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[T3-O-2]Learning programs about the properties of Sapporo Nanseki

*Kiwamu OKAMOTO1 (1. Tokai University)
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Keywords:

Sapporo Nanseki,experiments and training

○札幌軟石とは
 「札幌軟石」は約4万年前の「支笏火山」の大規模な噴火により火砕流が発生して石狩低地帯に厚く堆積した溶結凝灰岩であり,支笏溶結凝灰岩と呼ばれる。札幌軟石は明治初期から昭和初期にかけて石材として建材や土木材料に利用されてきた。近代化によりこれらの歴史的建造物は減少しつつあるが,現在でも札幌軟石建築物は300棟以上現存し,歴史的価値が見直されてきており,2018年には北海道遺産に選定されている。札幌市石山地区を中心に多くの採石場が存在していたが,現在では辻石材工業が一カ所で採石しているのみである。
 北海道開拓期の札幌市の土台づくりに長年貢献してきたこの石材がどのような性質を持ち,そのためどのように活用されてきたのかを学ばせるため,いくつかの体験的な実習を取り入れた学習プログラムを考案して実践したので報告する。

○札幌軟石の活用
 札幌軟石は歴史的に主に建材として活用されてきた。その理由は軟石が加工しやすいこと,木材よりも頑丈であること,耐火性(断熱性)が高いこと等があげられる。そのため,特に倉庫・民家・店舗・教会・醸造庫・サイロ等の建材として利用されてきた。
 近年は建材としての利用はほとんどなくなったが,その風合いからタイル,オブジェ,雑貨等への利用,吸湿性を利用した傘立て,香油をしみ込ませて蒸発させるヒーリンググッズ,植物を植える植栽器,コースターなど次々と新しい利用方法が考え出されている。また,東海大学の笹川寛司は札幌軟石の芸術的活用を提案し,同じく東海大学の谷口裕美は河川の底生動物群集の多様性を回復する札幌軟石を用いた人工河床の開発を行っている。

○学習プログラム
 以下のような学習プログラムを考案し,大学での授業や一般市民への教育活動で実践を行っている。
・ 耐火性・断熱性→軟石をガストーチで加熱し,手で触ったり温度を計測する
・ 鉱物観察→軟石を砕いて実体顕微鏡で観察し,構成鉱物を調べる
・ 砕屑物の比較観察→軟石に含まれる火山岩片と支笏湖周辺から採取した火山岩との比較観察により,遠方の支笏火山から流れてきたことを理解する
・ 炭化木の観察→軟石中の炭化木の観察により,陸上の火砕流であることを理解する
・ 吸水性を調べる→水の吸水率や空隙率を調べる
・ 古藤野湖の考察→札幌軟石の分布図から火砕流が豊平川を堰き止めた状況を推定する
・ 現地の露頭の観察→溶結部と非溶結部の観察から,火砕流がどのようにして札幌軟石になったのかを考える
・ 軽石の形状の観察→軽石のレンズ状の形状から,溶結凝灰岩の成因を考察する
・ 自然災害の考察→軟石の分布状況や他地域の火砕流災害(ポンペイ等)から,当時の札幌の災害について考察する

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