Presentation Information
[G-P-38]Volcanic fan and alluvial deposit stratigraphy from two boreholes at the southern to eastern foot of Bandai volcano, northeast Japan.
*Kyoko S. KATAOKA1, Atsushi URABE1, Yoshitaka NAGAHASHI2 (1. Research Institute for Natural Hazards and Disaster Recovery, Niigata University, 2. Faculty of Symbiotic Systems Science, Fukushima University)
Keywords:
Bandai volcano,Adatara volcano,debris avalanche,lahar,Inawashiro Plain
火山麓扇状地やその近傍の狭い谷には,岩屑なだれ堆積物や土石流堆積物と洪水堆積物が局所的に堆積することがある(Smith, 1991).福島県磐梯山の南麓には,溶岩地形や岩屑なだれによる流れ山地形の間に,扇状地が発達する.この扇状地堆積物は,岩屑なだれ堆積物や土石流堆積物,水流による堆積物から構成されており,磨上原(すりあげはら)泥流堆積物や砂川層(吉田・鈴木,1981;中馬・吉田,1982),磨上原扇状地堆積物(山元・須藤,1996)とよばれ,山元・阪口(2023)では,火山麓扇状地1堆積物としてまとめられた.一方,東麓には山頂付近から南南東に延びる琵琶沢を軸として,扇状地地形が発達しており,表層部は,琵琶沢岩屑なだれ堆積物や1888年噴火によるラハール堆積物で覆われている(山元・須藤,1996;山元・阪口2023).
本研究では,磐梯火山南麓と東麓の2地点で新たにボーリング掘削を行った.調査地点は,磐梯火山南麓斜面の猪苗代町長田(PPT2018コア:北緯37度33分20.68秒,東経140度4分21.97秒:山元・阪口(2023)の火山麓扇状地1堆積物に相当)と,東麓斜面の延長で,長瀨川の河川作用の影響を受けた地形面上の猪苗代町三郷堀切(OJK2015コア:北緯37度34分15.78秒,東経140度7分36.15秒:山元・阪口(2023)の琵琶沢岩屑なだれ堆積物に相当)である.掘削されたコア堆積物からは,過去約5万年間の火山麓扇状地および沖積堆積物の岩相と層序,および,磐梯山・安達太良山に由来する複数の岩屑なだれやラハール堆積物の存在が明らかとなった.
PPT2018コアは掘削長が25 mであり,基底から深度18.6 mまでは基盤となる更新統・白河火砕流堆積物(吉田・高橋,1991)が認められる.この白河火砕流堆積物を層厚1.5 m程度の翁島(おきなじま)岩屑なだれ堆積物(約50,000年前)が直接覆い,翁島岩屑なだれ堆積物中に磐梯葉山1火砕堆積物(山元・須藤,1996)の薄層が挟まる.そこから深度約7.5 m付近にある有機質シルト層(14C暦年較正年代値:約33,000〜32,000年前)までの区間に,ラハールあるいは岩屑なだれの堆積物が少なくとも6層挟まれる.その上位は,砂層・泥層を主とし,礫層を挟む,河川性堆積物が卓越する.
OJK2015コアは掘削長が51 mである.全体的に,礫層・砂層を主体とし,淘汰が中間で,円磨された安山岩・花崗岩・火砕岩・堆積岩の礫を含むことから,網状河川システム環境が卓越していたと考えられる.深度48 m付近に含まれる材片の14C年代値(較正値)は約52,400〜48,600年前であり,約5万年前の翁島岩屑なだれ発生による河川のせき止めと,猪苗代湖形成初期(長橋ほか,2016,Kataoka and Nagahashi, 2019)の時期に近い.深度29.4 mから26.4 mは,層厚数10 cm,塊状・不淘汰の複数枚のユニットと層厚数cmから10 cmの有機質シルト層との互層となっている.青灰色から明灰色を呈す2層の不淘汰ユニット(M1,M2)は,基質支持で基質に泥分を含み,径1 cmまでの安山岩や白色岩片など雑多な種類の亜角から亜円礫を含み,ラハール堆積物と解釈できる.また,粗粒砂から中粒砂サイズからなる1層の暗茶色ユニットは,数mmの岩片を含む.これら塊状ユニット間に挟まる複数の有機質シルト層からは,約36,800〜36,100年前から約34,000〜33,200前の間の14C年代値(較正値)を得た.M1およびM2ユニットの特徴は,安達太良山下流域の酸川盆地で見られる泥質ラハール堆積物(片岡ほか,2015)に類似し,酸川盆地で掘削されたコア中に,同様の年代を示すラハール堆積物が複数認められていることから(片岡ほか,2021),M1およびM2ユニットも安達太良山を起源とする同じ頃の活動時期の堆積物である可能性が高い.深度20.5 mから18 mは砂層と泥層の互層からなる氾濫原堆積物と解釈でき,深度 20 m付近には姶良Tnテフラ層(町田・新井,1976:約3万年前)が挟在する.また,深度15 mから14.2 mの不淘汰堆積物中から約7400〜7300年前,深度8.1 mから0.5 mの不淘汰堆積物の基底から約2400〜2300年前 の14C年代値(較正値)を得ており,前者は小水沢岩屑なだれ堆積物(千葉・木村,2001)に対比できる可能性があり,後者は琵琶沢岩屑なだれ堆積物に対比できる.
文 献:千葉・木村(2001)岩石鉱物科学.中馬・吉田(1982)福島大学特定研究「猪苗代湖の自然」.Kataoka and Nagahashi (2019) Sedimentology. 片岡ほか(2015)火山.片岡ほか(2021)地質学会講演要旨.町田・新井(1976)科学.長橋ほか(2016)裏磐梯・猪苗代地域の環境学.Smith (1991) SEPM Spec. Publ. 山元・須藤(1996)地調月報.山元・阪口(2023)地域地質研究報告.吉田・鈴木(1981)福島大学特定研究「猪苗代湖の自然」.吉田・高橋(1991)地質雑.
本研究では,磐梯火山南麓と東麓の2地点で新たにボーリング掘削を行った.調査地点は,磐梯火山南麓斜面の猪苗代町長田(PPT2018コア:北緯37度33分20.68秒,東経140度4分21.97秒:山元・阪口(2023)の火山麓扇状地1堆積物に相当)と,東麓斜面の延長で,長瀨川の河川作用の影響を受けた地形面上の猪苗代町三郷堀切(OJK2015コア:北緯37度34分15.78秒,東経140度7分36.15秒:山元・阪口(2023)の琵琶沢岩屑なだれ堆積物に相当)である.掘削されたコア堆積物からは,過去約5万年間の火山麓扇状地および沖積堆積物の岩相と層序,および,磐梯山・安達太良山に由来する複数の岩屑なだれやラハール堆積物の存在が明らかとなった.
PPT2018コアは掘削長が25 mであり,基底から深度18.6 mまでは基盤となる更新統・白河火砕流堆積物(吉田・高橋,1991)が認められる.この白河火砕流堆積物を層厚1.5 m程度の翁島(おきなじま)岩屑なだれ堆積物(約50,000年前)が直接覆い,翁島岩屑なだれ堆積物中に磐梯葉山1火砕堆積物(山元・須藤,1996)の薄層が挟まる.そこから深度約7.5 m付近にある有機質シルト層(14C暦年較正年代値:約33,000〜32,000年前)までの区間に,ラハールあるいは岩屑なだれの堆積物が少なくとも6層挟まれる.その上位は,砂層・泥層を主とし,礫層を挟む,河川性堆積物が卓越する.
OJK2015コアは掘削長が51 mである.全体的に,礫層・砂層を主体とし,淘汰が中間で,円磨された安山岩・花崗岩・火砕岩・堆積岩の礫を含むことから,網状河川システム環境が卓越していたと考えられる.深度48 m付近に含まれる材片の14C年代値(較正値)は約52,400〜48,600年前であり,約5万年前の翁島岩屑なだれ発生による河川のせき止めと,猪苗代湖形成初期(長橋ほか,2016,Kataoka and Nagahashi, 2019)の時期に近い.深度29.4 mから26.4 mは,層厚数10 cm,塊状・不淘汰の複数枚のユニットと層厚数cmから10 cmの有機質シルト層との互層となっている.青灰色から明灰色を呈す2層の不淘汰ユニット(M1,M2)は,基質支持で基質に泥分を含み,径1 cmまでの安山岩や白色岩片など雑多な種類の亜角から亜円礫を含み,ラハール堆積物と解釈できる.また,粗粒砂から中粒砂サイズからなる1層の暗茶色ユニットは,数mmの岩片を含む.これら塊状ユニット間に挟まる複数の有機質シルト層からは,約36,800〜36,100年前から約34,000〜33,200前の間の14C年代値(較正値)を得た.M1およびM2ユニットの特徴は,安達太良山下流域の酸川盆地で見られる泥質ラハール堆積物(片岡ほか,2015)に類似し,酸川盆地で掘削されたコア中に,同様の年代を示すラハール堆積物が複数認められていることから(片岡ほか,2021),M1およびM2ユニットも安達太良山を起源とする同じ頃の活動時期の堆積物である可能性が高い.深度20.5 mから18 mは砂層と泥層の互層からなる氾濫原堆積物と解釈でき,深度 20 m付近には姶良Tnテフラ層(町田・新井,1976:約3万年前)が挟在する.また,深度15 mから14.2 mの不淘汰堆積物中から約7400〜7300年前,深度8.1 mから0.5 mの不淘汰堆積物の基底から約2400〜2300年前 の14C年代値(較正値)を得ており,前者は小水沢岩屑なだれ堆積物(千葉・木村,2001)に対比できる可能性があり,後者は琵琶沢岩屑なだれ堆積物に対比できる.
文 献:千葉・木村(2001)岩石鉱物科学.中馬・吉田(1982)福島大学特定研究「猪苗代湖の自然」.Kataoka and Nagahashi (2019) Sedimentology. 片岡ほか(2015)火山.片岡ほか(2021)地質学会講演要旨.町田・新井(1976)科学.長橋ほか(2016)裏磐梯・猪苗代地域の環境学.Smith (1991) SEPM Spec. Publ. 山元・須藤(1996)地調月報.山元・阪口(2023)地域地質研究報告.吉田・鈴木(1981)福島大学特定研究「猪苗代湖の自然」.吉田・高橋(1991)地質雑.
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