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[G-P-36]Relationships between distribution patterns of meso-macro plastics in surface sediments and sediment properties in Kiisuido Strait.

*Astuko Amano1, Shinsuke Kodama1, Shinsuke Kodama1, Takuya Itaki1 (1. AIST)
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Keywords:

plastic,sediment,grain size,Kiisuido Strait

プラスチックによる海洋汚染は国際的に削減するための条約制定が議論されるなど,近年,非常に関心の高い問題となっている.大きさが5 mm以下のプラスチックは,環境下で紫外線,熱,風波などによって物理的に破砕,微細化したものである.微細化される過程を把握するためには,5 mmよりも大きなメソ(5~25 mm),マクロ(25 mm~1 m)のプラスチックの海域へと流出する量や過程は有用な情報になる.産業技術総合研究所では沿岸域の地質情報整備のために,2021年12月に紀伊水道で表層堆積物の調査を行い,その中から多数の5 mm以上のメソ・マクロプラスチック(プラスチック)を取得し,その一部を近赤外スペクトル測定でプラスチック組成を明らかにした(天野ほか,2022;児玉ほか,2022).本研究では採取された全てのプラスチックをフーリエ変換型赤外光分析(FT-IR)の全反射測定法(ATR)で判定した.さらに,プラスチック個数や分析結果と堆積物の粒度,元素濃度とを比較し,プラスチックの移動過程について検討した. 堆積物採取地点全29地点の内14地点で46個のプラスチックが採取された.プラスチックが採取された地点は徳島を流れる吉野川,那賀川や和歌山を流れる紀ノ川,有田川の河口沖合で多い.各地点で採取されたプラスチックの個数は大多数が1~2個であったが,吉野川,那珂川河口沖合の地点では4~16個と多いことを示す.FT-IRで測定したプラスチック組成判定は近赤外スペクトル測定結果と一致する.採取されたプラスチックの50%がポリエチレン(PE)で,次いでポリ塩化ビニル(PVC)が22%,ポリプロピレン(PP)が9%で,複数種のプラスチック混合物は13%であった.堆積物の粒度分布は紀伊水道の西部では6~7φと相対的に細粒,東部では3~5φと粗粒であることを示し,さらに紀淡海峡,鳴門海峡や太平洋と接合付近では2φ以上の粗~極粗粒砂や礫へと粗粒化する.全有機炭素(TOC)濃度は吉野川,那珂川河口沖合では1.2%以上,紀ノ川河口沖では1.0%以上と高く,粒度の粗粒化に伴い減少する.プラスチックは河口沖合で多いことから,陸域から河川を通じて流入していると言える.堆積物の粒度とTOC濃度は河口沖合で細粒,高いことを示すが,紀伊水道の西部の方が東部に比べてより細粒,高いことを示す.紀伊水道東部は太平洋から底層を通じて流入する高塩分水塊や紀淡海峡周辺の速い海流の影響を受けて,細粒粒子や有機物が拡散,移動しやすく,一方,西部は停滞的で細粒粒子や有機物が堆積しやすい環境といえる.そのため,東部では河川から流入したプラスチックが移動しやすいために堆積物中のプラスチック個数が少なく,反対に停滞的な西部で多いと考えられる.今後,堆積物の元素や微化石などを基に紀伊水道の粒子起源や堆積環境について明らかにし,プラスチックのサイズ,形状なども加えて,プラスチックの移動,堆積過程について検討する.謝辞:本研究は環境総合推進費1-2204「海洋流出マイクロプラスチックの物理・化学的特性に基づく汚染実態把握と生物影響評価(JPMEERF20221004)」とJSPS科研費23K03564の助成を受けて実施した.引用:天野ほか(2022)地質調査総合センター速報, no.83, 27-32.;児玉ほか(2022)地質調査総合センター速報, no.83, 33-39.

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