Presentation Information

[G2-O-3]Paleomagnetic records from sediments suffered from reductive diagenesis

*Toshitsugu YAMAZAKI1, Jiaxi Li1 (1. AORI, The University of Tokyo)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

paleomagnetism,rock magnetism,reductive diagenesis,marine sediments

海底堆積物では有機物の分解に伴い、海底下の深度とともに還元的環境となる。まず間隙水中の溶存酸素が消費され、次に硝酸還元が起き、さらに還元が進んで鉄還元に至ると磁性鉱物の溶解が始まり、古地磁気記録が失われていくことになる。さらに硫酸還元の深度以深では、条件により強磁性の鉄硫化物であるグレガイトが生成し、二次的磁化を獲得する。これらのことから、鉄還元境界以深の堆積物は、古地磁気復元には使えないものとして研究対象外とされることが多かった。例えばIODPでは、船上での予察的古地磁気測定から磁性鉱物溶解が起きていると推定されたコアは、陸上での詳しい古地磁気研究の対象とされることは殆どなかった。しかし、より高解像度の記録を得られる堆積速度の大きな堆積物や、より古い時代に遡ることができる海底下深くに埋積された堆積物は還元続成作用を受けていることが多いため、還元続成を被った堆積物から古地磁気記録を復元しようとする努力は必要である。

海底堆積物に含まれる強磁性鉱物は、磁石化石(magnetofossil)と陸源磁性鉱物に大別でき、陸源磁性鉱物は風成塵として、あるいは海流により運搬されて供給される。陸源磁性鉱物の中には、斜長石などの珪酸塩鉱物に包有物として含まれる磁鉄鉱がある。これは還元環境になってもホストの珪酸塩鉱物に保護され溶解しないため、古地磁気記録の担い手になる可能性が近年指摘されるようになった(Chang et al., 2016)。

本研究で対象としたオントン・ジャワ海台から採取された堆積物コアでは、深さ5.7m以深ではmagnetofossilと珪酸塩に保護されていない陸源磁鉄鉱が失われているが、珪酸塩包有磁鉄鉱と赤鉄鉱が溶解を免れ、古地磁気方位・強度記録が保持されていることが明らかとなった。珪酸塩包有磁鉄鉱は、飽和残留磁化強度(SIRM)では溶解を免れた磁性鉱物の約55%を占めるが、その平均粒径と磁鉄鉱含有量から、外部磁場のトルクが流体力学的トルクより小さい傾向にあり、このコアでは自然残留磁化(NRM)にはあまり寄与していないと推定された。従って、SIRMでは約30%を占める赤鉄鉱がNRMには大きく寄与していると推定された。赤鉄鉱はその飽和磁化が磁鉄鉱に比べ極めて小さいことから従来は見過ごされることが多かった。

還元続成を被った海底堆積物でも古地磁気記録を保持できることが判明したことから、IODP等でこれまでに掘削され古地磁気研究に用いられることなく保管されているレガシーコアの活用が今後期待される。また、グレガイトの生成による二次磁化を被った還元環境堆積物では、房総半島堆積物等で成功を収めているハイブリッド消磁(e.g., Okada et al., 2017)が有効と考えられる。

引用文献
Chang, L. et al. (2016) JGR-Solid Earth, 121, 8415–8431, doi:10.1002/2016JB013109
Okada, M. et al. (2017) Earth Planets Space, 69:45, doi:10.1186/s40623-017-0627-1

Comment

To browse or post comments, you must log in.Log in