Presentation Information
[T8-O-6]Groundwater level change in Boso Peninsula caused by the 2024 Noto Peninsula earthquake
*Atsushi KAGAWA1, Kunio FURUNO2 (1. Research Institute of Environmental Geology, Chiba, 2. none)
Keywords:
groundwater level change,monitoring well,2024 Noto Peninsula earthquake
はじめに
2024年1月1日16:10頃発生した能登半島を震源とするM7.6の地震では最大震度7を観測,北陸地方を中心に甚大な被害が生じた(気象庁,2024).千葉県の最大震度は3で目立った被害は生じなかったが,地震に伴い多くの観測井で明瞭な地下水位変動が観測された.これまでも地震に伴う地下水位変動について報告されてきた(奥田 ・古野,1981,香川・古野,2012等)が,近年,観測機器のデジタル化が進み時間的な分解能が向上していることから,最近の観測成果について報告する.
千葉県による地下水位観測体制
千葉県では地盤沈下の監視や地下水有効利用を目的として,各帯水層・地域毎に計158観測井を設置し地下水位の連続観測を行っている.地下水位はフロート式アナログチャート記録型や水圧センサ式デジタル記録型の水位計によって観測されており,デジタル式では主に1分間隔で記録している.このうち,地震動に対して特に高感度で地下水位が反応するYc-3号井(八街市沖:深度117m)では,4秒の記録間隔で地下水位を観測している.
2024年能登半島地震発生時の地下水位変動
地震発生後,16:11頃より多くの観測井で明瞭な地下水位変動が観測された.浦安市内の観測井では,帯水層毎に異なる地下水位変動が認められた(図-1).人工地層の地下水位を観測するWURY-1号井(浦安市高洲: 深度5m)では,地下水位が瞬間的に8mm急上昇し,30分程の短時間で元の水位まで回復した.沖積層最上部の地下水位を観測するWURY-2号井( 浦安市高洲: 深度10m)では地下水位が急激に約7mm上昇した後,数時間かけて緩やかに水位が上昇した.下総層群の地下水位を観測する浦安-3号井( 浦安市猫実: 深度250m)では,5~6cmの振動的な地下水位上下変動の後,初期より5mm程低下した水位で一旦安定し,続いて潮位の影響を受けた緩やかな水位上昇が認められた.なお沖積層の地層収縮量を観測している浦安-1号井(浦安市猫実: 深度60m)では,地震の前後で約0.07mmの地層収縮を記録した.
下総層群の地下水位を観測する Yc-3号井では,16:11過ぎに低下方向への水位変動が始まり,振幅40cmを超える振動的な上下動を6分ほど示した後,地震前より14mmほど水位が低下して安定した(図-2).地下水位がほぼ安定した後も,1時間以上にわたって数mmの地下水位上下動が継続した.同様に下総層群を帯水層とする多数の観測井で地下水位の低下が観測され,その低下量は数mm~19mm程であった(図-3).
GNSS測地によって観測された地殻変動
2024年能登半島地震では,北西―南東方向の圧縮軸をもつ逆断層型の発震メカニズムが推定されている(気象庁,2024).国土地理院のGNSS連続観測網(GEONET)によると,東北地方南部から関東・中部地方東部にかけて,圧縮軸と調和的な北西方向(震源方向)への水平変位が広く認められた(国土地理院,2024)(図-4).このうち房総半島に設置された電子基準点では,北西方向に約7~10mmの水平変位が観測されているが,垂直方向では明瞭な変位は認められていない.
まとめ
2024年能登半島地震発生時,東京湾岸に分布する未固結の人工地層や沖積層では地震動に伴う水圧上昇により地下水位の上昇が観測された.一方,より広域の地殻変動を反映する下総層群を帯水層とする観測井では,広く5~19mmの地下水位低下が観測された.これは震源断層活動に伴う伸張応力により本州中部一帯が日本海側へ水平変位したことにより,房総半島でも下総層群が引き延ばされ地下水圧が減少し,多くの観測井で地下水位の低下を生じたものと推定される.
文 献
気象庁,2024,令和6年1月地震・火山月報(防災編).
奥田庸雄・古野邦雄,1981,地盤沈下・地下水位観測井における地震時の水位変化.千葉県公害研究所報告13.
香川 淳・古野邦雄,2012,2011年東北地方太平洋沖地震による関東地下水盆南東部における地下水位変動.日本地質学会第119年学術大会講演要旨.
国土地理院,2024,令和6年1月の地殻変動.別紙4 関東・中部地方.
2024年1月1日16:10頃発生した能登半島を震源とするM7.6の地震では最大震度7を観測,北陸地方を中心に甚大な被害が生じた(気象庁,2024).千葉県の最大震度は3で目立った被害は生じなかったが,地震に伴い多くの観測井で明瞭な地下水位変動が観測された.これまでも地震に伴う地下水位変動について報告されてきた(奥田 ・古野,1981,香川・古野,2012等)が,近年,観測機器のデジタル化が進み時間的な分解能が向上していることから,最近の観測成果について報告する.
千葉県による地下水位観測体制
千葉県では地盤沈下の監視や地下水有効利用を目的として,各帯水層・地域毎に計158観測井を設置し地下水位の連続観測を行っている.地下水位はフロート式アナログチャート記録型や水圧センサ式デジタル記録型の水位計によって観測されており,デジタル式では主に1分間隔で記録している.このうち,地震動に対して特に高感度で地下水位が反応するYc-3号井(八街市沖:深度117m)では,4秒の記録間隔で地下水位を観測している.
2024年能登半島地震発生時の地下水位変動
地震発生後,16:11頃より多くの観測井で明瞭な地下水位変動が観測された.浦安市内の観測井では,帯水層毎に異なる地下水位変動が認められた(図-1).人工地層の地下水位を観測するWURY-1号井(浦安市高洲: 深度5m)では,地下水位が瞬間的に8mm急上昇し,30分程の短時間で元の水位まで回復した.沖積層最上部の地下水位を観測するWURY-2号井( 浦安市高洲: 深度10m)では地下水位が急激に約7mm上昇した後,数時間かけて緩やかに水位が上昇した.下総層群の地下水位を観測する浦安-3号井( 浦安市猫実: 深度250m)では,5~6cmの振動的な地下水位上下変動の後,初期より5mm程低下した水位で一旦安定し,続いて潮位の影響を受けた緩やかな水位上昇が認められた.なお沖積層の地層収縮量を観測している浦安-1号井(浦安市猫実: 深度60m)では,地震の前後で約0.07mmの地層収縮を記録した.
下総層群の地下水位を観測する Yc-3号井では,16:11過ぎに低下方向への水位変動が始まり,振幅40cmを超える振動的な上下動を6分ほど示した後,地震前より14mmほど水位が低下して安定した(図-2).地下水位がほぼ安定した後も,1時間以上にわたって数mmの地下水位上下動が継続した.同様に下総層群を帯水層とする多数の観測井で地下水位の低下が観測され,その低下量は数mm~19mm程であった(図-3).
GNSS測地によって観測された地殻変動
2024年能登半島地震では,北西―南東方向の圧縮軸をもつ逆断層型の発震メカニズムが推定されている(気象庁,2024).国土地理院のGNSS連続観測網(GEONET)によると,東北地方南部から関東・中部地方東部にかけて,圧縮軸と調和的な北西方向(震源方向)への水平変位が広く認められた(国土地理院,2024)(図-4).このうち房総半島に設置された電子基準点では,北西方向に約7~10mmの水平変位が観測されているが,垂直方向では明瞭な変位は認められていない.
まとめ
2024年能登半島地震発生時,東京湾岸に分布する未固結の人工地層や沖積層では地震動に伴う水圧上昇により地下水位の上昇が観測された.一方,より広域の地殻変動を反映する下総層群を帯水層とする観測井では,広く5~19mmの地下水位低下が観測された.これは震源断層活動に伴う伸張応力により本州中部一帯が日本海側へ水平変位したことにより,房総半島でも下総層群が引き延ばされ地下水圧が減少し,多くの観測井で地下水位の低下を生じたものと推定される.
文 献
気象庁,2024,令和6年1月地震・火山月報(防災編).
奥田庸雄・古野邦雄,1981,地盤沈下・地下水位観測井における地震時の水位変化.千葉県公害研究所報告13.
香川 淳・古野邦雄,2012,2011年東北地方太平洋沖地震による関東地下水盆南東部における地下水位変動.日本地質学会第119年学術大会講演要旨.
国土地理院,2024,令和6年1月の地殻変動.別紙4 関東・中部地方.
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