Presentation Information
[T6-O-7]Igneous rocks from Agulhas Plateau, SW Indian Ocean, drilled during IODP Expedition 392: Study of petrological characteristics and magma source
*Kouki MORI1, Yuji Ichiyama1, Osamu Ishizuka1, Jörg Geldmacher2, Peter Cameron Davidson2, Jia Liu3 (1. Chiba Univ., 2. GEOMAR, 3. Zhejiang Univ.)
Keywords:
IODP exp.392,Agulhas plateau,mantle plume,Large Igneous Provinces,Igneous intrusion
巨大火成岩区(LIPs)は,マントルプルームに由来する大量の苦鉄質マグマが短期間に噴出・貫入してできた火成岩体である[1].LIPsに産する苦鉄質岩の研究によって,マントル深部の岩石的・地球化学的性質の直接的な検討が期待される.アグラス海台をはじめとする南西インド洋に位置する巨大海台群は,ゴンドワナ大陸の分裂に関連して形成されたLIPsと考えられており,海台群のうちモザンビーク海嶺(MOZR)とアストリッド海嶺は~125-130 Maに先行して形成され,アグラス海台およびNEジョージア海台(NEGR),モード海台(MR)は~80-100Maに形成された[2].これらの南西インド洋に分布する海台群の岩石学的研究は非常に乏しいため,国際深海科学掘削計画(IODP)第392次航海では,アグラス海台からの基盤岩の掘削が試みられた。この航海では,3つのサイトから基盤岩が回収され,U1579DとU1580Aサイトでは,堆積岩中にそれぞれ2層と6層の岩床が,U1582A・Bサイトでは,枕状溶岩が採取された.本研究では,アグラス海台の基盤岩の全岩主要・微量元素組成および鉱物組成データから形成したマグマの性質を明らかにし,南西インド洋巨大海台群との地球化学的関係性とマグマ源の相違について考察する.
採取された岩床を構成する苦鉄質岩の組織は,堆積岩との境界部で斑状の玄武岩質,内部に向けてドレライト質~斑レイ岩質へと遷移する.玄武岩では,斑晶としてかんらん石(変質),斜長石,単斜輝石がみられ,石基は斜長石,単斜輝石,Fe-Ti酸化物および変質したガラスからなる填間状組織を呈する.岩床内部のドレライトと斑レイ岩は,完晶質填間状組織もしくはオフィティック~サブオフィティック組織を呈し,粗粒なかんらん石(変質),斜長石,単斜輝石に加えて,副成分鉱物としてアパタイトとFe-Ti酸化物が含まれる。かんらん石および斜長石中には,クロムスピネルが包有される.また,U1580Aの最下部の最も厚い岩床(厚さ>38 m)の内部には,融食した斜長石や粒間に石英が含まれ,角閃石および黒雲母の含水鉱物も含まれる。また,斜長石よりも単斜輝石が先に晶出した組織がみられる.これらのことは,この岩床を形成した苦鉄質マグマが水を含有していた可能性を示唆する.クロムスピネルの化学組成は,MORB中のものに比べてFe3+に富み,高い酸素分圧のマグマから結晶化したことを意味する.U1582A,Bサイトの枕状溶岩は,新鮮なガラス質な急冷周縁相を持ち,ガラス質基質にかんらん石(一部変質),,斜長石,単斜輝石が含まれる.
全岩組成では,採取された試料はすべてソレアイト質系列をなし,U1579DとU1582A・Bサイトは比較的均質な組成を示す.その一方で,U1580Aサイト全体では,TiO2,FeO,Na2O,K2OおよびP2O5量が上位に向かって増加し,CaOは低下する傾向を示す.特にU1580Aの最も厚い岩床では,化学組成の変動幅が大きく,岩床内部での結晶分別・集積の影響を反映していると考えられる.不適合元素比(Nb/Y,Zr/Y)も,U1579DとU1582A・Bサイトは均質であるが,U1580Aは不均質で,下位から上位の岩床に向かって増加する傾向を示し,岩床を形成した親マグマが異なることが示唆される.U1579DおよびU1580Aは,MORBよりも不適合元素比の高いエンリッチした組成を示し,その多くがMOZRと同じ値を示す一方で,U1582A・Bの試料は,前者2つのサイトよりもかなり枯渇した組成で,マントルの高い部分溶融程度で形成されたマグマに由来すると考えられる.アグラス海台と同時に形成されたNEGRとMRは,同海域のOIBと類似したよりエンリッチした組成を示し,アグラス海台やMOZRとは異なる[3][4].アグラス海台および南西インド洋海台群の岩石は時空間的に不均質な組成を示し,その形成には異なる複数の親マグマが関わったことが示唆される.また,アグラス海台から採取された試料は,マグマ源に水が含まれていた可能性を示しており,これらの海台群のマグマ源はアフリカプレート下のマントル最深部にある水を含んだ巨大低速度領域(LLSVP)に由来する可能性が考えられる.
[1]Coffin and Eldholm (1994) Rev.Geophys., 32, 1-36[2]Parsiegla et al,(2008)Geophys. J. Int. 174, 336-350[3]Schandl et al,(1990)Proc. ODP, Sci. Results, 113:5-11[4]Mueller et al,(1992)Geo-Marine Letters, 12:214-222
採取された岩床を構成する苦鉄質岩の組織は,堆積岩との境界部で斑状の玄武岩質,内部に向けてドレライト質~斑レイ岩質へと遷移する.玄武岩では,斑晶としてかんらん石(変質),斜長石,単斜輝石がみられ,石基は斜長石,単斜輝石,Fe-Ti酸化物および変質したガラスからなる填間状組織を呈する.岩床内部のドレライトと斑レイ岩は,完晶質填間状組織もしくはオフィティック~サブオフィティック組織を呈し,粗粒なかんらん石(変質),斜長石,単斜輝石に加えて,副成分鉱物としてアパタイトとFe-Ti酸化物が含まれる。かんらん石および斜長石中には,クロムスピネルが包有される.また,U1580Aの最下部の最も厚い岩床(厚さ>38 m)の内部には,融食した斜長石や粒間に石英が含まれ,角閃石および黒雲母の含水鉱物も含まれる。また,斜長石よりも単斜輝石が先に晶出した組織がみられる.これらのことは,この岩床を形成した苦鉄質マグマが水を含有していた可能性を示唆する.クロムスピネルの化学組成は,MORB中のものに比べてFe3+に富み,高い酸素分圧のマグマから結晶化したことを意味する.U1582A,Bサイトの枕状溶岩は,新鮮なガラス質な急冷周縁相を持ち,ガラス質基質にかんらん石(一部変質),,斜長石,単斜輝石が含まれる.
全岩組成では,採取された試料はすべてソレアイト質系列をなし,U1579DとU1582A・Bサイトは比較的均質な組成を示す.その一方で,U1580Aサイト全体では,TiO2,FeO,Na2O,K2OおよびP2O5量が上位に向かって増加し,CaOは低下する傾向を示す.特にU1580Aの最も厚い岩床では,化学組成の変動幅が大きく,岩床内部での結晶分別・集積の影響を反映していると考えられる.不適合元素比(Nb/Y,Zr/Y)も,U1579DとU1582A・Bサイトは均質であるが,U1580Aは不均質で,下位から上位の岩床に向かって増加する傾向を示し,岩床を形成した親マグマが異なることが示唆される.U1579DおよびU1580Aは,MORBよりも不適合元素比の高いエンリッチした組成を示し,その多くがMOZRと同じ値を示す一方で,U1582A・Bの試料は,前者2つのサイトよりもかなり枯渇した組成で,マントルの高い部分溶融程度で形成されたマグマに由来すると考えられる.アグラス海台と同時に形成されたNEGRとMRは,同海域のOIBと類似したよりエンリッチした組成を示し,アグラス海台やMOZRとは異なる[3][4].アグラス海台および南西インド洋海台群の岩石は時空間的に不均質な組成を示し,その形成には異なる複数の親マグマが関わったことが示唆される.また,アグラス海台から採取された試料は,マグマ源に水が含まれていた可能性を示しており,これらの海台群のマグマ源はアフリカプレート下のマントル最深部にある水を含んだ巨大低速度領域(LLSVP)に由来する可能性が考えられる.
[1]Coffin and Eldholm (1994) Rev.Geophys., 32, 1-36[2]Parsiegla et al,(2008)Geophys. J. Int. 174, 336-350[3]Schandl et al,(1990)Proc. ODP, Sci. Results, 113:5-11[4]Mueller et al,(1992)Geo-Marine Letters, 12:214-222
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