Presentation Information
[T15-P-3]Discovery of Late Carboniferous fusuline and conodont fossils from the Akiyoshi Terrane in the Kiku Peninsula, Fukuoka Prefecture, Southwest Japan: Their geological significance
*Yusaku HOSHIKI1,2, Mie HOSHIKI1,2 (1. Geostack Co., Ltd., 2. Natural History Society of Kitakyushu Museum of Natural History and Human History)
Keywords:
Late Carboniferous,fusuline,conodont,Akiyoshi Terrane,Kiku Peninsula,Kitakyushu,Fukuoka
はじめに
福岡県北九州市の北東端に位置する企救半島には,秋吉帯(ペルム紀付加体)に属する様々な海洋性岩石が広く分布している.これらの地質体は,白亜紀の花崗岩類の貫入を受け広範囲にわたって再結晶化が進んでおり,化石の産出は極めて少ない.今回筆者らは,企救半島の北東部に位置する採石場において得られた石灰岩から後期石炭紀を示すフズリナとコノドント化石を新たに見出したので,ここに報告する.
地質概説
企救半島を構成する地質体は,その分布・岩相・構造などが中江ほか(1998)の調査・研究によって明らかにされている.それによると,企救半島には秋吉帯に属する古生界が半島のほぼ全域に分布し,これらの地質体は北西部で白亜系脇野亜層群と不整合あるいは断層で接している.企救半島の古生界を対象とした古生物学的研究は,矢部(1920)による門司区青浜海岸でのフズリナ化石の報告以降,アンモノイドや放散虫化石などの研究(西田,1980;柳瀬・磯﨑,1993など)が知られている.また,北九州市内の他地域においては,秋吉帯の石灰岩を原岩とする脇野亜層群産の石灰岩礫岩から見出されたフズリナやサンゴ化石の報告(曾塚,1975;Ota,2000など)があり,古生代の地層から直接見出された化石と比較して,多様な属種が図示されている.
検討試料
今回筆者らが検討を行った岩石試料は,企救半島の北東部に位置する櫛ノ鼻付近の採石場内で採掘された大礫サイズの石灰岩の転石である.本試料の採掘場所は現在調整池として利用されており,その東側側面には検討石灰岩の母岩と思われる,黒色の泥岩に挟まれた幅十数メートル,厚さ数メートル程度のレンズ状石灰岩が確認できる.上記の産状から判断して,この石灰岩の岩体は周辺の古生界同様,秋吉帯の構成岩であると考えられる.検討試料は灰色~暗灰色を呈し,砂~礫サイズの生砕物を豊富に含む.研磨試料面においてコノドント化石は,粗粒~極粗粒砂サイズの黒色を呈した不定形の粒子として多数確認される.検討試料は鏡下において,主にbioclastic wackestone-packstoneからなり,ウミユリを主体とし,有孔虫やコノドントのほか,コケムシ,石灰藻,腕足類などの生砕物が観察される.なお,検討石灰岩は方解石脈やスタイロライトが発達し,化石の保存状態は不良である.
産出化石と年代
本研究では,殻の欠損などがあり不完全な標本ではあるが,残された殻の形態やコマータの形状などから判断してFusulinellaに対比可能な有孔虫を見出した.Fusulinella属はKashirian(前期Moscovia後期)からKrevyakinian(最前期Kasimovian)にかけて産出することが知られるフズリナ類である(Goreva et al., 2009;Ueno, 2022).また,酢酸処理の結果,検討石灰岩からはIdiognathodus cf. delicatus Gunnellが見出された.本種はMelekesskian(最後期Bashkirian)からKrevyakinianにかけて産出することが知られるコノドント類である(Nemyrovska, 1999;Goreva et al., 2009).以上の結果から,検討石灰岩の堆積年代は少なくともKashirianであり,最大でKrevyakinianの年代を示す可能性があることが明らかとなった.
地質学的意義
本研究では,北九州市の企救半島北東部で採取された石灰岩の転石試料から,FusulinellaおよびIdiognathodus cf. delicats Gunnellの産出を確認した.北部九州の秋吉帯において,両属種の産出は現在までのところ他に報告がない.加えて,フズリナとコノドントが共産する石灰岩の報告も,同地域では知られていない.以上のことから,本研究の結果は,福岡県内に分布する古生界の形成史やフズリナ・コノドント類の群集構成を理解する上で地質学的に重要な基礎資料となることが期待される.
引用文献:Goreva, N. et al., 2009, Palaeoworld, 18, 102-113;中江 訓ほか,1998,地域地質研究報告(5 万分の1 地質図幅),地質調査所,126p;Nemyrovska, T. I., 1999, Scr. Geol., 119, 1-115;西田民雄,1980,動物と自然,10,14-18;Ota, Y., 2000, Bull. Kitakyushu Mus. Nat. His., 19, 25-42;曾塚 孝,1975,秋吉台科学博物館報告,11,13-24;Ueno, K., 2022, Geol. Soc. Spec. Publ., 512, 327-496;矢部長克,1920,地質雑,32,513-519;柳瀬 晶・磯﨑行雄,1993,地質雑,99,285-288.
福岡県北九州市の北東端に位置する企救半島には,秋吉帯(ペルム紀付加体)に属する様々な海洋性岩石が広く分布している.これらの地質体は,白亜紀の花崗岩類の貫入を受け広範囲にわたって再結晶化が進んでおり,化石の産出は極めて少ない.今回筆者らは,企救半島の北東部に位置する採石場において得られた石灰岩から後期石炭紀を示すフズリナとコノドント化石を新たに見出したので,ここに報告する.
地質概説
企救半島を構成する地質体は,その分布・岩相・構造などが中江ほか(1998)の調査・研究によって明らかにされている.それによると,企救半島には秋吉帯に属する古生界が半島のほぼ全域に分布し,これらの地質体は北西部で白亜系脇野亜層群と不整合あるいは断層で接している.企救半島の古生界を対象とした古生物学的研究は,矢部(1920)による門司区青浜海岸でのフズリナ化石の報告以降,アンモノイドや放散虫化石などの研究(西田,1980;柳瀬・磯﨑,1993など)が知られている.また,北九州市内の他地域においては,秋吉帯の石灰岩を原岩とする脇野亜層群産の石灰岩礫岩から見出されたフズリナやサンゴ化石の報告(曾塚,1975;Ota,2000など)があり,古生代の地層から直接見出された化石と比較して,多様な属種が図示されている.
検討試料
今回筆者らが検討を行った岩石試料は,企救半島の北東部に位置する櫛ノ鼻付近の採石場内で採掘された大礫サイズの石灰岩の転石である.本試料の採掘場所は現在調整池として利用されており,その東側側面には検討石灰岩の母岩と思われる,黒色の泥岩に挟まれた幅十数メートル,厚さ数メートル程度のレンズ状石灰岩が確認できる.上記の産状から判断して,この石灰岩の岩体は周辺の古生界同様,秋吉帯の構成岩であると考えられる.検討試料は灰色~暗灰色を呈し,砂~礫サイズの生砕物を豊富に含む.研磨試料面においてコノドント化石は,粗粒~極粗粒砂サイズの黒色を呈した不定形の粒子として多数確認される.検討試料は鏡下において,主にbioclastic wackestone-packstoneからなり,ウミユリを主体とし,有孔虫やコノドントのほか,コケムシ,石灰藻,腕足類などの生砕物が観察される.なお,検討石灰岩は方解石脈やスタイロライトが発達し,化石の保存状態は不良である.
産出化石と年代
本研究では,殻の欠損などがあり不完全な標本ではあるが,残された殻の形態やコマータの形状などから判断してFusulinellaに対比可能な有孔虫を見出した.Fusulinella属はKashirian(前期Moscovia後期)からKrevyakinian(最前期Kasimovian)にかけて産出することが知られるフズリナ類である(Goreva et al., 2009;Ueno, 2022).また,酢酸処理の結果,検討石灰岩からはIdiognathodus cf. delicatus Gunnellが見出された.本種はMelekesskian(最後期Bashkirian)からKrevyakinianにかけて産出することが知られるコノドント類である(Nemyrovska, 1999;Goreva et al., 2009).以上の結果から,検討石灰岩の堆積年代は少なくともKashirianであり,最大でKrevyakinianの年代を示す可能性があることが明らかとなった.
地質学的意義
本研究では,北九州市の企救半島北東部で採取された石灰岩の転石試料から,FusulinellaおよびIdiognathodus cf. delicats Gunnellの産出を確認した.北部九州の秋吉帯において,両属種の産出は現在までのところ他に報告がない.加えて,フズリナとコノドントが共産する石灰岩の報告も,同地域では知られていない.以上のことから,本研究の結果は,福岡県内に分布する古生界の形成史やフズリナ・コノドント類の群集構成を理解する上で地質学的に重要な基礎資料となることが期待される.
引用文献:Goreva, N. et al., 2009, Palaeoworld, 18, 102-113;中江 訓ほか,1998,地域地質研究報告(5 万分の1 地質図幅),地質調査所,126p;Nemyrovska, T. I., 1999, Scr. Geol., 119, 1-115;西田民雄,1980,動物と自然,10,14-18;Ota, Y., 2000, Bull. Kitakyushu Mus. Nat. His., 19, 25-42;曾塚 孝,1975,秋吉台科学博物館報告,11,13-24;Ueno, K., 2022, Geol. Soc. Spec. Publ., 512, 327-496;矢部長克,1920,地質雑,32,513-519;柳瀬 晶・磯﨑行雄,1993,地質雑,99,285-288.
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