Presentation Information
[G8-O-2]Museum education based on learning and creating together beyond the existing framework
*Yasuhiro OTA1, Hirotoshi SUGINO2 (1. Kitakyushu Museum of Natural History & Human History, 2. Geo & Bio Research Group)
Keywords:
Museum,Education,Cooperation,Geology
博物館には、展示を介した活動で例示されるように、様々な博物館教育(教育普及活動)の形態や手法が存在する(伊藤、2021など)。昨今は仮想空間も取り入れたデジタル環境下の取り組みも試みられている。教育は、英語でeducationと訳すが、語源はラテン語のeducatio(エデュカチオ)で「抽き出す」の意を有し、人が持つ可能性を引き出し、育てあげることを意味するとの考えがある(大堀、2014)。学習は能動的な学び、教育は受動的な学びとして捉える場面もあるが、博物館はその意味では、学習の場であり、教育の場でもあるが、様々な枠組みを超えたコミュニュケーションの場(プラットホーム)として機能することが重要である。
博物館は、社会教育施設や生涯学習施設、文化施設としての側面があり、地域や社会、市民という語を含む文脈の中で議論されて久しい。特に地質学を学術的視座とする自然史系博物館は、資料の収集方針において、地域(地域の自然研究:研究の基礎の確立)からグローバルな視点(研究の応用)へとその範囲を広げることも多く、“取り巻く地域社会に基軸を置いた活動”は必要不可欠となっている(柴田ほか、1973)。さらに博物館における研究の1つの特徴は、多角的視点からの研究、あらゆる学問領域からの学際的、総合的な研究があげられ、この視点も大切となる。近年、博物館の役割も多様化をとげ「地域の活力の向上」に資する活動や、博物館を取り巻く社会(周辺域から広域)に対する“知の循環”を意識すべき時代になっており、それらに供する教育・学習支援活動の模索も重要な課題となっている。
今回、筆頭筆者が担当する教育普及活動を10年以上にわたり共に実施してきた市民活動の事例を紹介しながら、その経験から得られた定性的な知見、つまり「既存の枠組みを超え、共に学び・創る、博物館教育の重要性」について発表する。
事例紹介:ジオ&バイオ研究会(任意団体)
・設立年月日:2011年5 月22日 ・会員数15名(発足時)
・設立目的:北九州市のジオパーク認定の支援
・会報:ジオ&バイオ研究会会報(年1回発行)
・基本姿勢:楽しみながら学ぶ(楽習会)
経験に基づき獲得した重要な視点:
・学びの独立性の担保【博物館ボランティアや友の会などとの違い:博物館を活動の基軸としない。また博物館(博物館活動)を支えることを主目的としていない。自身や自会の目指すゴールや活動目的等に共感・共有できるものに対して協働する。プラットホームは博物館である必要はない】
・学際的で多様性に富む学びの醸成と追求(専門性の高い学芸員では無しえない、多角的で、多様な視点からの学びの創造)
・包括的な学びと相乗効果への試み(知恵や知識や技術を持ち寄り協働する(混ぜる)ことで、新しい学びの創造と、学びの増幅と増深の試み)
・地域資源の発掘と教育・学習プログラムの開発【地域資源(地域の活性化や地域振興に寄与する資源や、文化観光に資する「文化資源」や教育素材としての「教育資源」等を含む)の発掘とそれらを活用した教育・学習プログラムの開発。例、北九州ジオカルタの製作や自然災害に端を発す“祭り”などの教育資源の抽出】
・自己実現の場の創造(基本的欲求としての愉しみの充足のみならず、知識の共有や省察の機会を創造し、社会的役割を負託することによる生きがいや、やりがいを提供する場の創造)
・生涯学習の機会促進(地域課題の解決へ取り組む“あらゆる学習”機会の提供)
・シビックプライドの涵養(実施する側、参加する側の両方)
・博物館活動の枠を超えた教育活動の広がりの構築(学校教育の現場や地域コミュニティーへの広がり)
・博物館活動の本来の使命や役割を託すことのできる独立組織への成長(例:自然に対する理解の促進や、自然物や自然そのものの継承についての代弁者化)
・構成員(会員)に対し、博物館経営や活動の原動力となり得る「博物館活動に対する理解促進や、理解者の養育、あるいは支援者の拡大等」を求めない。博物館の使命や役割として掲げられたGoalを共有し、到達(達成)することを目的とし、目指す手法は博物館とは異なることを認める。結果として、博物館の活動が理解され、博物館活動を支え、けん引するような会(団体)として成長することを期待する。
問題点:継続性(高齢化)、活動の不定期性、定型化と発展性、活動資金(補助金など)
今後の研究課題:定量的な分析
引用文献 伊藤寿朗, 2021, 市民のなかの博物館. 吉川弘文館(第九刷), 208p; 大堀 哲, 2014, 第1章 教育とは何か. 大堀 哲・水嶋英治編, 新博物館学教科書, 博物館学Ⅱ, 学文社, 172-181; 柴田敏隆・太田正道・日浦 勇編, 1973, 自然史博物館の収集活動.日本博物館協会,293p.
博物館は、社会教育施設や生涯学習施設、文化施設としての側面があり、地域や社会、市民という語を含む文脈の中で議論されて久しい。特に地質学を学術的視座とする自然史系博物館は、資料の収集方針において、地域(地域の自然研究:研究の基礎の確立)からグローバルな視点(研究の応用)へとその範囲を広げることも多く、“取り巻く地域社会に基軸を置いた活動”は必要不可欠となっている(柴田ほか、1973)。さらに博物館における研究の1つの特徴は、多角的視点からの研究、あらゆる学問領域からの学際的、総合的な研究があげられ、この視点も大切となる。近年、博物館の役割も多様化をとげ「地域の活力の向上」に資する活動や、博物館を取り巻く社会(周辺域から広域)に対する“知の循環”を意識すべき時代になっており、それらに供する教育・学習支援活動の模索も重要な課題となっている。
今回、筆頭筆者が担当する教育普及活動を10年以上にわたり共に実施してきた市民活動の事例を紹介しながら、その経験から得られた定性的な知見、つまり「既存の枠組みを超え、共に学び・創る、博物館教育の重要性」について発表する。
事例紹介:ジオ&バイオ研究会(任意団体)
・設立年月日:2011年5 月22日 ・会員数15名(発足時)
・設立目的:北九州市のジオパーク認定の支援
・会報:ジオ&バイオ研究会会報(年1回発行)
・基本姿勢:楽しみながら学ぶ(楽習会)
経験に基づき獲得した重要な視点:
・学びの独立性の担保【博物館ボランティアや友の会などとの違い:博物館を活動の基軸としない。また博物館(博物館活動)を支えることを主目的としていない。自身や自会の目指すゴールや活動目的等に共感・共有できるものに対して協働する。プラットホームは博物館である必要はない】
・学際的で多様性に富む学びの醸成と追求(専門性の高い学芸員では無しえない、多角的で、多様な視点からの学びの創造)
・包括的な学びと相乗効果への試み(知恵や知識や技術を持ち寄り協働する(混ぜる)ことで、新しい学びの創造と、学びの増幅と増深の試み)
・地域資源の発掘と教育・学習プログラムの開発【地域資源(地域の活性化や地域振興に寄与する資源や、文化観光に資する「文化資源」や教育素材としての「教育資源」等を含む)の発掘とそれらを活用した教育・学習プログラムの開発。例、北九州ジオカルタの製作や自然災害に端を発す“祭り”などの教育資源の抽出】
・自己実現の場の創造(基本的欲求としての愉しみの充足のみならず、知識の共有や省察の機会を創造し、社会的役割を負託することによる生きがいや、やりがいを提供する場の創造)
・生涯学習の機会促進(地域課題の解決へ取り組む“あらゆる学習”機会の提供)
・シビックプライドの涵養(実施する側、参加する側の両方)
・博物館活動の枠を超えた教育活動の広がりの構築(学校教育の現場や地域コミュニティーへの広がり)
・博物館活動の本来の使命や役割を託すことのできる独立組織への成長(例:自然に対する理解の促進や、自然物や自然そのものの継承についての代弁者化)
・構成員(会員)に対し、博物館経営や活動の原動力となり得る「博物館活動に対する理解促進や、理解者の養育、あるいは支援者の拡大等」を求めない。博物館の使命や役割として掲げられたGoalを共有し、到達(達成)することを目的とし、目指す手法は博物館とは異なることを認める。結果として、博物館の活動が理解され、博物館活動を支え、けん引するような会(団体)として成長することを期待する。
問題点:継続性(高齢化)、活動の不定期性、定型化と発展性、活動資金(補助金など)
今後の研究課題:定量的な分析
引用文献 伊藤寿朗, 2021, 市民のなかの博物館. 吉川弘文館(第九刷), 208p; 大堀 哲, 2014, 第1章 教育とは何か. 大堀 哲・水嶋英治編, 新博物館学教科書, 博物館学Ⅱ, 学文社, 172-181; 柴田敏隆・太田正道・日浦 勇編, 1973, 自然史博物館の収集活動.日本博物館協会,293p.
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