Presentation Information
[T3-P-3]Identification of stone materials from stonewalls of the Toyotomi Period Osaka Castle
Tetsuya OGURA1,2, *Kiyoshi KAWABATA1, Takaharu SATO1, Takumi MAEKAWA1 (1. Osaka Museum of Natural History, 2. Osaka City Board of Education Protection of Cultural Properties Division)
※発表者変更:小倉 徹也→川端 清司
Keywords:
identification of stone materials,stonewalls,Osaka Castle,the Toyotomi Period
■はじめに
大阪市域における埋蔵文化財発掘調査で検出した石材を伴う遺構のうち,特別史跡大坂城跡で1984年に発見され,2013~2020年に再発掘した豊臣期大坂城詰ノ丸の石材を同定し、産地推定した結果(川端清司ほか,2024)について発表する.
特別史跡大坂城跡では観光魅力向上を目的として「特別史跡大坂城跡保存管理計画」を進める中で,1984年に発見され埋め戻されていた豊臣期大坂城詰ノ丸の石垣(藤井重夫,1989)を再発掘して常時公開することになった.この発掘調査によって検出した石垣石材1132(東面:632,南面:500)個体を同定した(図1).なお,今回観察した大半の石材は観察可能な石材表面が大坂夏ノ陣の火災の熱を受けたことによって著しく熱風化が進んでおり,石材の中には判定が不可能なものも見られ,同定を難しくした.
■調査方法
石垣は野面積で,使用された石材は大小様々,その種類も多様であった.同定は現地でルーペによる肉眼観察により行った。花こう岩については粒度、鉱物組成を記載し,特にカリ長石の色調を中心に分類と産地推定に努めた。
花こう岩類以外についても可能な限り分類し、産地推定を行った。また,石臼,礎石,石棺等の素材とみられるものや台座の一部,五輪塔の一部とみられる転用されたもの,平瓦・丸瓦,擂鉢・壺なども利用されていた.
■まとめ
①石垣東面,南面を合わせた石材のおよそ80%が花こう岩類で占められていた.
②花こう岩類のうち黒雲母花こう岩を,その長石の特徴から,桃色のカリ長石が目立つ黒雲母花こう岩,カリ長石が褐色の黒雲母花こう岩,カリ長石が黄灰色の黒雲母花こう岩,カリ長石が白色の黒雲母花こう岩,長石が斑状の黒雲母花こう岩,カリ長石が桃色ではない粗粒黒雲母花こう岩に分けて記載した.
③桃色のカリ長石が目立つ黒雲母花こう岩は花こう岩類の29%を占めており,この特徴を有する花こう岩類は付近では六甲山地をはじめとした山陽帯に分布し,産出地の候補と考えられる.
④花こう岩類以外の石材は東面,南面を合わせて全体の22%ほどであるが,そのうちの11%が斑れい岩であり,近辺では生駒山地が産出地の候補と考えられる.
⑤堆積岩類の石材のうち,凝灰岩には竜山石と呼ばれる兵庫県高砂市周辺に分布する有馬層群宝殿層由来を考えられる.溶結凝灰岩では室生火砕流堆積物とみられるものや有馬層群とみられるものが認められた.
⑥変成岩類の石材のうち,緑色片岩や泥質片岩,砂質片岩は三波川帯が産出地と考えられるが,庭石などの転用材の可能性も考えられる.マイロナイトが認められ,大阪府南部の和泉山脈北縁が産出地の候補として考えられる.
⑦石垣石材の大部分は大坂夏ノ陣による火災の熱を受けて石材表面が著しく熱風化していた.
■引用文献
藤井重夫(1989)石からみた大坂城と城下町,佐久間貴史編 よみがえる中世2 本願寺から天下統一へ 大坂,平凡社,90-101.
川端清司・佐藤隆春・小倉徹也・前川匠(2024),石垣の石材同定-石垣を構成する石材について-,大坂城跡XXI-豊臣石垣公開施設整備に伴う発掘調査-,大阪市教育委員会・大阪市文化財協会,253-277.
大阪市域における埋蔵文化財発掘調査で検出した石材を伴う遺構のうち,特別史跡大坂城跡で1984年に発見され,2013~2020年に再発掘した豊臣期大坂城詰ノ丸の石材を同定し、産地推定した結果(川端清司ほか,2024)について発表する.
特別史跡大坂城跡では観光魅力向上を目的として「特別史跡大坂城跡保存管理計画」を進める中で,1984年に発見され埋め戻されていた豊臣期大坂城詰ノ丸の石垣(藤井重夫,1989)を再発掘して常時公開することになった.この発掘調査によって検出した石垣石材1132(東面:632,南面:500)個体を同定した(図1).なお,今回観察した大半の石材は観察可能な石材表面が大坂夏ノ陣の火災の熱を受けたことによって著しく熱風化が進んでおり,石材の中には判定が不可能なものも見られ,同定を難しくした.
■調査方法
石垣は野面積で,使用された石材は大小様々,その種類も多様であった.同定は現地でルーペによる肉眼観察により行った。花こう岩については粒度、鉱物組成を記載し,特にカリ長石の色調を中心に分類と産地推定に努めた。
花こう岩類以外についても可能な限り分類し、産地推定を行った。また,石臼,礎石,石棺等の素材とみられるものや台座の一部,五輪塔の一部とみられる転用されたもの,平瓦・丸瓦,擂鉢・壺なども利用されていた.
■まとめ
①石垣東面,南面を合わせた石材のおよそ80%が花こう岩類で占められていた.
②花こう岩類のうち黒雲母花こう岩を,その長石の特徴から,桃色のカリ長石が目立つ黒雲母花こう岩,カリ長石が褐色の黒雲母花こう岩,カリ長石が黄灰色の黒雲母花こう岩,カリ長石が白色の黒雲母花こう岩,長石が斑状の黒雲母花こう岩,カリ長石が桃色ではない粗粒黒雲母花こう岩に分けて記載した.
③桃色のカリ長石が目立つ黒雲母花こう岩は花こう岩類の29%を占めており,この特徴を有する花こう岩類は付近では六甲山地をはじめとした山陽帯に分布し,産出地の候補と考えられる.
④花こう岩類以外の石材は東面,南面を合わせて全体の22%ほどであるが,そのうちの11%が斑れい岩であり,近辺では生駒山地が産出地の候補と考えられる.
⑤堆積岩類の石材のうち,凝灰岩には竜山石と呼ばれる兵庫県高砂市周辺に分布する有馬層群宝殿層由来を考えられる.溶結凝灰岩では室生火砕流堆積物とみられるものや有馬層群とみられるものが認められた.
⑥変成岩類の石材のうち,緑色片岩や泥質片岩,砂質片岩は三波川帯が産出地と考えられるが,庭石などの転用材の可能性も考えられる.マイロナイトが認められ,大阪府南部の和泉山脈北縁が産出地の候補として考えられる.
⑦石垣石材の大部分は大坂夏ノ陣による火災の熱を受けて石材表面が著しく熱風化していた.
■引用文献
藤井重夫(1989)石からみた大坂城と城下町,佐久間貴史編 よみがえる中世2 本願寺から天下統一へ 大坂,平凡社,90-101.
川端清司・佐藤隆春・小倉徹也・前川匠(2024),石垣の石材同定-石垣を構成する石材について-,大坂城跡XXI-豊臣石垣公開施設整備に伴う発掘調査-,大阪市教育委員会・大阪市文化財協会,253-277.
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