Presentation Information
[J-P-8]Estimation of the environment of Kuzu limestone based on microfossils
*KOKUGAKUIN UNIVERSITY TOCHIGI HIGH SCHOOL1 (1. KOKUGAKUIN UNIVERSITY TOCHIGI HIGH SCHOOL)
研究者生徒氏名:髙森 亜門
栃木県佐野市の葛生地域に分布するペルム系石灰岩は葛生石灰岩とよばれ、下位の出流層と上位の鍋山層から成る。出流層は玄武岩質溶岩や凝灰岩が主体で、鍋山層はさらに、下部石灰岩部層、ドロマイト岩、上部石灰岩部層に区分される(柳本,1973)。
今回の発表は、日本古生物学会第173回高校生ポスターセッションにて発表した際に調査した吉澤石灰工業および住友大阪セメントの鉱山内のほか、山菅、大釜に加え、栃木市出流町、埼玉県小鹿野町の二子山、秩父市の武甲山も加え、計12地点のサンプルを採取した。得られたサンプルは岩石カッターを用いて切断し、計222枚の岩石薄片を作製した。顕微鏡で薄片の中のフズリナや微化石を観察し、その種類を同定した。また、石灰岩の岩相も併せて解析することで、堆積環境を推定した。山菅、大釜、出流、二子山、武甲山では、薄片のサンプルが少ない点や状態等により、石灰岩を酢酸で溶かし、その残渣からの観察も試みた。
吉澤石灰工業で調査した場所のうち、最下部と推定される地点には凝灰岩が見られた。この部分は出流層に相当し、海底火山噴火により作られた海山の土台であると考えられる。その上位には石灰岩がみられ、Parafusulina kuzuensis、Parafusulina yabei などのフズリナが観察できた。これらのフズリナの産出から、この層準は下部石灰岩部層だとわかった。しかし、その地点とは別の層ではParafusulina japonicaが産出していたため、上部石灰岩部層も分布すると分かった。フズリナの間は泥サイズの細かい堆積物が埋めていることから、静穏ではあるがフズリナくらいの大きさの粒子が運搬されてくる波浪環境になっていったと考えられる。住友大阪セメント鉱山内で採取した9サンプルはすべて灰色で、粒子が細粒砂ほどの大きさである岩相であった。また、Parafusulina japonicaが一部の層から産出するため、上部石灰岩部層とわかった。これらのサンプルが示す堆積環境としては、波浪の影響が少なく生物が多い浅瀬、あるいはその近くであった可能性が高い。山菅では、Parafusulina yabeiが観察できたため、下部石灰岩部層と分かり、珊瑚が観察できたことから、温暖であり、水深は比較的浅いと考えられる。大釜では、山菅と同様にParafusulina yabeiが観察できた。また、多くの腕足類やコケムシなど、非常に多くの種類が観察できた。出流では、フズリナは観察することができなかったが、四射サンゴが観察できた点から、山菅同様に温暖であり、水深は比較的浅いと考えられる。また、12地点で唯一サメの歯が観察できた。二子山では、Daixina sokensisが観察できたため、石炭紀後期だと考えられ、武甲山では、Triticitesが観察できたため、ペルム紀前期と考えられる。
本研究は以上のそれぞれの地点の特徴を踏まえ、葛生地域と秩父地域を比較し、葛生石灰岩の環境を推定した。
キーワード:葛生、秩父、フズリナ、岩相、環境推定
栃木県佐野市の葛生地域に分布するペルム系石灰岩は葛生石灰岩とよばれ、下位の出流層と上位の鍋山層から成る。出流層は玄武岩質溶岩や凝灰岩が主体で、鍋山層はさらに、下部石灰岩部層、ドロマイト岩、上部石灰岩部層に区分される(柳本,1973)。
今回の発表は、日本古生物学会第173回高校生ポスターセッションにて発表した際に調査した吉澤石灰工業および住友大阪セメントの鉱山内のほか、山菅、大釜に加え、栃木市出流町、埼玉県小鹿野町の二子山、秩父市の武甲山も加え、計12地点のサンプルを採取した。得られたサンプルは岩石カッターを用いて切断し、計222枚の岩石薄片を作製した。顕微鏡で薄片の中のフズリナや微化石を観察し、その種類を同定した。また、石灰岩の岩相も併せて解析することで、堆積環境を推定した。山菅、大釜、出流、二子山、武甲山では、薄片のサンプルが少ない点や状態等により、石灰岩を酢酸で溶かし、その残渣からの観察も試みた。
吉澤石灰工業で調査した場所のうち、最下部と推定される地点には凝灰岩が見られた。この部分は出流層に相当し、海底火山噴火により作られた海山の土台であると考えられる。その上位には石灰岩がみられ、Parafusulina kuzuensis、Parafusulina yabei などのフズリナが観察できた。これらのフズリナの産出から、この層準は下部石灰岩部層だとわかった。しかし、その地点とは別の層ではParafusulina japonicaが産出していたため、上部石灰岩部層も分布すると分かった。フズリナの間は泥サイズの細かい堆積物が埋めていることから、静穏ではあるがフズリナくらいの大きさの粒子が運搬されてくる波浪環境になっていったと考えられる。住友大阪セメント鉱山内で採取した9サンプルはすべて灰色で、粒子が細粒砂ほどの大きさである岩相であった。また、Parafusulina japonicaが一部の層から産出するため、上部石灰岩部層とわかった。これらのサンプルが示す堆積環境としては、波浪の影響が少なく生物が多い浅瀬、あるいはその近くであった可能性が高い。山菅では、Parafusulina yabeiが観察できたため、下部石灰岩部層と分かり、珊瑚が観察できたことから、温暖であり、水深は比較的浅いと考えられる。大釜では、山菅と同様にParafusulina yabeiが観察できた。また、多くの腕足類やコケムシなど、非常に多くの種類が観察できた。出流では、フズリナは観察することができなかったが、四射サンゴが観察できた点から、山菅同様に温暖であり、水深は比較的浅いと考えられる。また、12地点で唯一サメの歯が観察できた。二子山では、Daixina sokensisが観察できたため、石炭紀後期だと考えられ、武甲山では、Triticitesが観察できたため、ペルム紀前期と考えられる。
本研究は以上のそれぞれの地点の特徴を踏まえ、葛生地域と秩父地域を比較し、葛生石灰岩の環境を推定した。
キーワード:葛生、秩父、フズリナ、岩相、環境推定
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