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[G8-O-4]Operation of the "Fossil Research Training": New Educational Activity on the Process of Paleontological Research.

*Ling Su1, Atena Shizuya1, Yoko Minegishi1, Kazunori Miyata1, Teppei Sonoda1, Kentaro Nakayama1, Kaito Asato1 (1. Fukui Prefectural Dinosaur Museum)
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Keywords:

Educational Activity,Fossil,Paleontology

福井県立恐竜博物館は2023年7月に新館増設を伴うリニューアルオープンを行い、「化石研究体験」という体験施設を新たに設けた。体験の教育的な意図と、1年ほどの運営を経て見えてきた運用上の課題について、参加者の反響を交えて紹介する。

【体験の概要】
 「研究の“REAL”に触れる」という趣旨で設置された「化石研究体験」は、実際の研究と同じ道具を使用して作業を体験することで、参加者に古生物学研究への理解と興味をより一層持ってもらうことを目的としている。そこで、化石を見つけて分類する、化石を取り出す、化石を組み立てて復元する、化石の内部を調べる、といった作業を軸に4種類の体験プログラムを制作した。
 参加者は3つの部屋(Lab. 1~3)を移動しながら、各部屋のナビゲーターの案内の下で、約2時間で3種の体験に取り組む(うち1種は半年ごとに入れ替える)。1回あたりの参加者数は24名を上限とし、1日に4~5回行う。なお、体験内容の専門性と安全性を考慮し、参加者は小学生以上に限定して、小学生には保護者の同時参加を必須とした。

【各体験の内容】
1) 化石発掘プラス(Lab.1冬季):化石を見分けるガイド(冊子と実物標本)を参考に、ハンマー・タガネ等を用いて実際の発掘現場の石から植物、貝や骨などの化石を見つけ、同定と分類の作業を行う。
2) T. rex頭骨復元(Lab.1夏季):タッチモニターに表示されるヒントを参考に、原寸大頭骨の34個のパーツのうち16個を組み立て復元し、骨の仕組みを学ぶ。
3) 化石クリーニング(Lab.2):2種のエアーツールを用いて模造岩を削り、肉食恐竜の歯(レプリカ)を剖出する。
4) CT化石観察(Lab.3):タッチパネルを操作し、化石や化石を含む岩石のCTデータから立体構築されたモデルを、任意断面での観察やCT閾値の操作、セグメンテーションパーツの可視化や色付けで、その内部を詳細に観察する。

【参加者の反響】
 オープンから8月末まで、そしてその後の休日はほぼ終日満員の状態が続き、2024年5月末までの平均充足率は約76%と好調である。参加者アンケートには2024年6月20日までに3316件の回答が寄せられ(回答率約17%)、体験全体の満足度は、「満足」の90.4%と「やや満足」の8.9%を合わせて99.3%と非常に高い。コメントには、「本物の研究者になった気分」「化石研究の理解を深めることができた」など好意的な意見が多く集まった。
 体験別に見ると、化石発掘プラス(満足80.3% 、やや満足15.0%)は「見分けが難しい」「答え合わせしたかった」「時間を長くしてほしい」とのコメントが多く、T. rex頭骨復元(満足86.7% 、やや満足11.7%)では「思っていたより難しい」「ゲーム感覚で楽しい」「頭骨の複雑さに驚き」との回答が多数あった。
 化石クリーニング(満足93.8% 、やや満足5.2%)は最も満足度が高く、「本格的」「夢中になった」「歯を持ち帰ることができて嬉しい」との声が殆どの中、「ツールが止まりやすい」との不満の声も複数あった。CT化石観察(満足69.8% 、やや満足21.7%)は満足度が相対的に低く、「内容が難しい」「何をしたらいいのかわからない」「途中で飽きた」とのコメントが散見される一方、「興味深い」「技術に驚いた」「全ての石や化石をCTで観察したくなった」などの意見も一定数あった。

【課題】
 T. rex頭骨復元と化石クリーニングは完成という明確なゴールがあり、比較的にエンターテインメント性が高く参加者の反応は良いが、時間内で完成させるため急ぐ者が多い。T. rex頭骨復元で表示される骨の名称や説明映像を見ていないことも多いため、教育的な効果を高める仕組みが望まれる。また、パーツの扱いも乱雑で、損耗が激しい。化石クリーニングでも、レプリカを早く取り出すためにエアーツールを乱暴に扱う参加者が多く、メンテナンスに多大な労力がかかる。
 一方、化石発掘プラスとCT化石観察はゴールを設定しておらず、自由な観察・学習を楽しむことができる。自ら進んで調べて知ろうとする参加者には好評だが、興味が湧かないため何をしたらいいのかわからず、達成感を感じずに飽きる者もいる。この場合、観察のポイントを教え、自ら調べるように誘導するナビゲーターの存在が重要だが、そうした人材の育成に加え、外国語対応にも大きな課題を残す。

【まとめ】
 本格的な研究体験を企画して運用し、多くの参加者と高評価が得られる完成度の高い施設を創出できた。しかし、その維持とコスト、ナビゲーターの人材確保と育成、そしてエンターテインメント性と教育的効果のバランスについて様々な課題が明らかになった。今後は設備と運用の改良をしつつ、より完成度を高める改定を重ね、新たな体験の企画も考案していきたい。

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