Presentation Information
[T15-O-11]Submarine landslide (s) that occurred at around 3.2 Ma recorded in the Pliocene forearc basin-fill in the northern part of the Miura Peninsula.
*Atsushi NOZAKI1, Masayuki UTSUNOMIYA2 (1. Hiratsuka City Museum, 2. Geological Survey of Japan, AIST)
Keywords:
Forearc basin fill,Submarine landslide,Pliocene,Calcareous nannofossil
三浦半島北部には後期中新世から鮮新世の前弧海盆堆積物である逗子層とその上位の池子層が露出する.Utsunomiya et al. (2023) は,逗子層と池子層との間にレンズ状に挟在する神武寺部層(海底地すべり堆積物)が約3.2 Maに形成されたこと,これによって少なくとも約1.3 M.y.に及ぶ地層が削剥されたこと,同時期に生じた浸食面と海底地すべり堆積物が房総半島まで連続していることを明らかにし,このような同時多発的に発生した海底地すべりは隆起帯の成長によって前弧海盆が東西に分化する過程で生じた可能性を示唆した.本研究では,神武寺部層分布域よりも西にあたる釈迦堂切通(鎌倉市大町)に露出する逗子層と池子層の境界付近で,鎌倉市が掘削した2本のボーリングコアと露頭の観察を行って,岩相層序と石灰質ナノ化石層序を検討した.
調査地域には主に泥岩からなる逗子層と,その上位に重なり主に凝灰質泥質砂岩層からなる池子層が露出する.ボーリングコアBrA-1(全長21.0 m,鉛直掘削)は深度19.1~21.0 mが逗子層,深度0.3~19.1 mが池子層からなり,コアBrA-2(全長27.0 m,鉛直掘削)は,深度0.5~27.0 mが池子層からなる.露頭において逗子層と池子層は北に5~3度傾斜する.両層の境界面は層理面にほぼ平行だが,一部で境界面が層理面に斜交していることから,下位の逗子層が浸食されていることが伺えた.境界面直下の逗子層では,挟在する砂岩層やテフラ層が波打つように変形したり側方にせん滅する様子がみられた.
池子層には,軽石やスコリアを主体とする層厚50 cm以下のテフラ層が多く挟在し,そのうち12枚が露頭と2本のコア間で対比された.またテフラ層のうちコアBrA-1の6.5 mとBrA-2の12.6 mで確認された白色粗粒火山灰層を敷くスコリア質中粒砂岩層は,三浦半島の池子層中の鍵層テフラであるIkT20(Utsunomiya et al., 2017)に対比されるほか,3枚のテフラ層がUtsunomiya et al. (2017; 2023)の鍵層に対比される可能性がある.
コアBr A-1から採取した計16試料について,石灰質ナノ化石層序を検討した結果,逗子層の2層準,池子層の5層準からナノ化石がそれぞれ確認された.このうち,終産出がOkada and Bukry (1980) のナノ化石帯CN11の上限(3.82 Ma:Raffi et al., 2020)を規定するReticulofenestra pseudoumbilicusが逗子層の2層準と池子層の1層準から産出した.CN12a亜帯下部に終産出層準(3.61 Ma:Raffi et al., 2020)をもつSphenolithus spp. も逗子層の2層準から産出することを踏まえると,本コアの逗子層最上部はCN10–11帯(5.53~3.82 Ma: Raffi et al., 2020)に相当すると思われる.また終産出がCN12a亜帯上限(2.76 Ma: Raffi et al., 2020)を規定するDiscoaster tamalis が池子層の5層準から産出した.Sphenolithus spp. が池子層から産出しない点と,池子層の1層準のみR. pseudoumbilicusが産出するが,本種はこれより下位の池子層からは産出しておらず不連続にこの層準にだけ出てくることから,再堆積の可能性があることを考慮すると,池子層はCN12a亜帯でかつSphenolithus spp. 終産出層準より上位(3.61~2.76 Ma: Raffi et al., 2020)に相当すると思われる.このことは逗子市池子地域に露出する池子層最下部の年代層序と調和的である.
以上のことから,調査地域の逗子層と池子層の間には,少なくとも3.82~3.61 Ma分の年代ギャップが存在し,池子層の下底には浸食面が存在することが示唆される.池子層の下底は,コアBrA-1において鍵層IkT20の14 m下位にあるが,調査地域から約5 ㎞東方で神武寺部層(海底地すべり堆積物)と池子層の境界はIkT20の約12 m下位とほぼ同じ層位に存在する(Utsunomiya et al., 2023)ことから,調査地域にみられる池子層下底の浸食面も,約3.2 Maに三浦・房総両半島にかけて同時多発的に生じた海底地すべりに伴い形成された可能性がある.
引用文献
Okada and Bukry, 1980, Mar. Micropaleontol. 5, 321-325.; Raffi et al., 2006. Quat. Sci. Rev. 25, 3113-3137.; Raffi et al., 2020, In: Geologic time scale 2020, p 1141–1215, Elsevier.; Utsunomiya et al., 2017, Quat Int, 456, 125–137.; Utsunomiya et al., 2023, PEPS, 10: 25.
調査地域には主に泥岩からなる逗子層と,その上位に重なり主に凝灰質泥質砂岩層からなる池子層が露出する.ボーリングコアBrA-1(全長21.0 m,鉛直掘削)は深度19.1~21.0 mが逗子層,深度0.3~19.1 mが池子層からなり,コアBrA-2(全長27.0 m,鉛直掘削)は,深度0.5~27.0 mが池子層からなる.露頭において逗子層と池子層は北に5~3度傾斜する.両層の境界面は層理面にほぼ平行だが,一部で境界面が層理面に斜交していることから,下位の逗子層が浸食されていることが伺えた.境界面直下の逗子層では,挟在する砂岩層やテフラ層が波打つように変形したり側方にせん滅する様子がみられた.
池子層には,軽石やスコリアを主体とする層厚50 cm以下のテフラ層が多く挟在し,そのうち12枚が露頭と2本のコア間で対比された.またテフラ層のうちコアBrA-1の6.5 mとBrA-2の12.6 mで確認された白色粗粒火山灰層を敷くスコリア質中粒砂岩層は,三浦半島の池子層中の鍵層テフラであるIkT20(Utsunomiya et al., 2017)に対比されるほか,3枚のテフラ層がUtsunomiya et al. (2017; 2023)の鍵層に対比される可能性がある.
コアBr A-1から採取した計16試料について,石灰質ナノ化石層序を検討した結果,逗子層の2層準,池子層の5層準からナノ化石がそれぞれ確認された.このうち,終産出がOkada and Bukry (1980) のナノ化石帯CN11の上限(3.82 Ma:Raffi et al., 2020)を規定するReticulofenestra pseudoumbilicusが逗子層の2層準と池子層の1層準から産出した.CN12a亜帯下部に終産出層準(3.61 Ma:Raffi et al., 2020)をもつSphenolithus spp. も逗子層の2層準から産出することを踏まえると,本コアの逗子層最上部はCN10–11帯(5.53~3.82 Ma: Raffi et al., 2020)に相当すると思われる.また終産出がCN12a亜帯上限(2.76 Ma: Raffi et al., 2020)を規定するDiscoaster tamalis が池子層の5層準から産出した.Sphenolithus spp. が池子層から産出しない点と,池子層の1層準のみR. pseudoumbilicusが産出するが,本種はこれより下位の池子層からは産出しておらず不連続にこの層準にだけ出てくることから,再堆積の可能性があることを考慮すると,池子層はCN12a亜帯でかつSphenolithus spp. 終産出層準より上位(3.61~2.76 Ma: Raffi et al., 2020)に相当すると思われる.このことは逗子市池子地域に露出する池子層最下部の年代層序と調和的である.
以上のことから,調査地域の逗子層と池子層の間には,少なくとも3.82~3.61 Ma分の年代ギャップが存在し,池子層の下底には浸食面が存在することが示唆される.池子層の下底は,コアBrA-1において鍵層IkT20の14 m下位にあるが,調査地域から約5 ㎞東方で神武寺部層(海底地すべり堆積物)と池子層の境界はIkT20の約12 m下位とほぼ同じ層位に存在する(Utsunomiya et al., 2023)ことから,調査地域にみられる池子層下底の浸食面も,約3.2 Maに三浦・房総両半島にかけて同時多発的に生じた海底地すべりに伴い形成された可能性がある.
引用文献
Okada and Bukry, 1980, Mar. Micropaleontol. 5, 321-325.; Raffi et al., 2006. Quat. Sci. Rev. 25, 3113-3137.; Raffi et al., 2020, In: Geologic time scale 2020, p 1141–1215, Elsevier.; Utsunomiya et al., 2017, Quat Int, 456, 125–137.; Utsunomiya et al., 2023, PEPS, 10: 25.
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