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[T1-O-10]Rheological property of pelitic schists and its relationship to the Nankai Trough seismogenic zone

*Suzuka Yagi1 (1. Hiroshima University)
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Keywords:

Nankai Trough,Pelitic schist,Pore pressure,Muscovite,ETS

南海トラフのプレート境界型地震発生帯の上限・下限付近では様々なスロー地震活動が観測されている.このような領域では,高間隙水圧帯の存在が示唆されており (Shelly et al., Nature, 2006; Hirose et al., J. Geophys. Res.: Solid Earth, 2021), 高間隙水圧帯の存在は有効圧を低下させ岩石の強度を低下させる可能性がある (Peterson and Wong, J. Geophys. Res.: Solid Earth, 2005).また,南海トラフは付加体により構成されている沈み込み帯であることから,地震発生帯およびスロー地震発生帯でのプレート境界断層の挙動はこの付加体の中でも特に強度の低い泥質岩によって支配されると予想される.本研究では南海トラフを構成する泥質岩を用いて変形実験を行うことでそのレオロジー特性を観測し,南海トラフ地震発生帯との関連を探った.本研究の剪断変形実験にはGriggs型固体圧式高温高圧三軸変形試験機を用いた.試料には三波川帯に属する高知県長岡郡本山町汗見川沿いにて採取した泥質片岩を用いた.XRD測定によってこの試料は石英と白雲母が主要な鉱物であることが確認された.実験の温度圧力条件は,Kouketsu et al. (J. Metamorph. Geol., 2020)でのラマン分光法による測定結果と,Okuda et al. (Earth Planet. Sci. Lett., 2023)およびGao and Wang (Nature, 2017) で示された南海トラフの温度構造モデルから,温度は480℃,封圧は1250 MPaとした.この温度圧力条件は南海トラフのETS領域での環境に相当する.本研究では泥質片岩の力学挙動に対する水の影響を調べるために,乾燥(Dry)条件,含水(非排水)のWet条件,一定の間隙水圧(400 MPa, 600Mpa)を加えるPp controlled条件の3つの条件で実験を行った.実験の結果,すべての条件において石英による同様の実験よりも強度が低く,ピーク強度に達した後に不安定滑りを示し,応力降下を起こした.特にDry条件では破壊音を伴うスティックスリップを起こした.Wet条件およびPp controlled条件での摩擦係数は0.34,Dry条件では0.37であった.最も強度の高いDry条件の摩擦係数が,白雲母の摩擦係数に近いことから,泥質片岩の強度は白雲母によって支配されていることがわかる.また,WetおよびPp controlled条件ではより摩擦係数が低く,湿潤状態の白雲母に近い値になったことから,水の存在の影響で強度がより低下することが分かった.Tokle et al. (J. Struct. Geol., 2023)は,このような強度低下について,白雲母が水と優先的に反応し変形することによると提案している.応力降下速度はWetおよびPp controlled条件では4.15-17.9 MPa/sであった.一方で,Dry条件では243 MPa/sであった.滑り速度はWet条件およびPp controlled条件で2.1-9.0 μm/s,Dry条件では121.5 μm/sとなった.しかし,Dry実験については,力学データのサンプリングレートが十分でなく,応力降下速度および滑り速度を過小評価している可能性がある.Peterson and Wong (Springer, 2005)では,封圧,間隙水圧,有効圧の関係は,Peff = Pc − ??Ppとされている.5wt%の時の間隙水圧は,回収試料内に残っていた水から計算する (Okazaki et al., J. Geophys. Res.: Solid Earth, 2020) と767 MPaとなった.しかし,間隙水圧が0である1wt%の場合と剪断応力が変わらない.一方,Pp = 600 MPaの結果から間隙水圧によって強度が低下していることが確認でき,有効圧が働いていると考えられる.よって今回の実験条件である封圧1250 MPa下では,従来の有効圧則が働いていないと予想される.以上のことから,白雲母を含む泥質片岩は乾燥状態でも強度が低く,湿潤状態ではより強度が低下し不安定な挙動を示す可能性がある.また,封圧が高圧の状態では,従来の有効圧則が成立しない可能性がある.南海トラフのETS領域の挙動は,白雲母などを含む複雑な鉱物組成による不安定さと,水の存在による強度の低下が強く影響している可能性がある.今後高間隙水圧下での実験を行うことで,より詳細な高圧下の岩石の強度に対する間隙水圧の影響について調べる必要がある.

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