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[T6-O-8]Growth process and cooling history of granite intrusion constrained by field observations: the example of the Kinpusan pluton

*Ken YAMAOKA1, Daichi Murakami3, Hiroshi Mori3, Tokiyuki Morohoshi2 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 2. The University of Tokyo, 3. Shinshu University)
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Keywords:

pluton,Miocence,magma reservoir,thermal structure,thermal modeling

深成岩は火山下のマグマ供給系を理解する上で有用な情報源となる地質記録である。深成岩体は一般により少量のマグマユニットが漸増的に付加することで進行し、そのマグマユニットの形状と貫入時間間隔は岩体内部の熱構造とその経時変化に強い影響を与えると考えられる。そのため、深成岩形成時の定置や冷却の履歴は噴火可能性を議論する上では特に重要な情報といえるが、それらが天然で詳細に明らかになった例は極めて限られている。

関東山地南西部の金峰山花崗岩体は、主にマグマ性包有岩の有無に特徴づけられる岩相不均質性に基づいて、シル状マグマの下方付加によって成長するモデルが提案されている(高橋ほか,2021)。このことと岩体の三次元形状がよく制約されていることも併せると、金峰山花崗岩体は熱モデル研究(例えば、Annen et al., 2009)とのよい比較対象になる可能性が高い。

金峰山花崗岩体を網羅的に観察した結果、約20-200 mの厚さでマグマ性包有岩を含む層が約10層見出されるとともに、包有岩を含まない層との境界部において花崗岩母岩に明瞭な組織変化は認められないことを確認した。ただし、一部の境界部では明らかに粒径の異なる花崗岩同士が明瞭な低角度の境界を挟んで接しており、まれに金峰山花崗岩以外の貫入岩の分布とは関係なく黒雲母のデカッセイト組織が認められた。これらの観察は、金峰山岩体がマグマ性包有岩を含む花崗岩マグマと含まないマグマのシート状の繰り返し貫入により形成され、シルの貫入時間間隔はほとんどの場合シルの冷却時間よりも短く、まれにシルの冷却が完了してから次のシルが貫入したことを示す。一方、花崗岩の示す大局的な組織の変化はシル状マグマの貫入境界と解釈される低角度の境界とは斜交した関係にあり、岩体の中央下部ほど粗い粒径を示すとともに、アプライトおよびミアロリティック空洞がそのような粗い粒径の花崗岩と共に観察される。ミアロリティック空洞を形成する揮発性物質はマグマがマッシュ状態にある際に活発に分離・濃集・輸送が進行することが室内実験や理論モデルから予想されている(Parmigiani et al., 2017)。このことから、貫入したシルは岩体の中央下部でのみマッシュ状態で接することができ、岩体の天井と壁面からの冷却が効果的であったことが示唆される。金峰山花崗岩体に合致するパラメータセットで揮発性物質(H2O)の離溶と移動を加味した熱モデリング(Annen & Burgisser, 2021)を実施した結果、野外で観察されるミアロリティック空洞の分布に類似した揮発性物質の濃集パターンをシルの冷却時間に対比されるマグマフラックスで再現することができた。

このように金峰山花崗岩では適切な境界条件を与えて熱モデル計算を行なうことで岩体内部の熱構造の時間発展をある程度高い信頼性で予想できる可能性が高く、今後高精度の年代決定あるいは接触変成帯の熱構造決定などを組み合わせることによりマグマフラックス履歴や岩石組織の時間発展を評価できるようになることが期待される。

【引用文献】Annen et al. (2009) doi:10.1016/j.epsl.2009.05.006, Annen & Burgisser (2021) doi:10.1016/j.lithos.2020.105799, Parmigiani et al. (2017) doi:10.1002/2017GC006912, 高橋ほか(2021), doi:10.15006/chs20201056005

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