Presentation Information
[G2-O-5]Characteristics of flood sediments and depositional processes at submarine fan around the mouth of Fujikawa riv. in the Suruga Bay
*Yuka Yokoyama1, Izumi Sakamoto1, Nozomi Nakamura3, Soshi Shibao1, Mei Ikeda1, Satoshi Watanabe1, Satoshi Furota2, Asahiko Taira1 (1. Tokai Univ., 2. Geological Survey of Japan, AIST, 3. Kokusai Kogyo Co.,Ltd.)
Keywords:
Suruga Bay,turbidity current,flood sediment
駿河湾には,湾奥・西部から4つの一級河川(狩野川,富士川,安部川,大井川)が流入し,大雨や台風時に河口から砕屑物を含む濁水が流入する様子が,衛星写真から観察されている.これらの濁水が海洋表層のみならず,海底面を流下し海底堆積物に変化を与えていることは,実海域から確認されている.駿河湾奥部富士川沖では,台風前後に採取されたコア試料の比較から,台風の洪水流による堆積物が確認された(西田・池原,2016).また,台風後に富士川沖でROVによる海底観察から,海底表面には多くの緑色根付の植物片が確認され,洪水時に運搬されたと考えられた(中村ほか,2023).さらに,2018年台風24号,2022年台風15号時には,海底に設置したOBSが海底面上を約0.8 kmおよび約2.8 km南へ移動し,富士川を起源とする混濁流の影響と推察された(中村ほか,2023).そのため,富士川沖では大雨・長雨に伴って比較的簡単に洪水による混濁流が発生している可能性が考えられる.
東海大学海洋地質研究室では,2021年より駿河湾奥部富士川沖において,洪水起源混濁流の発生機構および堆積過程解明を目的に,海洋地質学的調査(海底地形,表層堆積物特徴,海底観察映像など)に取り組み,春(3月),梅雨前(4・5月),台風前(7・8月)および台風後(10~12月)の各季節において,定点による観測行っている.富士川沖では,河口を始点とし,駿河トラフ沿いを南北方向に観測点(水深約110~1500 m,河口から約1~15 km)を設定した.また,2023年度からはこれまでの調査・分析に加えて,堆積物の起源を把握するため,微化石観察,X線回折分析による鉱物組成およびバイオマーカー分析を試みた.
表層堆積物は,河口から約10 km(水深1350 m)まで砂質堆積物が分布し,その沖合では主に泥質堆積物が分布する.コア試料(平均長約10 cm)の岩相特徴から,大きく①河口から約10 km(水深300~1350 m),②河口から12~16 km(水深約1400~1500 m)の2つの範囲に区分された.①の範囲では,主に下位の平行ラミナを示す砂質堆積物と上位の泥質堆積物からなる.砂質堆積物の粒度は,河口側から沖合に向かって細粒(礫を含む中粒砂から細粒砂へ)になる傾向が見られた.通年通して,類似した岩相を示すが,砂層の粒度・層厚などに変化がみられる.②の範囲では,主に泥と細粒砂からなる砂泥互層が分布する.水深約1450 m以深では年間通して,あまり変化は見られないが,水深約1400 m地点では,季節による大きな岩相変化が認められた.したがって,河口から約12 km(水深約1400 m)までは,富士川起源の混濁流の影響を受けやすく,その沖合では比較的規模の大きな混濁流でないと影響を受けない可能性が示唆される.
混濁流による堆積物運搬を検討するため,珪藻およびバイオマーカー分析から堆積物の起源解明を試みた.まず,表層堆積物の珪藻分析の結果では,いずれの季節においても河口から約14 km(水深1450 m)まで淡水生種の分布が確認された.基本的には河口から離れるほど,その割合は減少する.これらの淡水生種が表層水中で運搬されこたのか,混濁流によって運搬されたのかについては,さらなる調査・研究が必要となる.
バイオマーカー分析では,岩相より①季節変化が大きかった河口から約6 km地点および,②あまり変化が認められなかった河口から約14 km地点において,台風後に採取したコアより,洪水性堆積物と思われる砂泥互層の内,最上位に認められた1セットを対象に,最上位の泥層,砂層および砂層下位の泥層の3層の分析を行った.その結果,①の観測点では,砂層でマツ科植物の影響が大きく,その上下の泥層では小さいことが分かった.②の観測点では,最上位の泥層とその下位の砂層では,マツ科植物の影響が大きいが,砂層下位の泥層では藻類の影響が大きく,混濁流ではなく,沈降によって堆積した半遠洋性泥と推定される.したがって,その泥層より下位の砂泥互層については,上位の砂泥互層と別の供給過程により形成された可能性が考えられる.
以上より,駿河湾奥部では,河口から約15 km以上まで富士川による洪水性混濁流の影響を受けていることが明らかになった.特に,河口から約10 kmまでは頻繁に混濁流の影響を受け,それより沖合では比較的大規模な混濁流が発生した際に影響を受ける可能性が考えられた.今後,どのくらいの頻度・規模で河川起源の混濁流が発生し,海底を変化させるかについて,さらに総合的な観測に取り組む予定である.
[引用文献] 西田・池原(2016)海陸シームレス地質情報集,S-5. 中村他(2023)JPGU2023, HCG22-P01.
東海大学海洋地質研究室では,2021年より駿河湾奥部富士川沖において,洪水起源混濁流の発生機構および堆積過程解明を目的に,海洋地質学的調査(海底地形,表層堆積物特徴,海底観察映像など)に取り組み,春(3月),梅雨前(4・5月),台風前(7・8月)および台風後(10~12月)の各季節において,定点による観測行っている.富士川沖では,河口を始点とし,駿河トラフ沿いを南北方向に観測点(水深約110~1500 m,河口から約1~15 km)を設定した.また,2023年度からはこれまでの調査・分析に加えて,堆積物の起源を把握するため,微化石観察,X線回折分析による鉱物組成およびバイオマーカー分析を試みた.
表層堆積物は,河口から約10 km(水深1350 m)まで砂質堆積物が分布し,その沖合では主に泥質堆積物が分布する.コア試料(平均長約10 cm)の岩相特徴から,大きく①河口から約10 km(水深300~1350 m),②河口から12~16 km(水深約1400~1500 m)の2つの範囲に区分された.①の範囲では,主に下位の平行ラミナを示す砂質堆積物と上位の泥質堆積物からなる.砂質堆積物の粒度は,河口側から沖合に向かって細粒(礫を含む中粒砂から細粒砂へ)になる傾向が見られた.通年通して,類似した岩相を示すが,砂層の粒度・層厚などに変化がみられる.②の範囲では,主に泥と細粒砂からなる砂泥互層が分布する.水深約1450 m以深では年間通して,あまり変化は見られないが,水深約1400 m地点では,季節による大きな岩相変化が認められた.したがって,河口から約12 km(水深約1400 m)までは,富士川起源の混濁流の影響を受けやすく,その沖合では比較的規模の大きな混濁流でないと影響を受けない可能性が示唆される.
混濁流による堆積物運搬を検討するため,珪藻およびバイオマーカー分析から堆積物の起源解明を試みた.まず,表層堆積物の珪藻分析の結果では,いずれの季節においても河口から約14 km(水深1450 m)まで淡水生種の分布が確認された.基本的には河口から離れるほど,その割合は減少する.これらの淡水生種が表層水中で運搬されこたのか,混濁流によって運搬されたのかについては,さらなる調査・研究が必要となる.
バイオマーカー分析では,岩相より①季節変化が大きかった河口から約6 km地点および,②あまり変化が認められなかった河口から約14 km地点において,台風後に採取したコアより,洪水性堆積物と思われる砂泥互層の内,最上位に認められた1セットを対象に,最上位の泥層,砂層および砂層下位の泥層の3層の分析を行った.その結果,①の観測点では,砂層でマツ科植物の影響が大きく,その上下の泥層では小さいことが分かった.②の観測点では,最上位の泥層とその下位の砂層では,マツ科植物の影響が大きいが,砂層下位の泥層では藻類の影響が大きく,混濁流ではなく,沈降によって堆積した半遠洋性泥と推定される.したがって,その泥層より下位の砂泥互層については,上位の砂泥互層と別の供給過程により形成された可能性が考えられる.
以上より,駿河湾奥部では,河口から約15 km以上まで富士川による洪水性混濁流の影響を受けていることが明らかになった.特に,河口から約10 kmまでは頻繁に混濁流の影響を受け,それより沖合では比較的大規模な混濁流が発生した際に影響を受ける可能性が考えられた.今後,どのくらいの頻度・規模で河川起源の混濁流が発生し,海底を変化させるかについて,さらに総合的な観測に取り組む予定である.
[引用文献] 西田・池原(2016)海陸シームレス地質情報集,S-5. 中村他(2023)JPGU2023, HCG22-P01.
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