Presentation Information
[T18-O-11]Disaster and measures on liquefaction-fluidazation around Nishi-ku, Niigata City by The 2024 Noto Peninsula Earthquake
*Takayuki KAWABE1, Osamu KAZAOKA2 (1. Yamagata Univ., 2. Research Institute of Environmental Geology, Chiba)
Keywords:
The 2024 Noto Penninsura Earthquake,Nishi-ku,Niigata City,Liquefaction-fluidazation,sand dyke,ejected sand,land slide
はじめに
2024年1月1日に発生した能登半島地震(Mj7.6,最大震度7)によって,能登半島地域において甚大な被害が発生するとともに,日本海を挟んで東北東に約160km離れた新潟市西区の砂丘背後の0メートル地帯において,液状化・流動化に伴う被害が発生した.
筆者らは,被害の大きかった新潟市西区のうち,大野,寺尾~寺尾東,鳥原~善久,山田の各地域および江南区天野において,液状化・流動化被害の状況とその低減にために調査をおこなった.
調査結果
液状化・流動化被害は,砂丘内陸側斜面に隣接する西川の沖積平野に発達するローブ状の微高地および旧河道低地において被害が集中することが明らかになった.
旧河道低地,特に蛇行した旧河道低地では,旧河道の攻撃斜面側で液状化・流動化が発生して道路に変状がみられ住宅の基礎にも影響を与えている.たとえ地表の傾斜が4/1000程度であっても,地表はその最大傾斜の方向(攻撃斜面側)に移動している.
砂丘内陸側斜面に接続する泥主体の沖積低地上に発達するローブ状の微高地で,液状化・流動化の被害が激しい.微高地は,傾斜:1~4/1000,比高数十cmで,噴砂がみられることから,微高地は砂で構成されていることがわかる.砂丘から飛散した砂の風成層か,背後の砂丘斜面が人工的にカットされた地形が残っているので,宅地化以前の水田のぬかるみを解消するために,水田に客土を行った結果の可能性もあろう.
結果的に周囲に比べて液状化を起こしやすい透水層ができた可能性がある.
液状化・流動化の起こるメカニズム
ここで,液状化・流動化被害の発生要因と対策を考えるために,液状化現象・流動化現象の発生するメカニズムを記す.
〇液状化現象
固体としてふるまっていたゆるい砂層が液体状に変わること.ゆるい比較的粒径が揃った砂層は粒子間に隙間が多数存在し,浅い深度に地下水面があり,その隙間が地下水に満たされている時,強い地震動に伴い間隙水の水圧が上昇し,地下水位が地表を超える程度となると,支えあって接合していた粒子がバラバラになり水中を浮遊し,地層としての支持力は失う(Seed and Lee, 1965;J.R.L. Allen, 1984 ).
〇流動化現象
液状化した地層中の間隙水圧は高く,水と粒子が一緒になって圧力の低い地上などへ噴出する際,粒子は元の場所から移動することになる.この現象を流動化と呼ぶ(Lowe,1975;J.R.L. Allen, 1984).液状化層の上位に重なる非液状化部分において,地面の波打ちなどにより,亀裂が生じここを通って地表へ地下水と砂が噴出する.この時,この亀裂内には噴砂の一部が挟まれている(噴砂脈)場合が多い.
〇液状化地すべり
ゆるい砂層が液状化する時,地表面に高低差があり,液状化部分が側方に連続している場合は,液状化部分がすべり面となって全体が低い方へ移動することがある.これが液状化に伴う地すべりで,この際,液状化部分では流動化も伴う.1964年の新潟地震時には多くの場所でこのような現象が見られた(新潟大学理学部地質鉱物学教室・深田地質研究所,1964).
液状化・流動化の被害低減のために
上記のように,液状化・流動化の発生する要因には,十分な間隙をもつ透水性のよい未固結の砂層の存在があり,浅い地下水の存在という,大きく2つの要因がある.
被害を低減するには,この2つの要因を抑えることである.前者に関しては対策が大がかりになり既存の住宅地には不向きである.従って,今回のような場所での対策としては,地下水位を下げて,間隙水が滞留しない,間隙水圧を上昇させないようにすることである.このような条件が続く限り,同様な強震動を被れば,何度でも液状化・流動化の被害を被ることになる.
まずは,地下水位を下げるために,地下水位より低い位置に,排水暗渠を敷設することが最善の方法である.
謝 辞
調査に先立ち,板東氏をはじめとする株式会社KOWAの方々に被害地の案内をいただいた.記してお礼を申し上げる.
文 献
Seed,H.B. and Lee, K.L., 1965, Univ. Calif., Berkeley, Dep. Civil Engineering Report No. TE-65-5.
Lowe, D.R., 1975, Sedimentology, vol.22, 157-204.
Allen, J.R.L., 1984, Chapter 8. Sedimentary structures volumeⅡ, Elsevier, 293-342.
新潟大学理学部地質鉱物学教室・深田地質研究所,1964,新潟地震地盤災害図,新潟大学.
2024年1月1日に発生した能登半島地震(Mj7.6,最大震度7)によって,能登半島地域において甚大な被害が発生するとともに,日本海を挟んで東北東に約160km離れた新潟市西区の砂丘背後の0メートル地帯において,液状化・流動化に伴う被害が発生した.
筆者らは,被害の大きかった新潟市西区のうち,大野,寺尾~寺尾東,鳥原~善久,山田の各地域および江南区天野において,液状化・流動化被害の状況とその低減にために調査をおこなった.
調査結果
液状化・流動化被害は,砂丘内陸側斜面に隣接する西川の沖積平野に発達するローブ状の微高地および旧河道低地において被害が集中することが明らかになった.
旧河道低地,特に蛇行した旧河道低地では,旧河道の攻撃斜面側で液状化・流動化が発生して道路に変状がみられ住宅の基礎にも影響を与えている.たとえ地表の傾斜が4/1000程度であっても,地表はその最大傾斜の方向(攻撃斜面側)に移動している.
砂丘内陸側斜面に接続する泥主体の沖積低地上に発達するローブ状の微高地で,液状化・流動化の被害が激しい.微高地は,傾斜:1~4/1000,比高数十cmで,噴砂がみられることから,微高地は砂で構成されていることがわかる.砂丘から飛散した砂の風成層か,背後の砂丘斜面が人工的にカットされた地形が残っているので,宅地化以前の水田のぬかるみを解消するために,水田に客土を行った結果の可能性もあろう.
結果的に周囲に比べて液状化を起こしやすい透水層ができた可能性がある.
液状化・流動化の起こるメカニズム
ここで,液状化・流動化被害の発生要因と対策を考えるために,液状化現象・流動化現象の発生するメカニズムを記す.
〇液状化現象
固体としてふるまっていたゆるい砂層が液体状に変わること.ゆるい比較的粒径が揃った砂層は粒子間に隙間が多数存在し,浅い深度に地下水面があり,その隙間が地下水に満たされている時,強い地震動に伴い間隙水の水圧が上昇し,地下水位が地表を超える程度となると,支えあって接合していた粒子がバラバラになり水中を浮遊し,地層としての支持力は失う(Seed and Lee, 1965;J.R.L. Allen, 1984 ).
〇流動化現象
液状化した地層中の間隙水圧は高く,水と粒子が一緒になって圧力の低い地上などへ噴出する際,粒子は元の場所から移動することになる.この現象を流動化と呼ぶ(Lowe,1975;J.R.L. Allen, 1984).液状化層の上位に重なる非液状化部分において,地面の波打ちなどにより,亀裂が生じここを通って地表へ地下水と砂が噴出する.この時,この亀裂内には噴砂の一部が挟まれている(噴砂脈)場合が多い.
〇液状化地すべり
ゆるい砂層が液状化する時,地表面に高低差があり,液状化部分が側方に連続している場合は,液状化部分がすべり面となって全体が低い方へ移動することがある.これが液状化に伴う地すべりで,この際,液状化部分では流動化も伴う.1964年の新潟地震時には多くの場所でこのような現象が見られた(新潟大学理学部地質鉱物学教室・深田地質研究所,1964).
液状化・流動化の被害低減のために
上記のように,液状化・流動化の発生する要因には,十分な間隙をもつ透水性のよい未固結の砂層の存在があり,浅い地下水の存在という,大きく2つの要因がある.
被害を低減するには,この2つの要因を抑えることである.前者に関しては対策が大がかりになり既存の住宅地には不向きである.従って,今回のような場所での対策としては,地下水位を下げて,間隙水が滞留しない,間隙水圧を上昇させないようにすることである.このような条件が続く限り,同様な強震動を被れば,何度でも液状化・流動化の被害を被ることになる.
まずは,地下水位を下げるために,地下水位より低い位置に,排水暗渠を敷設することが最善の方法である.
謝 辞
調査に先立ち,板東氏をはじめとする株式会社KOWAの方々に被害地の案内をいただいた.記してお礼を申し上げる.
文 献
Seed,H.B. and Lee, K.L., 1965, Univ. Calif., Berkeley, Dep. Civil Engineering Report No. TE-65-5.
Lowe, D.R., 1975, Sedimentology, vol.22, 157-204.
Allen, J.R.L., 1984, Chapter 8. Sedimentary structures volumeⅡ, Elsevier, 293-342.
新潟大学理学部地質鉱物学教室・深田地質研究所,1964,新潟地震地盤災害図,新潟大学.
Comment
To browse or post comments, you must log in.Log in