Presentation Information
[T16-O-3]Secular variations of Hf isotopes of zircons in granitoid with different ages: Changes in formation processes of granitic rocks and plate tectonics through geologic time
*Tsuyoshi Komiya1 (1. The University of Tokyo, Komaba)
Keywords:
Plate tectonics,zircon,Hf isotopes,Continental growth
プレートテクトニクスと花崗岩質大陸地殻の存在は太陽系内の他の惑星や衛星で発見されておらず、地球特有のものであり、かつ固体地球を特徴づける最も大きな特徴と言えよう。また、両者は密接に関連したものであり、顕生代以降の花崗岩質大陸地殻はプレートテクトニクスに関連する地殻の沈み込みによって形成されたとされる。一方で、初期地球の花崗岩質大陸地殻は顕生代の花崗岩同様にプレートテクトニクスによって形成されたとする仮説と初期地球特有のプロセスによって形成されたとする仮説が提唱され、その形成メカニズムに関しては多大な議論がある。地球に残された最古の花崗岩質地殻は40.3億年前のアカスタ片麻岩であるが、冥王代ジルコンの多くは顕生代以降の花崗岩中のジルコンと似た化学組成を持つため、初期太古代の花崗岩質大陸地殻の形成メカニズムを明らかにすることは冥王代のテクトニクスにも関連する。
これまで、地質学や岩石学を主とした物質学的研究(Komiya, 2004; Komiya et al., 1999, 2015)や地球熱史などに基づく数値モデリング手法(Korenaga, 2013)によって、プレートテクトニクスの開始時期やその変遷について議論されてきた。本研究では、地球史を通じて比較的豊富にデータが存在するジルコンのHf同位体と希土類元素組成を用いて、テクトニクスの変遷を推定する。ただし、砕屑性ジルコンはたとえ同じ岩石に含まれていても互いに関連していたのかを決める方法がないため、晶出後の二次的影響を検証する確立された方法がない。そこで、本研究では主に各時代の花崗岩中のジルコンデータを用いる。
花崗岩中のジルコンは、比較的高いHf同位体値を持ち、特に太古代においては半数ほどのジルコンはコンドライト進化曲線よりも低いHf同位体初期値を持つものの、多くのジルコンは枯渇マントルとコンドライト進化曲線の間のHf同位体値をもち、枯渇マントルの進化曲線上の値を持つものも多く存在する。一方、原生代以降ではコンドライトの進化曲線以下の値を持つジルコンの割合が増し、枯渇マントル進化曲線上のものはとても少なくなる。さらに、20と3億年前には、非常に低いHf同位体初期値をもつジルコンも存在する。こうしたジルコンのHf同位体値のバリエーションは花崗岩マグマの形成や定置の際の古い地殻物質のリサイクルの影響が原生代以降大きくなり、特に超大陸形成時にとても大きくなったことを示唆する。また、太古代においても、30-32億年前にバーバートン地域で形成された花崗岩中のジルコンのHf同位体値は比較的低い値を持つ。
本研究では、重希土類元素の枯渇度を表す指標として、(Nd/Yb)/(Gd/Yb)比を導入した。太古代TTGの特徴とされる重希土類元素に枯渇した花崗岩中のジルコンは高い値をもつことが期待される。一般にスラブ溶融時のガーネット分別が重希土類元素の枯渇の原因とされるので、この値は高圧下(ガーネット存在領域)でのスラブ溶融の指標になると考えられる。希土類元素濃度が得られたジルコンデータはとても少ないものの、太古代の花崗岩中のジルコンはこの値が高く、一方原生代以降の花崗岩中のジルコンはこの比が系統的に低い特徴をもつ。このことは花崗岩の全岩化学組成から示された特徴と調和的で、太古代においては花崗岩形成時にガーネット分別が起きたことを示唆する(Martin, 1986)。さらに、太古代において、35〜32億年前のHf同位体初期値が低いジルコンには、この比が高いものが見られた。このことは、比較的古いプレートの沈み込みではガーネット安定領域で、比較的若いプレートの沈み込みでは角閃岩領域で、スラブ溶融が起きたことを示唆する。従来の研究では、太古代ではマントル温度が高いため、内部熱を効率的に放出するため海嶺の長さが現在よりも長くなり、それに伴い沈み込み帯も長くなり、結果として地球表面には多数の小さいプレートが存在し、一律に若いプレートが沈み込むと考えられた(Komiya, 2004)。しかし、本研究は太古代においても、年齢の異なるプレートが沈み込み、それによってスラブ溶融の深さが変化し、地球化学的特徴の異なる花崗岩が形成されていたことを示唆する。
Komiya et al., 1999. Jour. Geol. 107, 515-554; Komiya, 2004. Phys. Earth Planet. Inter. 146, 333-367; Komiya et al., 2015. Tectonophysics 662, 40-66; Korenaga, 2013. Ann. Rev. Earth Planet. Sci. 41, 117-151; Martin, 1986. Geology 14, 753-756.
これまで、地質学や岩石学を主とした物質学的研究(Komiya, 2004; Komiya et al., 1999, 2015)や地球熱史などに基づく数値モデリング手法(Korenaga, 2013)によって、プレートテクトニクスの開始時期やその変遷について議論されてきた。本研究では、地球史を通じて比較的豊富にデータが存在するジルコンのHf同位体と希土類元素組成を用いて、テクトニクスの変遷を推定する。ただし、砕屑性ジルコンはたとえ同じ岩石に含まれていても互いに関連していたのかを決める方法がないため、晶出後の二次的影響を検証する確立された方法がない。そこで、本研究では主に各時代の花崗岩中のジルコンデータを用いる。
花崗岩中のジルコンは、比較的高いHf同位体値を持ち、特に太古代においては半数ほどのジルコンはコンドライト進化曲線よりも低いHf同位体初期値を持つものの、多くのジルコンは枯渇マントルとコンドライト進化曲線の間のHf同位体値をもち、枯渇マントルの進化曲線上の値を持つものも多く存在する。一方、原生代以降ではコンドライトの進化曲線以下の値を持つジルコンの割合が増し、枯渇マントル進化曲線上のものはとても少なくなる。さらに、20と3億年前には、非常に低いHf同位体初期値をもつジルコンも存在する。こうしたジルコンのHf同位体値のバリエーションは花崗岩マグマの形成や定置の際の古い地殻物質のリサイクルの影響が原生代以降大きくなり、特に超大陸形成時にとても大きくなったことを示唆する。また、太古代においても、30-32億年前にバーバートン地域で形成された花崗岩中のジルコンのHf同位体値は比較的低い値を持つ。
本研究では、重希土類元素の枯渇度を表す指標として、(Nd/Yb)/(Gd/Yb)比を導入した。太古代TTGの特徴とされる重希土類元素に枯渇した花崗岩中のジルコンは高い値をもつことが期待される。一般にスラブ溶融時のガーネット分別が重希土類元素の枯渇の原因とされるので、この値は高圧下(ガーネット存在領域)でのスラブ溶融の指標になると考えられる。希土類元素濃度が得られたジルコンデータはとても少ないものの、太古代の花崗岩中のジルコンはこの値が高く、一方原生代以降の花崗岩中のジルコンはこの比が系統的に低い特徴をもつ。このことは花崗岩の全岩化学組成から示された特徴と調和的で、太古代においては花崗岩形成時にガーネット分別が起きたことを示唆する(Martin, 1986)。さらに、太古代において、35〜32億年前のHf同位体初期値が低いジルコンには、この比が高いものが見られた。このことは、比較的古いプレートの沈み込みではガーネット安定領域で、比較的若いプレートの沈み込みでは角閃岩領域で、スラブ溶融が起きたことを示唆する。従来の研究では、太古代ではマントル温度が高いため、内部熱を効率的に放出するため海嶺の長さが現在よりも長くなり、それに伴い沈み込み帯も長くなり、結果として地球表面には多数の小さいプレートが存在し、一律に若いプレートが沈み込むと考えられた(Komiya, 2004)。しかし、本研究は太古代においても、年齢の異なるプレートが沈み込み、それによってスラブ溶融の深さが変化し、地球化学的特徴の異なる花崗岩が形成されていたことを示唆する。
Komiya et al., 1999. Jour. Geol. 107, 515-554; Komiya, 2004. Phys. Earth Planet. Inter. 146, 333-367; Komiya et al., 2015. Tectonophysics 662, 40-66; Korenaga, 2013. Ann. Rev. Earth Planet. Sci. 41, 117-151; Martin, 1986. Geology 14, 753-756.
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