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[T1-O-2]Geometrical features of pores formed by hydrothermal alteration of feldspar: analysis by persistent homology★「日本地質学会学生優秀発表賞」受賞★
*Shuhei Fujiwara1, Atsushi Okamoto1, Kazuki Yoshida2, Tomohiro Ishii2, Masao Kimura2, Daiki Kido2 (1. Graduate School of Environmental Studies, Tohoku University, 2. KEK)
Keywords:
feldspar,pore,persistent homology,3D,PCA
<はじめに>
近年、変質した岩石中の長石や硫化鉱物、炭酸塩鉱物の置換組織において、普遍的に空隙が存在することが発見されている。流体による鉱物置換反応に伴って発達するこのような空隙は、物質移動の通り道として重要である可能性があり、その形成メカニズムが注目されている [1]。特に、地殻の主要鉱物である長石の変質では、一方の長石(斜長石(Pl)またはカリ長石(Kfs))が塩水(NaCl, aqまたはKCl, aq)と反応し、他方の長石に置換する際に 、多数の微細空隙が形成される[1]。これまで、長石の置換反応に関する多くの熱水実験が行われてきたが、空隙のネットワークの3次元形状や連結性、その時間発展は、まだ十分には理解されていない。この1つの要因は、空隙の複雑な幾何学的形状を定量的に評価する指標が存在していないことにある。本研究では、まず、長石の置換反応の水熱反応実験を行い、その3次元的な特徴をX線CTで撮像した。X線CTで撮影した3次元構造について、パーシステントホモロジーを用いて解析することで幾何学的形状の定量的評価を行った 。
<方法>
長石の置換反応実験は500˚C, 150 MPaにおいて、2つの対照的な系で行った。(1) カリ長石(Kfs)とNaCl水溶液(2M)とを反応させ曹長石(Ab)による置換が起こる固体体積減少反応(ΔV=-8.14%)と、(2) AbとKCl水溶液と反応させKfsによる置換が起こる固体体積増加反応(ΔV=+8.85%)である。実験は、48時間の加熱実験とX線CT撮影を交互に2回繰り返すことにより、空隙の形状の時間的発展を調べた。パーシステントホモロジーは、位相幾何学の一分野であり[2, 3]、フィルトレーションという操作(voxelのthickening とthinning)により、連結成分の誕生(b)と死(d)をプロットし、パーシステンスダイアグラム(PD)を作成する。得られたPDの各点(b, d)はX-CT像の微細組織の‘かたち’の特徴量を表しており、その分布をベクトル化して主成分分析および、逆解析することで、空隙の幾何学的構造の特徴を定量化し、それに基づいて及び形成メカニズムについて検討した。
<結果と考察>
2つの置換反応実験のどちらも、実験後の生成物を観察すると、結晶の亀裂や外縁部を進行する置換反応の反応フロントで空隙が形成された。曹長石(Ab)からカリ長石(Kfs)への置換反応(固体体積の増加)では、孤立した空隙が板状の形をしており、主要な亀裂にほぼ平行に配列していた。逆に、カリ長石(Kfs)から曹長石(Ab)への置換反応(固体体積の減少)では、空隙は枝分かれのある3次元の樹状構造を示し、その一部は中央の主要な亀裂と部分的に繋がっていた。96時間の反応後、48時間における空隙は閉じられ、新たな空隙は移動した反応フロントで形成された。
0次のPDを作成すると、曹長石(Ab)からカリ長石(Kfs)への48時間の置換では、birthは広い範囲(-9から-2、1px は1.65μmに相当)に分布する一方、deathは狭い範囲(-6から-2)に集中していた。対照的に、96時間後には、(b<0, d<0)の点の分布は減り、(b<0, d>0)の分布が増加した。PD内のこの特徴的な変化は、くびれた大きな空隙(b<0, d<0)が複数の孤立した空隙(b<0, d>0)に分割されたことに対応している。カリ 長石(Kfs)から曹長石(Ab)への置換におけるPDでは、48時間から96時間への傾向は、曹長石(Ab)からカリ長石(Kfs)への置換で観察されたものとは逆で、複数の孤立した空隙が変質の進行とともに繋がり、大きな樹状の空隙が形成された特徴を表していると考えられる。固体体積の減少による反応フロントでのナノ空隙の連続的形成、および化学ポテンシャル勾配に沿った空隙の拡散と凝集が、そのような特徴的な空隙構造の形成を担っている可能性がある。一方、亀裂面と平行および垂直方向に伸びる空隙セットに対して、PDをもとに主成分分析を行ったところ、PC1とPC2により両者が異なるクラスターとして区別できたことから、空隙の幾何学的特徴の違いは結晶方位の違いにより生じていることが示唆された 。
1. Plümper O, Botan A, Los C, Liu Y, et al. 2017, Nature Geoscience, 10, 685-691
2. Kimura M, Obayashi I, Takeichi Y et al. 2018, Scientific Reports, 8, 3553.
3. Obayashi I, Y. Hiraoka, and Kimura M, 2018, J. Appl. Comput. Topol., 1, 421.
近年、変質した岩石中の長石や硫化鉱物、炭酸塩鉱物の置換組織において、普遍的に空隙が存在することが発見されている。流体による鉱物置換反応に伴って発達するこのような空隙は、物質移動の通り道として重要である可能性があり、その形成メカニズムが注目されている [1]。特に、地殻の主要鉱物である長石の変質では、一方の長石(斜長石(Pl)またはカリ長石(Kfs))が塩水(NaCl, aqまたはKCl, aq)と反応し、他方の長石に置換する際に 、多数の微細空隙が形成される[1]。これまで、長石の置換反応に関する多くの熱水実験が行われてきたが、空隙のネットワークの3次元形状や連結性、その時間発展は、まだ十分には理解されていない。この1つの要因は、空隙の複雑な幾何学的形状を定量的に評価する指標が存在していないことにある。本研究では、まず、長石の置換反応の水熱反応実験を行い、その3次元的な特徴をX線CTで撮像した。X線CTで撮影した3次元構造について、パーシステントホモロジーを用いて解析することで幾何学的形状の定量的評価を行った 。
<方法>
長石の置換反応実験は500˚C, 150 MPaにおいて、2つの対照的な系で行った。(1) カリ長石(Kfs)とNaCl水溶液(2M)とを反応させ曹長石(Ab)による置換が起こる固体体積減少反応(ΔV=-8.14%)と、(2) AbとKCl水溶液と反応させKfsによる置換が起こる固体体積増加反応(ΔV=+8.85%)である。実験は、48時間の加熱実験とX線CT撮影を交互に2回繰り返すことにより、空隙の形状の時間的発展を調べた。パーシステントホモロジーは、位相幾何学の一分野であり[2, 3]、フィルトレーションという操作(voxelのthickening とthinning)により、連結成分の誕生(b)と死(d)をプロットし、パーシステンスダイアグラム(PD)を作成する。得られたPDの各点(b, d)はX-CT像の微細組織の‘かたち’の特徴量を表しており、その分布をベクトル化して主成分分析および、逆解析することで、空隙の幾何学的構造の特徴を定量化し、それに基づいて及び形成メカニズムについて検討した。
<結果と考察>
2つの置換反応実験のどちらも、実験後の生成物を観察すると、結晶の亀裂や外縁部を進行する置換反応の反応フロントで空隙が形成された。曹長石(Ab)からカリ長石(Kfs)への置換反応(固体体積の増加)では、孤立した空隙が板状の形をしており、主要な亀裂にほぼ平行に配列していた。逆に、カリ長石(Kfs)から曹長石(Ab)への置換反応(固体体積の減少)では、空隙は枝分かれのある3次元の樹状構造を示し、その一部は中央の主要な亀裂と部分的に繋がっていた。96時間の反応後、48時間における空隙は閉じられ、新たな空隙は移動した反応フロントで形成された。
0次のPDを作成すると、曹長石(Ab)からカリ長石(Kfs)への48時間の置換では、birthは広い範囲(-9から-2、1px は1.65μmに相当)に分布する一方、deathは狭い範囲(-6から-2)に集中していた。対照的に、96時間後には、(b<0, d<0)の点の分布は減り、(b<0, d>0)の分布が増加した。PD内のこの特徴的な変化は、くびれた大きな空隙(b<0, d<0)が複数の孤立した空隙(b<0, d>0)に分割されたことに対応している。カリ 長石(Kfs)から曹長石(Ab)への置換におけるPDでは、48時間から96時間への傾向は、曹長石(Ab)からカリ長石(Kfs)への置換で観察されたものとは逆で、複数の孤立した空隙が変質の進行とともに繋がり、大きな樹状の空隙が形成された特徴を表していると考えられる。固体体積の減少による反応フロントでのナノ空隙の連続的形成、および化学ポテンシャル勾配に沿った空隙の拡散と凝集が、そのような特徴的な空隙構造の形成を担っている可能性がある。一方、亀裂面と平行および垂直方向に伸びる空隙セットに対して、PDをもとに主成分分析を行ったところ、PC1とPC2により両者が異なるクラスターとして区別できたことから、空隙の幾何学的特徴の違いは結晶方位の違いにより生じていることが示唆された 。
1. Plümper O, Botan A, Los C, Liu Y, et al. 2017, Nature Geoscience, 10, 685-691
2. Kimura M, Obayashi I, Takeichi Y et al. 2018, Scientific Reports, 8, 3553.
3. Obayashi I, Y. Hiraoka, and Kimura M, 2018, J. Appl. Comput. Topol., 1, 421.
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