Presentation Information
[T17-P-5]Underplateing deformation process of the oceanic crust : An example of the Okitsu Me´lange, Cretaceous Shimanto Belt, Japan.
*Sho SUMIDA1, Tomoya MUKAE2, Arito SAKAGUCHI1 (1. Yamaguchi University Graduate School of Sciences and Technology for Innovation, 2. Toa construction consultant Co., Ltd.)
Keywords:
underplateing unit,subdution zone,floor thrust,oceanic crust
【はじめに】
高知県興津地域に見られる興津メランジュは底付け付加体である.底付け付加体とは,剝ぎ取り付加を免れた海洋堆積物が,海洋底層序を覆瓦状に繰り返すデュープレックス構造を形成しながら,剝ぎ取り付加体のさらに下に潜り込んで付加された地質体である.デュープレックス構造は底付け付加体に典型的に見られる構造であり,水平成分である上部デコルマをルーフスラスト,下部デコルマをフロアスラストと呼び,両スラストに挟まれる低角スラストをランプスラストと呼ぶ(村田, 1991).このフロアスラストは,いわゆるプレート境界に相当する.底付け付加過程では海洋地殻上部を構成する枕状溶岩を一部引き剝がすため,各スラスト周辺に枕状溶岩(緑色岩)がシート状に産する.興津メランジュは,タービダイト層である北側の野々川層と南側の中村層に接しており,それぞれの地層境界がデュープレックス構造におけるルーフスラスト,フロアスラストに相当する.ランプスラストは,ルーフスラストとフロアスラストの間の連続性が良いシート状緑色岩層と,その下位の堆積岩との地層境界に相当する.これらの地質体の最高被熱温度は,沈み込み帯の地震発生帯の温度に相当していること(Sakaguchi, 1996)から,興津メランジュは過去の震源領域であると考えられ,実際にルーフスラスト上で高速地震すべりの証拠であるシュードタキライト露頭が報告されている(Ikesawa et al., 2003).また,フロアスラスト近傍の黒色頁岩層中で,デュープレックス構造形成後のステージで活動したと示唆される断層露頭を2箇所報告している.本調査地域は,海洋地殻が底付け付加し,地下深部に沈み込む過程を考察するに適していると考えられる.
【研究目的】
底付け付加体の変形過程を復元することを目的として,興津メランジュのシート状緑色岩露頭を破砕度と緑色岩レイヤー構造に焦点を当てて分類し,デュープレックス構造におけるテクトニックセッティングとの関係および変形ステージについて整理する.
【分類】
緑色岩における断層岩は細粒基質の量比(嶋本ほか,1996)を基準にして,プロトカタクレーサイト,カタクレーサイト,ウルトラカタクレーサイトに分類した.また,断層岩とまでいかなくとも緑色岩の境界に裂かがあり,レイヤー構造を持つ緑色岩をレイヤー緑色岩とした.このレイヤー緑色岩は,オフィオライト露頭観察において報告されている海洋地殻上部が水平に類重する初生的構造(Kusano et al., 2012)に類似し,また物理探査によって報告されている海洋地殻中に広く存在する弱面(Neira et al., 2016)もこれに相当するかもしれない.
【結果と考察】
興津メランジュのデュープレックス構造中のランプスラスト沿いでは目立った剪断帯は確認できず,緑色岩の大部分が暗褐色や緑色で典型的な枕状溶岩の産状を示す.緑色岩には厚さ1~2 m程度の層状構造がよく発達する.このレイヤー緑色岩はテクトニックセッティングに関わらず興津メランジュで広く確認できた.以上のことから枕状溶岩は,海洋地殻上部の初生的構造に沿って引きはがされて付加されたのかもしれない.これに対してフロアスラスト近傍では緑色岩に破砕帯がよく発達しており,カタクレーサイトやウルトラカタクレーサイトが特徴的に確認された.このフロアスラスト周辺の強変形帯は,概ね北東走向に急傾斜で厚いところで幅38 mもある.走向方向にも変形の強弱があり,カタクレーサイトの厚さは増減する.ウルトラカタクレーサイトはN44°E86°N,カタクレーサイトはN50°E°84Nを示し,興津メランジュにおける黒色頁岩の劈開面平均方位とほぼ同じ値を示す.これは上述のカタクレーサイト,ウルトラカタクレーサイトが沈み込み作用を伴ったフロアスラストの活動を記録した断層岩であることを示唆しており,プレート境界の変形をみていると考えられる.
【引用文献】
Ikesawa et al., (2003) Geology, 31, 637-640. Kusano et al., (2012) Geochemistry Geophysics Geosystems, 13, Number 5. Sakaguchi, (1996) GEOLOGY, September, 1996. 嶋本ほか, (1996) テクトニクスと変成作用:原郁夫先生退官記念論文集,創文,314-332. 村田明広(1991)地質学雑誌, 1, 39-52. N.M. Neira et al., (2016) Earth and Planetary Science Letters, 450, 355-365.
高知県興津地域に見られる興津メランジュは底付け付加体である.底付け付加体とは,剝ぎ取り付加を免れた海洋堆積物が,海洋底層序を覆瓦状に繰り返すデュープレックス構造を形成しながら,剝ぎ取り付加体のさらに下に潜り込んで付加された地質体である.デュープレックス構造は底付け付加体に典型的に見られる構造であり,水平成分である上部デコルマをルーフスラスト,下部デコルマをフロアスラストと呼び,両スラストに挟まれる低角スラストをランプスラストと呼ぶ(村田, 1991).このフロアスラストは,いわゆるプレート境界に相当する.底付け付加過程では海洋地殻上部を構成する枕状溶岩を一部引き剝がすため,各スラスト周辺に枕状溶岩(緑色岩)がシート状に産する.興津メランジュは,タービダイト層である北側の野々川層と南側の中村層に接しており,それぞれの地層境界がデュープレックス構造におけるルーフスラスト,フロアスラストに相当する.ランプスラストは,ルーフスラストとフロアスラストの間の連続性が良いシート状緑色岩層と,その下位の堆積岩との地層境界に相当する.これらの地質体の最高被熱温度は,沈み込み帯の地震発生帯の温度に相当していること(Sakaguchi, 1996)から,興津メランジュは過去の震源領域であると考えられ,実際にルーフスラスト上で高速地震すべりの証拠であるシュードタキライト露頭が報告されている(Ikesawa et al., 2003).また,フロアスラスト近傍の黒色頁岩層中で,デュープレックス構造形成後のステージで活動したと示唆される断層露頭を2箇所報告している.本調査地域は,海洋地殻が底付け付加し,地下深部に沈み込む過程を考察するに適していると考えられる.
【研究目的】
底付け付加体の変形過程を復元することを目的として,興津メランジュのシート状緑色岩露頭を破砕度と緑色岩レイヤー構造に焦点を当てて分類し,デュープレックス構造におけるテクトニックセッティングとの関係および変形ステージについて整理する.
【分類】
緑色岩における断層岩は細粒基質の量比(嶋本ほか,1996)を基準にして,プロトカタクレーサイト,カタクレーサイト,ウルトラカタクレーサイトに分類した.また,断層岩とまでいかなくとも緑色岩の境界に裂かがあり,レイヤー構造を持つ緑色岩をレイヤー緑色岩とした.このレイヤー緑色岩は,オフィオライト露頭観察において報告されている海洋地殻上部が水平に類重する初生的構造(Kusano et al., 2012)に類似し,また物理探査によって報告されている海洋地殻中に広く存在する弱面(Neira et al., 2016)もこれに相当するかもしれない.
【結果と考察】
興津メランジュのデュープレックス構造中のランプスラスト沿いでは目立った剪断帯は確認できず,緑色岩の大部分が暗褐色や緑色で典型的な枕状溶岩の産状を示す.緑色岩には厚さ1~2 m程度の層状構造がよく発達する.このレイヤー緑色岩はテクトニックセッティングに関わらず興津メランジュで広く確認できた.以上のことから枕状溶岩は,海洋地殻上部の初生的構造に沿って引きはがされて付加されたのかもしれない.これに対してフロアスラスト近傍では緑色岩に破砕帯がよく発達しており,カタクレーサイトやウルトラカタクレーサイトが特徴的に確認された.このフロアスラスト周辺の強変形帯は,概ね北東走向に急傾斜で厚いところで幅38 mもある.走向方向にも変形の強弱があり,カタクレーサイトの厚さは増減する.ウルトラカタクレーサイトはN44°E86°N,カタクレーサイトはN50°E°84Nを示し,興津メランジュにおける黒色頁岩の劈開面平均方位とほぼ同じ値を示す.これは上述のカタクレーサイト,ウルトラカタクレーサイトが沈み込み作用を伴ったフロアスラストの活動を記録した断層岩であることを示唆しており,プレート境界の変形をみていると考えられる.
【引用文献】
Ikesawa et al., (2003) Geology, 31, 637-640. Kusano et al., (2012) Geochemistry Geophysics Geosystems, 13, Number 5. Sakaguchi, (1996) GEOLOGY, September, 1996. 嶋本ほか, (1996) テクトニクスと変成作用:原郁夫先生退官記念論文集,創文,314-332. 村田明広(1991)地質学雑誌, 1, 39-52. N.M. Neira et al., (2016) Earth and Planetary Science Letters, 450, 355-365.
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