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[G-P-18]Model of active faults distributed in Niwatzuki, Sakegawa Village, Yamagata Prefecture, Japan

*Eiji Nakata1, Ryo Hayashizaki1, Kotaro Aiyama1, Akira Fukuchi2 (1. Central Research Institute of Electric Power Industry, 2. AF Consultant)
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Keywords:

Active faults,Kan-onji,Sakegawa

1.はじめに
断層の活動性調査を行う場合,上載層中でイベント層準と堆積年代を求めるか,最新活動面内の自形鉱物の生成速度,環境から鉱物晶出後の断層活動の有無を考察するか,断層面と鉱物脈や岩脈との関係を求めるかなどの方法が考えられる.しかしながら上載層や自形鉱物,脈などが無い場合,活動性の評価の難易度は格段大きくなる.電力事業者は上載層が無い場合にどのような方法で断層活動性の判断ができるかの研究を各社共同で実施している.今回は研究対象とした活断層露頭とトレンチ壁面の地質状況から考えられる活動モデルを紹介する.
2.調査地点
調査地域は山形県最上郡鮭川村で新庄駅の北西約10㎞に位置する(図1).この活断層を調査対象とした理由は断層の上下盤で基盤岩が確認できることである.調査は2022年から2023年に実施した.対象とした断層露頭は中田ほか(2024)で紹介した観音寺露頭である(図2).本露頭には南北走向の断層(日下断層;松浦,2003)が認められる.トレンチ調査は観音寺露頭から北に300mの中位段丘面上で実施した(図3).
3.地質概要
当地域の基盤は主に均質な粗粒~中粒の砂岩優勢層からなる鮮新統の鮭川層である.地層は大局的には緩く東に傾斜している.砂岩中にはハンモック状斜交葉理が発達している.観音寺露頭の南西約600mの露頭(高さ50 m、幅200 m)では鮭川層は東に20~30°で傾斜を増す.この露頭の下部では水平の鮭川層が認められることから,当地域には上盤側が西へ乗り上げる東傾斜の衝上断層が発達すると予想できる.観音寺露頭では鮭川層が中位段丘を構成する礫層に覆われており,礫層が東傾斜の層面すべり逆断層によって約2m変位している様子が認められる.
4.調査結果
地質観察によって得られた主な事実を以下に記す. 露頭では主断層の下盤側に厚さ1 m前後のシルト岩/砂岩互層が認められた.この互層にはみかけ逆断層の小断層が発達し,その断層面にシルト岩/砂岩互層が入り込んでいる.ただし,このみかけ逆断層の面は主断層に向かって変位量を減じ,主断層と接していない. 認められた断層は1つを除いてすべて東傾斜である.西傾斜の断層は変位量が10 cm以下の小断層で,断層面も不明瞭で連続しない. 砂岩同士が接する露頭下部では主断層面に層状粘土層が巾約1 cmで連続する. 露頭上部では主断層の変位によって礫層(下盤側)と鮭川層(上盤側)の砂岩が傾斜して接しており,主断層はこの境界の背後の上盤側の砂岩層中を通過する. トレンチでは砂岩同士の接する主断層に沿って礫層の礫が入り込んでいる. 下盤側には礫層の上位に斜交層理の発達した砂層が堆積しており,いくつかの断層面は少なくともこの砂層まで確認ができる. 最新の断層活動が表層の腐植土層に変位を与えているかは不明である.
5.断層の活動モデル
露頭とトレンチで中位段丘形成後に鉛直2 m変位した活断層が認められた.この2地点のリニアメントは異なっており,当該地点では逆断層が並走する活断層群が形成されていることを確認した.主断層下盤側で認められたみかけ逆断層は地層の傾斜を45°左回転させて水平に戻すことで正断層となる.この正断層はシルト岩/砂岩互層の入り込みなどから,鮭川層堆積途中の未固結に近い状態で 東側(脊梁山脈)が隆起したために生じた地すべりと推察する.当地域の表層で認められる断層がすべて東傾斜であることから鮭川層は東側から応力によって層理面に沿って西に乗り上げたと推察できる.主断層ガウジにおいて層状粘土層が認められること,礫層と砂岩の境界をなす変位を作る断層と,砂岩を切る主断層の2つの存在は主断層が中位段丘礫層が堆積後複数回活動したことを示している.また実験中ではあるものの上載層の厚さに対して2/100の断層変位量以上で変位は地表まで到達する.当断層が厚さ1 mの上載層の上面(腐植土層等)に変位をもたらすには腐植土層生成後に礫層上面を2 cm以上変位させる必要がある.しかしながら腐植土層を切る明瞭な逆断層面が認められないことと,当断層群の一回の鉛直変位量が1.5~0.5 mと予想できることから表層の腐植土層は現段階では断層活動の影響は受けていないと推察する.
【引用文献】
松浦, 2003, 山形県新庄盆地西部に分布するFlexural-slip断層とその活動時期. 活断層研究,23,29-36.
中田ほか,2024, 山形県鮭川村観音寺の活断層露頭. 130, 87-88.

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