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[T15-O-18]Paleo-vegetation at the interface between shallow-marine and fluvial environments during the Miocene Climatic Optimum in Central Japan

*Chiho MOCHIZUKI1, Atsushi YABE2, Kazuo TERADA3, Ryo TATEISHI4, Shin-ichi Sano4 (1. oyo corportion, 2. National Museum of Nature and Science, 3. Fukui Prefectural Dinosaur Museum, 4. University of Toyama)
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Keywords:

Miocene,plant macrofossils,MCO,Kurosedani Formation

前期中新世末〜中期中新世初頭は中新世最温暖期(Miocene Climatic Optimum: MCO)と呼ばれ,汎世界的に著しい温暖化が進んだ時代である.MCOには,それまでの生物相から現代型生物相への変化が生じており,MCOにおける地質・生物イベントの研究は,将来の気候変動とその生物相への影響を予測する上でも重要である.日本では,各地の前期中新世末~中期中新世初頭の浅海成層からマングローブ周辺の干潟に生息する熱帯系貝類やマングローブの花粉化石が報告されている.一方,M COの生物相を議論する上で陸上植生の情報は重要だが,日本においては,MCO期の大型植物化石が少ないことや,日本海の拡大期であるために,陸域の情報を持つ連続的な地層がほとんど存在しない等の理由から未だ詳細が明らかでない.
 富山県に分布する下部中新統黒瀬谷層は,MCO初期の地層で,熱帯系貝類化石を多産することでよく知られている.特に神通川本流沿いに分布する同層下部では,マングローブの花粉化石(山野井・津田,1986)や,熱帯・亜熱帯気候を示唆する果実化石(三木・坂本,1961),当時の日本の代表的な大型植物化石群集(台島型植物群)の典型的要素の葉化石(Matsuo, 1965)が報告されるなど,多様な植物化石の記録を有する点で注目される.本地域南東部付近には厚い礫岩層が堆積し,かつ,かつて炭鉱が存在していたことから,陸成層の存在が示唆され,MCO当時の植生を解明するために最適な場所である.しかし,植物化石の正確な産地や層準,堆積環境などは不明のままであった.本研究では,MCO初期の海陸境界付近の植生変化の解明を目的に,神通川本流沿いに分布する黒瀬谷層の堆積相解析を行うとともに,大型植物化石の検討を行った.
 堆積相解析の結果,本層は,下位より潮汐作用を受ける河川(堆積組相A),湾頭デルタ(堆積組相Ca),潮汐流路(堆積組相B),湾頭デルタ(堆積組相Cb)と堆積環境が変化し,潮汐卓越型エスチュアリーで形成されたと推定される.また,堆積組相Caの潮上帯の干潟堆積物や堆積組相Bの潮汐砂州堆積物中には原地性の「根系」と思われる化石が複数存在し,その一部に潮間帯を示唆するフナクイムシの生痕化石を確認した.従って,これらの「根系」と思われる化石は,汽水域の樹林であるマングローブ林の存在を示す可能性があり,このことは本地域からのマングローブの花粉化石の報告とも整合的である.さらに組相Aの氾濫原堆積物中にLiquidambar hisauchiiの,組相Cbの氾濫原堆積物中からQuercus miyagiensisの,珪化した「立木」化石を発見したが,これらは明らかな陸上環境の存在を示す.また,他の層準からはComptonia naumanni,クスノキ科,Melia sp.,Choerospondias cf. axillarisPinus mikiiの産出を確認した.先に述べたマングローブ林の存在と考え合わせると,本地域には,海陸境界付近の地質・化石記録が残されていることになる.
 以上のことから,MCO初期にあたる黒瀬谷層堆積時には,本地域周辺には潮汐卓越型エスチュアリーが広がり,植生としては、潮上帯の干潟や潮汐砂州にマングローブ林が存在し,潮汐作用を受ける河川の氾濫原にL. hisauchii が,その後,湾頭デルタの氾濫原にQ. miyagiensis が生育し,その周辺や後背地には,多様な植物が存在していたと推測される.

<参考文献>
三木茂・坂本亨,1961.槇山次郎教授記念論文集, 259–264.
山野井徹・津田禾粒, 1986,国立科博専報, (19), 55–68.
Matsuo, H., 1965, 金沢大学教養部論集自然科学篇, (2), 41–77.

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