Presentation Information
[T12-O-1][Invited] Surface phenomena and hazards from explosive eruptions in the sea –a review based on comparisons of Japanese and global case studies–
*Fukashi Maeno1 (1. Earthquake Research Institute, The University of Tokyo)
【ハイライト講演】本講演では,浅海域での爆発的噴火に伴う現象やハザードについて,2021年福徳岡ノ場および2022年フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ噴火の事例を中心に,その特徴や解析結果をご紹介していただく予定である.これらの事例を通じて,マグマと海水の相互作用による表面現象と噴火水深との関係について検討が進められている.(ハイライト講演とは...)
Keywords:
Submarine volcano,Volcanic island,Phreatomagmatic explosion,Plume,Pumice raft
海域での爆発的噴火はプレート境界の活火山地域で広く発生し得る。近年の福徳岡ノ場(FOB)やフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ(HTHH)火山の噴火に見られるように、浅海の噴火ではしばしばマグマ水蒸気爆発、津波、軽石筏など多様な表面現象が発生し、噴火に伴うハザードも陸上火山とは異なったものになる。このような浅海の噴火に伴う表面現象の発生要因とハザードの理解は、島弧の海域火山の防災、減災において重要である。
浅海で火山噴火の爆発性が増大する主な要因は、マグマと海水との相互作用である。これまで多くの研究があるように、マグマ上昇および噴火過程において破砕、細粒化したマグマは海水と接触することにより、海水が瞬時に気化・膨張し、マグマの熱が運動エネルギーに変換される。エネルギー変換効率は一般に、水深が浅いと高く、水深が深いとマグマの破砕と水の気化が抑制されるため低くなる傾向がある。しかし、水深と表面現象との関係など、多くの未解明な点が残されている。浅海での爆発的噴火とそれに起因するハザードの理解を進めるために取り組むべき問題として、(1)マグマは浅海環境で海水とどのように相互作用するのか?(2)このような条件下でのマグマ噴出率と噴煙高度との関係は?(3)爆発性、マグマ噴出率、噴火様式、噴火水深の関係は?(4)爆発に伴い発生する高エネルギーの重力流(火砕流密度流[PDC])はどのような条件で海面上に発生するのか?などが挙げられる。大規模な海底噴火の直接観測はまれであるため、上記の問題のほとんどについて議論の余地が残されている。地質時代あるいは歴史時代の大規模な浅海噴火やその影響の解明も重要だが、それらの理解を進めるためには、水深、爆発性、噴火規模などが明らかで、近代観測網により捉えられた噴火事例が重要な手がかりとなる。
このような観点から、本研究ではまず日本国内および世界における代表的な爆発的海底噴火、とくに2021年FOB噴火と2022年HTHH噴火の特徴を整理した。これらの噴火の分析は、爆発的海底噴火に伴う現象や噴火過程を理解し、ハザードの種類や影響を評価する上で有用である。さらに、既存の火山データベースや先行研究にもとづき、海底火山噴火に特化したグローバル・データベース(およそ120火山400事例)を構築し、海底噴火に関連する表面現象の一般的特徴の抽出を試みた。とくに、噴火水深と噴火検知方法の関係、噴火水深と爆発性の関係、噴火水深と海面上でのPDCの発生や流走距離との関係などに焦点を当てた。
2021年FOB噴火と2022年HTHH噴火の整理と比較は、マグマ水蒸気爆発、高高度の噴煙発生、津波、軽石筏など既知の現象の理解進展に貢献した。加えて、噴煙が海を貫き大きく成長し得ることや、噴出量や噴火強度が大きければ火口が拡大し深くなり、逆に噴出量や噴火強度が小さければ水深が浅くなり島が形成されることなど、海域噴火特有のプロセスを明確にした。噴火水深は、表面現象と密接に関係するが、大規模な爆発的噴火の際には水深が急激に深くなる場合があり、現象推移の理解において重要になる。
データベース解析からは、水深400 m以深の噴火では海面上に爆発的現象を生じる頻度が極端に下がり、その検知方法も水中音波、地震、軽石筏、変色水、潜航による直接観測にほぼ限定されることがわかった。海面上にPDCを伴う噴火の割合は、水深が浅い噴火ほど高いものの全体の10%未満であること、噴火規模(またはマグマ噴出率)と海面上に生じるPDCの最大流走距離との間には指数関数で示される関係があることなども明らかになった。噴火水深と表面現象や堆積物との関係をより明確にするためには、様々な事例を研究する必要があり、新たな事例を観察・観測する機会を逃さないことが大切である。浅海での噴火の遠隔観測方法として、インフラサウンド、地震および衛星によるモニタリングなどが挙げられるが、これらは噴火現象の迅速な把握に有用である。このような表面現象の監視・観測手法の活用は、将来の海域火山噴火の際に考慮されるべきである。
浅海で火山噴火の爆発性が増大する主な要因は、マグマと海水との相互作用である。これまで多くの研究があるように、マグマ上昇および噴火過程において破砕、細粒化したマグマは海水と接触することにより、海水が瞬時に気化・膨張し、マグマの熱が運動エネルギーに変換される。エネルギー変換効率は一般に、水深が浅いと高く、水深が深いとマグマの破砕と水の気化が抑制されるため低くなる傾向がある。しかし、水深と表面現象との関係など、多くの未解明な点が残されている。浅海での爆発的噴火とそれに起因するハザードの理解を進めるために取り組むべき問題として、(1)マグマは浅海環境で海水とどのように相互作用するのか?(2)このような条件下でのマグマ噴出率と噴煙高度との関係は?(3)爆発性、マグマ噴出率、噴火様式、噴火水深の関係は?(4)爆発に伴い発生する高エネルギーの重力流(火砕流密度流[PDC])はどのような条件で海面上に発生するのか?などが挙げられる。大規模な海底噴火の直接観測はまれであるため、上記の問題のほとんどについて議論の余地が残されている。地質時代あるいは歴史時代の大規模な浅海噴火やその影響の解明も重要だが、それらの理解を進めるためには、水深、爆発性、噴火規模などが明らかで、近代観測網により捉えられた噴火事例が重要な手がかりとなる。
このような観点から、本研究ではまず日本国内および世界における代表的な爆発的海底噴火、とくに2021年FOB噴火と2022年HTHH噴火の特徴を整理した。これらの噴火の分析は、爆発的海底噴火に伴う現象や噴火過程を理解し、ハザードの種類や影響を評価する上で有用である。さらに、既存の火山データベースや先行研究にもとづき、海底火山噴火に特化したグローバル・データベース(およそ120火山400事例)を構築し、海底噴火に関連する表面現象の一般的特徴の抽出を試みた。とくに、噴火水深と噴火検知方法の関係、噴火水深と爆発性の関係、噴火水深と海面上でのPDCの発生や流走距離との関係などに焦点を当てた。
2021年FOB噴火と2022年HTHH噴火の整理と比較は、マグマ水蒸気爆発、高高度の噴煙発生、津波、軽石筏など既知の現象の理解進展に貢献した。加えて、噴煙が海を貫き大きく成長し得ることや、噴出量や噴火強度が大きければ火口が拡大し深くなり、逆に噴出量や噴火強度が小さければ水深が浅くなり島が形成されることなど、海域噴火特有のプロセスを明確にした。噴火水深は、表面現象と密接に関係するが、大規模な爆発的噴火の際には水深が急激に深くなる場合があり、現象推移の理解において重要になる。
データベース解析からは、水深400 m以深の噴火では海面上に爆発的現象を生じる頻度が極端に下がり、その検知方法も水中音波、地震、軽石筏、変色水、潜航による直接観測にほぼ限定されることがわかった。海面上にPDCを伴う噴火の割合は、水深が浅い噴火ほど高いものの全体の10%未満であること、噴火規模(またはマグマ噴出率)と海面上に生じるPDCの最大流走距離との間には指数関数で示される関係があることなども明らかになった。噴火水深と表面現象や堆積物との関係をより明確にするためには、様々な事例を研究する必要があり、新たな事例を観察・観測する機会を逃さないことが大切である。浅海での噴火の遠隔観測方法として、インフラサウンド、地震および衛星によるモニタリングなどが挙げられるが、これらは噴火現象の迅速な把握に有用である。このような表面現象の監視・観測手法の活用は、将来の海域火山噴火の際に考慮されるべきである。
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