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[G-P-37]Paleoenvironmental changes over the past 1,000 years by the analysis of clastic varve sediments in the Lake Mokoto, Hokkaido, Japan

*Koji SETO1, Kota KATSUKI1, Takeshi SONODA2, Kazuyoshi YAMADA3 (1. EsReC, Shimane Univ., 2. Tokyo Univ. of Agriculture, 3. Waseda Univ.)
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Keywords:

Lake Mokoto,Late Holocene,clastic varve sediments,Total organic carbon content,Total sulfur content

亜寒帯気候に属する北海道東部オホーツク海沿岸には,多くの汽水湖が分布する.藻琴湖は,網走市東部に位置する面積約1.1㎢,最大水深5.8mの小さな富栄養汽水湖である.この湖沼は流域からの汚濁負荷が相対的に高く,富栄養化の原因となっている.また,湖水には密度成層が認められ,夏季には底層に無酸素水塊が形成されている.そのため,藻琴湖では.有機質の砕屑性年縞堆積物で構成されている.このような年縞堆積物の存在する湖沼では,年レベルの古環境解析が可能であり,フラックスに換算するのが容易である.それを解明するために,藻琴湖において2本の20m級のボーリングコア(18Mk-1B,2Bコア)と1本の2m級の押し込み式コアラーによるコア(18Mk-8Cコア)を採取した.本講演では, CNS元素分析や粒度分析など高解像度分析から過去約1000年の古環境変遷について述べる. コアリングは,2018年2月の結氷期に行なった.コアリング位置は,藻琴湖湖心付近(東経144°19.173’:北緯43°57.412’)の水深4.5mの地点である.18Mk-8Cコアは,表層からコアリングし,コア長は176cmである.2015年と2016年に形成されたラミナセットが確認され,ほぼ表層から不かく乱で採取されているものと思われる.18Mk-1B, 2Bコアは,湖水面から5m下から1m間隔のシンウォールで採取された.コア長は約19mである.そのほとんどがラミナを伴う泥質堆積物で,下位2mが塊状または生物擾乱を伴う泥質堆積物であった.これらのコアからは明瞭なテフラが3枚確認された.最上位のテフラは樽前-a(Ta-a)テフラで,西暦1739年に降下した火山灰である.その下位は,駒ヶ岳-c2(Ko-c2)テフラで西暦1694年のものである.深度約6mには, 摩周-b(Ma-b)テフラが見られ,10世紀を示している. 近年では,2011年以降,全有機炭素(TOC)濃度は3〜4%を示し,全イオウ(TS)濃度が0-1%と相対的に低い傾向にある.これは藻琴湖の富栄養化の抑制に起因するのではなく,降水の増加による有機物の希釈に起因すると考える方が妥当である.西暦2011年以降,1週間の総降水量が100mmを越える降雨がほぼ毎年のように観測されており,その観測結果は超高解像度のCNS元素分析結果と一致している.西暦2011年以前では,TOC濃度は4-5%,TS濃度が1-3%とやや高い値を示している.一方で西暦1920年以前のTOC濃度は6%以上,TS濃度は3-4%と近年と比較して高い値を示している.特に1800年代中半ではTOC濃度が10%以上を示している.しかし,年間のフラックスに換算するとむしろ低く,堆積速度の低下によって濃縮したものと思われる.TOCフラックスは1920年代の0.01g/cm2/yrから0.03g/cm2/yrと増加する傾向を示しており,そのころから富栄養化が進行したものと思われる.それ以前も0.01から0.02g/cm2/yrを示している.摩周-b(Ma-b)テフラ付近の層準では,テフラ層準を除いて,TOC濃度が7-9%と高い値を示し, 40年から50年の周期的な増減が見られる.TS濃度は2.5から4.0%を示し,1800年代から大きく変わっていない.この間は,富栄養で還元的な環境が継続していたものと思われる.

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