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[T11-P-4]Element transfer and concentration during formation of episyenites - Example of Hakata Island, Ehime Prefecture, Japan

*Toko FUKUI1, Kazuya Shimooka2, Toshiro TAKAHASHI3, Satoshi SAITO1 (1. Ehime University, 2. Kwansei Gakuin University, 3. Niigata University)
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Keywords:

Episyenite,Water-rock interaction,Hakatajima Island,rare-earth elements

1.はじめに 
 エピ閃長岩とは,花崗岩類とアルカリ成分に富む流体との岩石−水相互作用によって形成される,石英に枯渇し,端成分に近いアルカリ長石類に富む岩石である.また,エピ閃長岩は,その形成時に流体が運んできたUやSn,希土類元素(以下, REE)などを濃集させることが知られている(Suikkanen and Ramo,2019).実際に,日本に産するエピ閃長岩からも,Liに富む希少鉱物(今岡・永嶌,2022)やZn,Snに富む閃亜鉛鉱(中野ほか,2023)などが記載されており,エピ閃長岩は多様な鉱物資源の探索対象として期待される.このような鉱物資源の探索に向けて,濃集先となるエピ閃長岩そのものの形成過程を明らかにしていくことは重要である.しかしながら,日本においては,エピ閃長岩中の希少鉱物について鉱物学的な研究が盛んになされているが,エピ閃長岩形成時における元素の移動・濃集過程を詳細に検討した研究例は限られている.本研究では,エピ閃長岩形成時の元素の挙動を解明する研究の一例として,愛媛県伯方島に分布するエピ閃長岩類について,野外産状および岩石記載,全岩化学組成・REE組成分析,Sr–Nd同位体組成分析をおこない,エピ閃長岩形成時の元素の移動・濃集について検討した.
2.野外産状・岩石記載 
 当地域には2種類のエピ閃長岩が産しており,その色調の違いにより,真珠色閃長岩と牡蠣色閃長岩に区別される.これらのエピ閃長岩類は花崗岩に伴って産出し,いずれも周囲の花崗岩との境界は不明瞭である.真珠色閃長岩は多孔質な岩相を示し,露頭中に多数の空隙が認められる.一方,牡蠣色閃長岩は塊状・緻密な岩相であり,真珠色閃長岩に比べ,母岩の花崗岩の組織が残存している.主な構成鉱物はいずれもアルカリ長石,単斜輝石,柘榴石,チタン石であり,特に有色鉱物について,真珠色閃長岩では柘榴石が,牡蠣色閃長岩では単斜輝石が最も多く含まれる.真珠色閃長岩中では柘榴石やチタン石が空隙を埋めるように産する.牡蠣色閃長岩中では単斜輝石と柘榴石の粒状集合組織が認められる.また母岩との境界付近では,角閃石の単斜輝石への交代も認められる.
3.REE組成分析・アイソコン解析 
 REE組成分析の結果から,REEの存在度は母岩の花崗岩よりも真珠色閃長岩では低く,牡蠣色閃長岩では高い値を示す.また,花崗岩がエピ閃長岩化する際の元素の移動を検討するためにエピ閃長岩類および母岩の花崗岩類の全岩化学組成データを用いて,アイソコン解析(Grant,1986)を行った.不動元素として,花崗岩に多く含有され,エピ閃長岩化後も長石の結晶構造に保持されるAlを設定した.その結果,両エピ閃長岩のいずれも母岩からのSiの減少と,Li,Na,Kといったアルカリ元素の増加が認められた.一方,他の元素に着目すると,花崗岩中の苦鉄質鉱物に含まれるTi,Fe,Caやジルコンなどの副成分鉱物に含まれるZr,REEなど,多くの元素が真珠色閃長岩では母岩の花崗岩類に比べて減少するのに対し,牡蠣色閃長岩では増加する,という結果が得られた.
4.Sr-Nd同位体組成 
 エピ閃長岩形成をもたらした流体の起源を検討するため,当地域のエピ閃長岩類および花崗岩類についてSr-Nd同位体組成分析を行った.真珠色閃長岩は母岩の花崗岩類と類似したεSrt (90Ma)を示すが,εNdt (90Ma)は母岩よりも有意に低い値を示す.一方,牡蠣色閃長岩は母岩の花崗岩類と類似したSr-Nd同位体組成を示す.
5.考察 
 アイソコン解析結果から, 真珠色閃長岩で減少したTi,Fe,Ca,Zr,REEなどの元素が,牡蠣色閃長岩では増加したと考えられる.このことは, 真珠色閃長岩形成時に母岩から溶脱した元素が,牡蠣色閃長岩に付加したことを示唆する.また,牡蠣色閃長岩は母岩の花崗岩と類似したSr-Nd同位体組成を示すが,このことはエピ閃長岩形成をもたらした流体が花崗岩質マグマ由来であることを示唆する.一方,真珠色閃長岩は花崗岩類より有意に低いεNdt (90Ma)組成を持つことから,Nd同位体比の低い別起源の流体の関与があったことが示唆される.したがって,真珠色閃長岩形成時には,花崗岩質マグマ起源の流体との反応により同位体組成の類似するSrがアルカリ長石中に保持されるとともに,①Ndを含む多くの元素が溶脱し空隙に富む岩相をつくる.さらに,②花崗岩より低いNd同位体組成をもつ流体が供給され,空隙を埋めるように低いNd同位体組成をもつ柘榴石およびチタン石が晶出する,といった過程を経たと考えられる.また,牡蠣色閃長岩形成時には,①で母岩から溶脱した元素が濃集した流体との反応により,花崗岩と類似したSr-Nd同位体比を保持しつつ,有色鉱物の交代や,Siの溶脱によってできた空隙の充填が進んだと考えられる.

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