Presentation Information
[T5-O-4]Possible terrace surface landslide and its countermeasure: A case of Fukushima Daiichi NPPs
*Akira ISHIWATARI1 (1. Nuclear Regulation Authority, JAPAN)
Keywords:
marine terrace,landslide,weathered zone,Fukushima Daiichi Nuclear Power Plants,Tomioka (Dainenji) Formation
海成段丘における地すべりが、段丘を侵食・破壊して消滅させる重要なプロセスの一つであることは、太田陽子(1999: 地理評, 72A-12, 829-848)が西津軽地域の海成段丘につき、主に段丘崖の急斜面で発生する地すべりに着目して議論した。小論では、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東電」)福島第一原子力発電所(以下「1F(イチエフ)」)が立地する海成中位段丘において、段丘堆積物直下の基盤岩(東電の「富岡層」、地質調査所の5万分の1地質図「浪江及び磐城富岡」(久保和也ほか1994)では「仙台層群上部の大年寺層」)上面に広く分布する軟弱な風化帯が地すべりを発生させる可能性、そしてそれが1Fの重要施設に影響を与える可能性と東電が決定した対策について述べる。
平坦面が広く分布する段丘地は山間地に比べて地すべりのリスクが小さいと考えられる。しかし、「浪江及び磐城富岡」地質図は1F敷地の約1km南の東台地区に直径1kmの地すべり堆積物(岩屑)を示し、同説明書は「平均傾斜5º以下の緩斜面に比高5-10mの小丘が点在する地形が見られる。堆積物は露頭では確認できないが(中略)この地形は表層地すべりによるものと推定される」と述べた。1F周辺の標高30m程度の中位段丘では、他にも航空写真観察で同様の地すべりが疑われる地形が複数ある(南相馬市小高区塚原、大熊町夫沢(おっとざわ)長者原、楢葉町下小塙(しもこばな)等:東電は東台を含め大規模な地すべりを否定:2022年12月7日第2回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合 資料2-2-1; 2023年4月25日第9回同会合 資料1, p. 24-42)。
東台地区には汚染土の中間貯蔵施設が建設され、地形が大きく改変されたが、建設の事前調査の複数のボーリング試料において、段丘堆積物直下の基盤上面付近にN値が極端に低い(≦5)風化帯が確認された(2022年12月7日会合資料2-2-1, 2-2-2)。このため、規制委は東電に対し1Fの敷地内のボーリング試料についても同様の風化帯の有無を確認するよう指示した結果、段丘堆積物直下の基盤上面に1~8m程度の厚さで軟弱な風化帯が普遍的に分布することが確認され(同会合資料2-1-1, 2-1-2; 2023年4月25日会合資料1-1, p. 4-5)、海側に向かって風化帯が厚くなる傾向が判明した。東電は地すべりのリスク低減のため、耐震重要施設である共用プール(原子炉から取り出した核燃料を保管)の西方20mにそびえる現在の斜面を30m西へ掘り下げるセットバック工事を行い、斜面と重要施設の離隔を50m確保することとした(2023年12月26日第16回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合資料1, p. 14-15)。石渡は2024年4月4日に現場で状況を確認した。
段丘堆積物直下の基盤上面に著しく軟弱な風化帯が存在し、それが海側へ緩く傾いていれば、それがすべり面となって段丘堆積物が「表層すべり」を起こす可能性がある。その場合、顕著な滑落崖は形成されないことも考えられる。段丘地の地盤防災では、急傾斜の段丘崖に伴う地すべりの他に、上述のような段丘面下の「表層すべり」にも注意する必要がある。
平坦面が広く分布する段丘地は山間地に比べて地すべりのリスクが小さいと考えられる。しかし、「浪江及び磐城富岡」地質図は1F敷地の約1km南の東台地区に直径1kmの地すべり堆積物(岩屑)を示し、同説明書は「平均傾斜5º以下の緩斜面に比高5-10mの小丘が点在する地形が見られる。堆積物は露頭では確認できないが(中略)この地形は表層地すべりによるものと推定される」と述べた。1F周辺の標高30m程度の中位段丘では、他にも航空写真観察で同様の地すべりが疑われる地形が複数ある(南相馬市小高区塚原、大熊町夫沢(おっとざわ)長者原、楢葉町下小塙(しもこばな)等:東電は東台を含め大規模な地すべりを否定:2022年12月7日第2回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合 資料2-2-1; 2023年4月25日第9回同会合 資料1, p. 24-42)。
東台地区には汚染土の中間貯蔵施設が建設され、地形が大きく改変されたが、建設の事前調査の複数のボーリング試料において、段丘堆積物直下の基盤上面付近にN値が極端に低い(≦5)風化帯が確認された(2022年12月7日会合資料2-2-1, 2-2-2)。このため、規制委は東電に対し1Fの敷地内のボーリング試料についても同様の風化帯の有無を確認するよう指示した結果、段丘堆積物直下の基盤上面に1~8m程度の厚さで軟弱な風化帯が普遍的に分布することが確認され(同会合資料2-1-1, 2-1-2; 2023年4月25日会合資料1-1, p. 4-5)、海側に向かって風化帯が厚くなる傾向が判明した。東電は地すべりのリスク低減のため、耐震重要施設である共用プール(原子炉から取り出した核燃料を保管)の西方20mにそびえる現在の斜面を30m西へ掘り下げるセットバック工事を行い、斜面と重要施設の離隔を50m確保することとした(2023年12月26日第16回特定原子力施設の実施計画の審査等に係る技術会合資料1, p. 14-15)。石渡は2024年4月4日に現場で状況を確認した。
段丘堆積物直下の基盤上面に著しく軟弱な風化帯が存在し、それが海側へ緩く傾いていれば、それがすべり面となって段丘堆積物が「表層すべり」を起こす可能性がある。その場合、顕著な滑落崖は形成されないことも考えられる。段丘地の地盤防災では、急傾斜の段丘崖に伴う地すべりの他に、上述のような段丘面下の「表層すべり」にも注意する必要がある。
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