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[T6-O-9]Growth processes and the implications for the isolated small-scale pluton that member of the Cretaceous Northern Kyushu batholith

*Keisuke ESHIMA1, Masaaki OWADA1 (1. Yamaguchi University, Graduate school of Sciences and Technology for Innovation)
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Keywords:

Cretaceous Northern Kyushu Batholith,Pluton,Growth process,Crustal maturation process

火成岩の形成・成長過程やマグマの流動様式を理解することは,岩石学,火山学および経済地質学において極めて重要である。近年,火山学や経済地質学の分野では,マグマフローパターンやシート状貫入岩体の3次元(3D)的な解析が盛んに行われ,火山体におけるマグマの供給源の特定やマグマ活動に関連する白金族元素を含む鉱床(PGE)の形成過程など重要な発見につながっている(例えば, Magee et al, 2019, J. Struct. Geol. 125, 148–154; Martin et al, 2019, Front. Earth Sci. 7, 1–23; Stephens et al, 2021, Volcanica 4, 203–225).また,深成岩の分野では,空間問題の理解に重要な深成岩体の定置過程の解析において,シート状貫入やシルの概念が浸透してきた.火山岩の分野とは対照的に深成岩体の定置にはマグマ固結前に起こる深成作用(結晶分化作用,同化作用および混合作用)が重要な役割を果たす。さらに,大規模な深成岩体(バソリス)は、小規模深成岩体の集合・合体によって形成されることが広く認められている(Annen, 2011, Tectonophysics 500, 3-10)。つまり,小規模深成岩体の定置・成長過程を徹底的に解析することは,バソリス形成や様々なテクトニックセッティングに対応した地殻成熟過程を理解する上で極めて重要である。そこで本発表では,白亜紀北部九州バソリスを構成する小規模深成岩体である牛斬山花崗閃緑岩体の詳細な定置および成長過程を再構築し,大陸地殻の成熟過程について議論する. 対象岩体の牛斬山花崗閃緑岩体が分布する北部九州花崗岩バソリスは17または19個の小規模岩体で構成される.このバソリスの中で牛斬山岩体は他の花崗岩類と接しておらず独立した小規模岩体であるという特徴を持つ.この特徴は単一のマグマ溜まりとして岩体の成長過程を考える上で大きなアドバンテージとなる.そして,牛斬山周辺の地質は,石灰岩・変成岩とそれらを貫く牛斬山花崗閃緑岩及び小規模な岩脈から構成され,牛斬山花崗閃緑岩は,牛斬山山頂部から東西に延びる細粒相を境に北部岩体と南部岩体に区分される.南部岩体は北部岩体とは異なり,母岩の捕獲岩,岩脈類の貫入および火成起源の緑簾石の存在が確認できる.一方で北部岩体は一部斑状を呈する花崗岩が存在する.また,牛斬山岩体全体では岩体の外形に沿うようなホルンブレンドと斜長石の定向配列によるMagmatic foliationと付随するドーム型の形状を示すMagmatic lineationが発達する.一般にどちらも弱い構造であるが南部岩体と細粒相では多く確認できる.モード組成と全岩化学組成データは細粒相を境界に南北に2つの累帯組成変化を示し,この平面変化は岩体の面構造の形態と調和的である.さらに,南北両岩体の活動年代はジルコンU-Pb年代測定から南部岩体112 ± 0.8 Ma,北部岩体110.8 ± 0.6 Maの年代値が得られ,活動時期の少し異なる2つのマグマの上昇が考えられる.そして,南部岩体の母岩を捕獲岩として含む産状,北部岩体より肥沃な同位体組成および古いジルコンU-Pb年代値から,南部岩体マグマが先に母岩を捕獲または同化しながら上昇し,一度安定し再び上昇するというプロセスが編まれる.一方で,北部岩体は南部岩体と同じ火道(通路)を使用することで,Vent cleaning(Harris et al., 1999, J. Petrol. 40, 1377–1397)が作用し,母岩との反応が抑えられたマグマとして上昇・定置したと考えられる.北部岩体には斑状組織を呈する岩石も産することから上昇速度も速かったと予想できる.また,牛斬山花崗閃緑岩体は変成岩とその上部の石灰岩との低角度境界部に貫入しており,牛斬山山頂部では変成岩のルーフが確認できる.このことはアナログ実験で検証された岩体(シル)の形成過程と類似する.加えて,両岩体に発達する面構造はマグマが供給口から半円状のローブとして流れ,塁重したものと解釈できる(Eshima and Owada, 2023, Lithos 454–455, 107237).牛斬山岩体の活動年代は白亜紀北部九州バソリス火成活動の初期段階に相当する.牛斬山岩体マグマは少なくとも2回のパルスで上昇,低角度剛性境界を利用して地殻浅部に定置し,北部九州バソリスの先駆的マグマ活動として小規模なラコリスを形成する.白亜紀の西南日本と朝鮮半島南部は,スラブのロールバックにより伸長環境にあったと考えられており,本研究の結果は引張応力場での複雑なバソリス形成過程と地殻進化について新たな知見を与えるものである.

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