Presentation Information
[T15-P-6]Reconsideration of the origin and geological classification of the Kurosegawa belt in the Seiyo City, Ehime Prefecture
*yuzu oda1, Tomohiro Tuji1 (1. Yamaguchi Univ.)
Keywords:
Kurosegawa belt,Western Shikoku,Shirokawa city,Shelf deposit
【はじめに】日本列島には、東西延長1000キロメートルにも及んでレンズ状に分布する黒瀬川構造帯が存在する(市川他、1956)。これに特徴付けられる古期岩類は大陸起源のものであり、先シルル紀を示し、さらにジュラ紀付加体の間に挟まるように分布することからその異質さが浮き彫りとなり黒瀬川帯の存在が定義された(磯﨑・板谷,1990,1991;磯﨑ほか,1992;村田・前川,2007,2009)。古期岩類の他にも特異的な岩石が分布することが現在までの研究で明らかになっており、年代測定によってその起源が明らかになりつつある(Ohkawa et al.,2021;脇田ほか,2007;Hada etal.,2000)。
【目的】現在、この黒瀬川帯の形成テクトニクスについて様々な説が論じられているが、代表的なものが「クリッペ説(磯崎・丸山,1991)」と「黒瀬川左横ずれ蛇紋岩メランジュ帯説(田沢,1993)」である。これらの説を検証することが、黒瀬川帯の起源だけでなく日本列島の地帯構造の発達史を明らかする重要なカギとなるであろう。黒瀬川帯構成要素のうち、「ペルム紀付加コンプレックス」・「陸棚堆積層」はジュラ紀以前の年代を示しており、黒瀬川帯が日本列島の付加体中に挟まる以前に低緯度地域の南中国南縁の沈み込み帯・陸棚で形成されたものと考えられている(Hada.et.al.,2001)。その後白亜紀にかけて北上したことが指摘されている(吉倉,2012)。これに伴い砕屑物の供給源も変化したと考えている。これらを踏まえて本研究では、「陸棚堆積層」に着目して地質の再検討を行い、黒瀬川帯の起源を探ることを目的とする。
【研究手法】調査地域の地表踏査を行い、岩相の記載と走向傾斜データから地質図・柱状図を作成した。また、鏡下観察を行った。
【調査結果】本調査地は愛媛県西予市城川町の三滝川周辺で、黒瀬川帯の北端部に位置する。北部には秩父北帯構成要素であるペルム紀付加コンプレックスが分布し、南部には陸棚堆積相である堆積岩が分布する。また、調査地東部に位置する三滝山には、450‐430Maの年代を持つ(Hada et al.,2000)三滝花崗岩が分布する。付加体の走向傾斜は主に東北東―西南西走向で30-50度の北傾斜が卓越していた。また、砂岩の級化構造がみられた。ペルム紀付加コンプレックスでは砂岩層・泥岩層・層状チャート・玄武岩といった、海洋プレート層序を示す岩相がメランジュとして産出した。ここでみられる泥岩は準片岩化しているという特徴を持っていた。また、1か所で蛇紋岩が確認できた。陸棚堆積層では。泥岩層と砂岩層及び礫岩が出現した。泥岩の中でも泥岩優勢部分を泥岩部分、砂岩優先部分を砂岩部分とした。砂岩については、色調と粒度から2分することができた。また2つの地点で泥岩と砂岩の間に礫岩層が確認できた。この礫岩の礫種は花崗岩やチャートであった。さらに、砂岩に貫入する玄武岩脈を発見した。ここでは急冷周縁層も確認でき、貫入関係も確認できた。
【考察】三滝山南部で北上位、三滝山南西部ルートで南上位の砂岩が認められたことから、この2地点間に向斜軸が推定される。玄武岩体の貫入からは砂岩がたまる場所で玄武岩の活動があったことが言える。また、玄武岩の貫入は明瞭な境界を持ち、断層を伴わないことから砂岩が固結したのちに貫入が起きたことを示唆する。これについては詳細な検討が必要である。また、今回の調査で発見した礫岩の礫種組成の検討を行っていきたい。
【引用文献】市川浩一郎・石井健一・中川衷三・須槍和巳・山下昇 (1956): 黒瀬川構造帯. 地質学雑誌, 62, 82-103.
磯﨑行雄・板谷徹丸(1990):四国中央部および紀伊半島西部黒瀬川地帯北縁の弱変成岩類のK-Ar 年代−西单 日本における黒瀬川地帯の広がりについて−. 地質学雑誌, 96, 623-639.
磯﨑行雄・板谷徹丸(1991):四国中西部秩父累帯北帯の先ジュラ紀クリッペ −黒瀬川内帯起源説の提唱−. 地 質学雑誌, 97, 431-450.
磯﨑行雄・丸山茂徳(1991):日本におけるプレート造山論の歴史と日本列島の新しい地体構造区分.地学雑 誌, 100, 697-761.
磯﨑行雄・橋口孝泰・板谷徹丸(1992):黒瀬川クリッペの検証. 地質学雑誌, 98, 917-941.
村田明広・前川寛和(2007):四国中西部,秩父帯北帯の名野川衝上断層. 徳島大学総合学部自然科学研究, 21, 65-75.
村田明広・前川寛和(2009):四国中央部西石原地域における御荷鉾緑色岩類の地質構造. 徳島大学総合科学 部自然科学研究, 23, 77-85.
Ohkawa, M., Takeuchi, M., Li, Y., Saitoh, S. and Yamamoto, K. (2021): Paleogeography and tectonic evolution of a late Paleozoic to earliest Mesozoic magmatic arc in East Asia based of detrital zircons from Early Triassic Shingai Unit, Kurosegawa Belt, Southwest Japan. Journal of Asian Earth Sciences, 212, 1-18.
脇田 浩二・宮崎一博・利光誠一・横山俊治・中川昌治(2007):伊野地域の地質.地域地質研究報告(5 万 分の1地質図幅,産総研地質総合センター, 140pp.
Hada, S., Yoshikura, S. and Gabites, J.E. (2000): U-Pb zircon ages for the Mitaki igneous rocks, Siluro-Devonian tuff, and granitic boulders in the Kurosegawa terrane, Southwest Japan. Memoirs of the Geological Society of Japan, no.56, 183-198.
田沢純一,1993,古生物地理からみた日本列島の先新第三紀テクトニクス.地質学雑誌,99,525-543.
Hada, S., Ishii, K., Landis, C.A., Aitchison, J.C. and Yoshikura, S. (2001): Kurosegawa terrane in Southwest Japan: Disrupted remnants of Gondwana-derived terranes. Gondwana Research, 4, 27-38.
【目的】現在、この黒瀬川帯の形成テクトニクスについて様々な説が論じられているが、代表的なものが「クリッペ説(磯崎・丸山,1991)」と「黒瀬川左横ずれ蛇紋岩メランジュ帯説(田沢,1993)」である。これらの説を検証することが、黒瀬川帯の起源だけでなく日本列島の地帯構造の発達史を明らかする重要なカギとなるであろう。黒瀬川帯構成要素のうち、「ペルム紀付加コンプレックス」・「陸棚堆積層」はジュラ紀以前の年代を示しており、黒瀬川帯が日本列島の付加体中に挟まる以前に低緯度地域の南中国南縁の沈み込み帯・陸棚で形成されたものと考えられている(Hada.et.al.,2001)。その後白亜紀にかけて北上したことが指摘されている(吉倉,2012)。これに伴い砕屑物の供給源も変化したと考えている。これらを踏まえて本研究では、「陸棚堆積層」に着目して地質の再検討を行い、黒瀬川帯の起源を探ることを目的とする。
【研究手法】調査地域の地表踏査を行い、岩相の記載と走向傾斜データから地質図・柱状図を作成した。また、鏡下観察を行った。
【調査結果】本調査地は愛媛県西予市城川町の三滝川周辺で、黒瀬川帯の北端部に位置する。北部には秩父北帯構成要素であるペルム紀付加コンプレックスが分布し、南部には陸棚堆積相である堆積岩が分布する。また、調査地東部に位置する三滝山には、450‐430Maの年代を持つ(Hada et al.,2000)三滝花崗岩が分布する。付加体の走向傾斜は主に東北東―西南西走向で30-50度の北傾斜が卓越していた。また、砂岩の級化構造がみられた。ペルム紀付加コンプレックスでは砂岩層・泥岩層・層状チャート・玄武岩といった、海洋プレート層序を示す岩相がメランジュとして産出した。ここでみられる泥岩は準片岩化しているという特徴を持っていた。また、1か所で蛇紋岩が確認できた。陸棚堆積層では。泥岩層と砂岩層及び礫岩が出現した。泥岩の中でも泥岩優勢部分を泥岩部分、砂岩優先部分を砂岩部分とした。砂岩については、色調と粒度から2分することができた。また2つの地点で泥岩と砂岩の間に礫岩層が確認できた。この礫岩の礫種は花崗岩やチャートであった。さらに、砂岩に貫入する玄武岩脈を発見した。ここでは急冷周縁層も確認でき、貫入関係も確認できた。
【考察】三滝山南部で北上位、三滝山南西部ルートで南上位の砂岩が認められたことから、この2地点間に向斜軸が推定される。玄武岩体の貫入からは砂岩がたまる場所で玄武岩の活動があったことが言える。また、玄武岩の貫入は明瞭な境界を持ち、断層を伴わないことから砂岩が固結したのちに貫入が起きたことを示唆する。これについては詳細な検討が必要である。また、今回の調査で発見した礫岩の礫種組成の検討を行っていきたい。
【引用文献】市川浩一郎・石井健一・中川衷三・須槍和巳・山下昇 (1956): 黒瀬川構造帯. 地質学雑誌, 62, 82-103.
磯﨑行雄・板谷徹丸(1990):四国中央部および紀伊半島西部黒瀬川地帯北縁の弱変成岩類のK-Ar 年代−西单 日本における黒瀬川地帯の広がりについて−. 地質学雑誌, 96, 623-639.
磯﨑行雄・板谷徹丸(1991):四国中西部秩父累帯北帯の先ジュラ紀クリッペ −黒瀬川内帯起源説の提唱−. 地 質学雑誌, 97, 431-450.
磯﨑行雄・丸山茂徳(1991):日本におけるプレート造山論の歴史と日本列島の新しい地体構造区分.地学雑 誌, 100, 697-761.
磯﨑行雄・橋口孝泰・板谷徹丸(1992):黒瀬川クリッペの検証. 地質学雑誌, 98, 917-941.
村田明広・前川寛和(2007):四国中西部,秩父帯北帯の名野川衝上断層. 徳島大学総合学部自然科学研究, 21, 65-75.
村田明広・前川寛和(2009):四国中央部西石原地域における御荷鉾緑色岩類の地質構造. 徳島大学総合科学 部自然科学研究, 23, 77-85.
Ohkawa, M., Takeuchi, M., Li, Y., Saitoh, S. and Yamamoto, K. (2021): Paleogeography and tectonic evolution of a late Paleozoic to earliest Mesozoic magmatic arc in East Asia based of detrital zircons from Early Triassic Shingai Unit, Kurosegawa Belt, Southwest Japan. Journal of Asian Earth Sciences, 212, 1-18.
脇田 浩二・宮崎一博・利光誠一・横山俊治・中川昌治(2007):伊野地域の地質.地域地質研究報告(5 万 分の1地質図幅,産総研地質総合センター, 140pp.
Hada, S., Yoshikura, S. and Gabites, J.E. (2000): U-Pb zircon ages for the Mitaki igneous rocks, Siluro-Devonian tuff, and granitic boulders in the Kurosegawa terrane, Southwest Japan. Memoirs of the Geological Society of Japan, no.56, 183-198.
田沢純一,1993,古生物地理からみた日本列島の先新第三紀テクトニクス.地質学雑誌,99,525-543.
Hada, S., Ishii, K., Landis, C.A., Aitchison, J.C. and Yoshikura, S. (2001): Kurosegawa terrane in Southwest Japan: Disrupted remnants of Gondwana-derived terranes. Gondwana Research, 4, 27-38.
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