀬戸内海にある手島の領家古期花崗岩および新期花崗岩に発達する小剪断帯を対象とした.領家古期花崗岩に発達する小剪断帯の剪断中心における CPO パターンは Y 集中を示すことが知られている (梛良・原,1970).シュードタキライト脈は脆性–塑性遷移領域で形成された愛知県足助剪断帯 (酒巻ほか, 2006) と,ネパール Tsergo Ri 地すべり (Masch et al., 1985, Takagi et al, 2007) で形成されたものを対象とした.
小剪断帯のマイロナイトは CPO パターンで,シュードタキライト脈は縁辺部からの距離でゾーン分けを行い,それぞれのゾーンで 20–40 ポイントの CL スペクトルを収集した.その後,CL スペクトルを測定したポイントにおける微量元素測定を行った.
【結果と解釈】すべての試料において,縁辺部から中心部にかけて,CL スペクトル全体の発光強度が低下した.これは結晶内の構造欠陥が減少したことを意味する.マイロナイト帯においては CPO パターンによらず,粒径減少に伴って発光強度が低下したため,動的再結晶により構造欠陥の解消が進行したと考えられる.また,シュードタキライト脈においては,ガラス質でより急冷された地すべり性のものの方が発光強度の低下量が少なかったことから,アニーリングの時間が長いほど構造欠陥の解消が進行したと考えられる.
一般に石英のCLスペクトルは青色発光 (~420 nm; ~2.8 eV) と赤色発光 (~620 nm; ~1.9 eV) の2つのピークをもつ.全ての試料で縁辺部から中心部に向かって,相対的に青色発光は減少し,赤色発光は増加する変化が見られた.青色発光は [AlO4/M+] (M+=H+, Li+, Na+),STE,置換Ti のいずれかによる発光,赤色発光は主に NBOHC による発光である.発表では,EPMA による化学分析の結果と合わせて,縁辺部から中心部にかけて石英の結晶構造にどのような変化があったのかを考察する.
【引用文献】Bestmann, M. et al., 2011, J. Struct. Geol., 33, 169–186.; Götze, J., Pan, Y., and Müller, A., 2021, Mineral. Mag., 85, 639–664.; Masch, L., Wenk, H. R., Preuss, E., 1985. Tectonophysics, 115, 131–160.; Muller, A., Lennox, P., Trzebski, R., 2002, Contrib Mineral Petrol. 143, 510-524.; 梛良督・原郁夫, 1993, 日本地質学会第100年学術大会演旨, 87; 酒巻秀彰・島田耕史・高木秀雄, 2006, 地質雑, 112, 519-530.; Shimamoto, T., Kanaori, Y. and Asai, K.,1991, J. Struct. Geol. 13, 967–973.; Stevens-Kalceff, M. A., 2009, Mineral. Mag. 73, 521–541.; Takagi, H. et al,, 2007, J. Asian Earth Sci., 29, 466–472.; Taylor, J.M. et al., 2023, J. Struct. Geol., 169, 104846.
【測定試料と手法】マイロナイト帯は瀬戸内海にある手島の領家古期花崗岩および新期花崗岩に発達する小剪断帯を対象とした.領家古期花崗岩に発達する小剪断帯の剪断中心における CPO パターンは Y 集中を示すことが知られている (梛良・原,1970).シュードタキライト脈は脆性–塑性遷移領域で形成された愛知県足助剪断帯 (酒巻ほか, 2006) と,ネパール Tsergo Ri 地すべり (Masch et al., 1985, Takagi et al, 2007) で形成されたものを対象とした.
小剪断帯のマイロナイトは CPO パターンで,シュードタキライト脈は縁辺部からの距離でゾーン分けを行い,それぞれのゾーンで 20–40 ポイントの CL スペクトルを収集した.その後,CL スペクトルを測定したポイントにおける微量元素測定を行った.
【結果と解釈】すべての試料において,縁辺部から中心部にかけて,CL スペクトル全体の発光強度が低下した.これは結晶内の構造欠陥が減少したことを意味する.マイロナイト帯においては CPO パターンによらず,粒径減少に伴って発光強度が低下したため,動的再結晶により構造欠陥の解消が進行したと考えられる.また,シュードタキライト脈においては,ガラス質でより急冷された地すべり性のものの方が発光強度の低下量が少なかったことから,アニーリングの時間が長いほど構造欠陥の解消が進行したと考えられる.
一般に石英のCLスペクトルは青色発光 (~420 nm; ~2.8 eV) と赤色発光 (~620 nm; ~1.9 eV) の2つのピークをもつ.全ての試料で縁辺部から中心部に向かって,相対的に青色発光は減少し,赤色発光は増加する変化が見られた.青色発光は [AlO4/M+] (M+=H+, Li+, Na+),STE,置換Ti のいずれかによる発光,赤色発光は主に NBOHC による発光である.発表では,EPMA による化学分析の結果と合わせて,縁辺部から中心部にかけて石英の結晶構造にどのような変化があったのかを考察する.
【引用文献】Bestmann, M. et al., 2011, J. Struct. Geol., 33, 169–186.; Götze, J., Pan, Y., and Müller, A., 2021, Mineral. Mag., 85, 639–664.; Masch, L., Wenk, H. R., Preuss, E., 1985. Tectonophysics, 115, 131–160.; Muller, A., Lennox, P., Trzebski, R., 2002, Contrib Mineral Petrol. 143, 510-524.; 梛良督・原郁夫, 1993, 日本地質学会第100年学術大会演旨, 87; 酒巻秀彰・島田耕史・高木秀雄, 2006, 地質雑, 112, 519-530.; Shimamoto, T., Kanaori, Y. and Asai, K.,1991, J. Struct. Geol. 13, 967–973.; Stevens-Kalceff, M. A., 2009, Mineral. Mag. 73, 521–541.; Takagi, H. et al,, 2007, J. Asian Earth Sci., 29, 466–472.; Taylor, J.M. et al., 2023, J. Struct. Geol., 169, 104846.
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