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[T13-P-10]Depositional environment of “algal limestone” in Bihoku Group revealed from calcareous components

*Fumito SHIRAISHI1, Manane SHIMIZU1, Ryoichi NAKADA2 (1. Hiroshima University, 2. JAMSTEC)
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中新世には日本各地に広く海が侵入したことが知られており,それに伴って広島県では三次・庄原地域に備北層群が堆積した.備北層群は主に礫岩,砂岩,泥岩など珪砕屑性堆積岩を主体とするが,有孔虫や二枚貝類などの石灰質遺骸も多く含まれる.特に庄原市西城川河床の中原セクションでは,石灰質遺骸の濃集した“藻類石灰岩”が小規模に発達している(杉村ほか, 1990; 山本, 1999).しかしながら,そのような石灰質堆積物がなぜ形成されたのかについては,十分に理解されていない.そこで本研究は,中原セクション周辺において石灰質構成要素に着目した岩相記載を行い,石灰岩の形成に至った古環境要因を推定した.また,そのような石灰岩がいつ形成されたのかという情報も成因を考えるうえで重要であるため,本セクションから産出するカキ化石に対し,白石ほか (2005) の手法に基づいてSr同位体層序の適用を試みた.
 山本 (1999) は西城川河床に露出する備北層群を5つのセクションに分けて記載したが,中原セクションはその北西部に当たる.本研究では,中原セクションの西方約200 mから,隣接する甲代セクションの約50 mまでの約500 mを調査範囲とした.地層は調査範囲の中心付近で緩やかに向斜しており,向斜軸で最上位層が露出する.調査範囲の西側には最下部層の礫岩が露出しており,しばしば東向きの古流向を示すインブリケーションが認められ,また平板型・トラフ型斜交層理を伴う砂岩層もしばしば狭在することから,網状河川堆積物であると考えられる.XRD分析の結果,これらの砂岩層には石英・長石に加えて方解石も約7–33%含まれていたが,薄片観察の結果,方解石は砂岩のセメントとして存在しており,石灰質遺骸は含まれていなかった.この礫岩の東側には,カキ殻や植物片を多く含む上位の砂岩層が露出しており,しばしばウニ棘を含むことから海水環境で堆積したと考えられる.この砂岩層にも方解石が約7–50%含まれており,それは石灰質遺骸やセメントとして存在していた.向斜軸付近では,この砂岩層の上位に泥岩層が見られ,原地性と思われる大型のカキが含まれることから,これも海水環境で堆積したと考えられる.この泥岩層には方解石が約0–11%含まれており,それは微小な石灰質遺骸や石灰泥として存在していた.向斜軸の東側では下位の礫岩層が露出しており,それは南北走向の高角小断層を介して,さらに東側の“藻類石灰岩”と接していることから,断層によって東側がやや沈降しているものと考えられる.この“藻類石灰岩”は,西側でカキ殻や有孔虫を含む細粒砂岩を,東側で礫岩を覆っていた.石灰岩は方解石が約96%であり,それは主に紅藻類の石灰藻である無節サンゴモから構成されていたことから,海水環境を示している.石灰岩はグレインストーン~ラドストーンに分類され,サンゴモ骨格は異地性の特徴を示すことから,比較的高エネルギー環境で運搬・堆積したことが推定される.これらの結果と調査地周辺の地理的特徴をふまえると,中新世の中原セクションでは,海進によって網状河川から海へと環境が変化し,潮流によってサンゴモが破断・運搬されて堆積することで“藻類石灰岩”が形成したと考えられる.
 一方,Sr同位体層序に関しては,用いたカキ化石のFe・Mn濃度が高く,一部はドロマイト化も被っており,年代決定に適さないことが判明した.測定されたSr同位体比は,先行研究で推定された年代における海水の値よりもかなり低いことから,火成活動の影響を受けている可能性が考えられる.

引用文献
杉村昭弘・藤井厚志・橋本恭一・長井孝一・杦山哲男・木戸悟・岡本和夫 (1990) 瑞浪市化石博物館研究報告, 17, 51–59; 山本裕雄 (1999) 地球科学, 53, 202–216; 白石史人・早坂康隆・高橋嘉夫・谷水雅治・石川剛志・松岡淳・村山雅史・狩野彰宏 (2005) 地質学雑誌, 111, 610–623.

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