Presentation Information
[T11-O-5]Geochemistry of REE-rich mud in the Penrhyn Basin, South Pacific Ocean
*Kentaro Nakamura1,2, Tampah Emmanuelle Marshel1, Kazutaka Yasukawa1, Junichiro Ohta1,2, Yasuhiro Kato1,2 (1. The University of Tokyo, 2. Chiba Institute of Technology)
Keywords:
rare-earth elements,REE-rich mud,bulk-rock geochemistry,Penrhyn Basin,South Pacific
2011年に太平洋海底の遠洋粘土に高濃度のレアアース (REE) が含まれているものが発見され、「レアアース泥」と名付けられた [1]。レアアース泥は、高いREE含有量(特に、産業上重要な重希土類元素)、膨大な資源量、容易な探査、酸浸出による抽出の容易さ、そして何より低い放射性元素含有量を特長としており、新たなレアアース資源として注目されている [2]。2012年には、レアアース泥は南鳥島周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)でも発見された [3]。南鳥島EEZのレアアース泥は、REE >5000 ppmの超高濃度レアアース泥層を挟在するという、他の海域には見られない特徴を示す [4]。この超高濃度レアアース泥層の成因を解明することができれば、開発有望海域の探査に大きく貢献すると期待される。
2023年には、南太平洋のペンリン海盆においても、日本のEEZ外で初めて超高濃度レアアース泥層の存在が発見された [5]。この南太平洋の超高濃度レアアース泥層について特徴を明らかにし、南鳥島EEZのそれと比較することができれば、超高濃度レアアース泥層の成因解明につながると期待される。そこで本研究では、ペンリン海盆の堆積物から得られた地球化学データを用いて、南太平洋における超高濃度レアアース泥層の化学的特徴と分布を理解するとともに、南鳥島EEZとの比較を行うことを目的とする。
研究には、1983年のGH83-3航海によってペンリン海盆から採取された16本のピストンコア試料を用いた [6][7]。これらのコアから394試料を分析のために採取し、ICP-MSを用いて44元素の分析を行った。全ての試料は、REE濃度が400 ppmを超えており、レアアース泥であることがわかった。さらに化学層序解析により、ペンリン海盆のレアアース泥は、異なる4つの層と3つのREEピークから成ることが明らかとなった。これらの層には、火山起源物質および熱水起源物質の影響を顕著に示す層が含まれた。また、同じく化学層序解析によって、最上位層を削剥によって欠いているエリアが存在することも明らかとなった。こうしたエリアにおいては、超高濃度レアアース泥層を含む高濃度レアアースピーク層が海底下の浅い深度に出現することから、開発に有望なエリアとなり得ることがわかった。
本研究の結果を南鳥島EEZにおいて観察されている化学層序 [8] と比較すると、両地域は上部の層で火山起源物質の影響が大きいことや、3つのレアアースピーク層を持つという類似性を示している一方で、ペンリン海盆の下部層では南鳥島EEZでは見られない熱水起源物質の影響が強く示されている。また両地域ともに、最上位層の削剥が高濃度レアアースピークの浅部での出現の原因となっていると考えられ、削剥現象が開発有望エリアの形成要因となっていることが示唆される。
[1] Kato, Y. et al., Nature Geoscience 4, 535-539 (2011).
[2] Nakamura et al., Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths 46,79-127 (2015).
[3] 加藤泰浩ほか,資源地質学会第62回年会講演会,O-11 (2012).
[4] Iijima et al., Geochemical Journal 50, 575-590 (2016).
[5] Marshelほか, 地質学会第130年学術大会, T7-O-3 (2023).
[6] Usui et al., Outline of the Cruise GH83-3 in the Penrhyn Basin, South Pacific (1994).
[7] Nishimura and Saito, Deep-sea sediments in the Penrhyn Basin, South Pacific (1994).
[8] Tanaka et al., Ore Geology Reviews 119, doi: 10.1016/j.oregeorev.2020.103392 (2020).
2023年には、南太平洋のペンリン海盆においても、日本のEEZ外で初めて超高濃度レアアース泥層の存在が発見された [5]。この南太平洋の超高濃度レアアース泥層について特徴を明らかにし、南鳥島EEZのそれと比較することができれば、超高濃度レアアース泥層の成因解明につながると期待される。そこで本研究では、ペンリン海盆の堆積物から得られた地球化学データを用いて、南太平洋における超高濃度レアアース泥層の化学的特徴と分布を理解するとともに、南鳥島EEZとの比較を行うことを目的とする。
研究には、1983年のGH83-3航海によってペンリン海盆から採取された16本のピストンコア試料を用いた [6][7]。これらのコアから394試料を分析のために採取し、ICP-MSを用いて44元素の分析を行った。全ての試料は、REE濃度が400 ppmを超えており、レアアース泥であることがわかった。さらに化学層序解析により、ペンリン海盆のレアアース泥は、異なる4つの層と3つのREEピークから成ることが明らかとなった。これらの層には、火山起源物質および熱水起源物質の影響を顕著に示す層が含まれた。また、同じく化学層序解析によって、最上位層を削剥によって欠いているエリアが存在することも明らかとなった。こうしたエリアにおいては、超高濃度レアアース泥層を含む高濃度レアアースピーク層が海底下の浅い深度に出現することから、開発に有望なエリアとなり得ることがわかった。
本研究の結果を南鳥島EEZにおいて観察されている化学層序 [8] と比較すると、両地域は上部の層で火山起源物質の影響が大きいことや、3つのレアアースピーク層を持つという類似性を示している一方で、ペンリン海盆の下部層では南鳥島EEZでは見られない熱水起源物質の影響が強く示されている。また両地域ともに、最上位層の削剥が高濃度レアアースピークの浅部での出現の原因となっていると考えられ、削剥現象が開発有望エリアの形成要因となっていることが示唆される。
[1] Kato, Y. et al., Nature Geoscience 4, 535-539 (2011).
[2] Nakamura et al., Handbook on the Physics and Chemistry of Rare Earths 46,79-127 (2015).
[3] 加藤泰浩ほか,資源地質学会第62回年会講演会,O-11 (2012).
[4] Iijima et al., Geochemical Journal 50, 575-590 (2016).
[5] Marshelほか, 地質学会第130年学術大会, T7-O-3 (2023).
[6] Usui et al., Outline of the Cruise GH83-3 in the Penrhyn Basin, South Pacific (1994).
[7] Nishimura and Saito, Deep-sea sediments in the Penrhyn Basin, South Pacific (1994).
[8] Tanaka et al., Ore Geology Reviews 119, doi: 10.1016/j.oregeorev.2020.103392 (2020).
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