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[T13-O-1]Integrated bio- and carbon isotope stratigraphy across the Turonian/Coniacian boundary in the Yezo Group, Hokkaido, and high-resolution international stratigraphic correlations.

*Kosuke TAKAHASHI1, Reishi TAKASHIMA2, Ireneusz WALASZCZYK3, Toshiro YAMANAKA4, Taiga TOMARU1, Azumi KUROYANAGI2 (1. Department of Earth Science, Tohoku University, 2. The Center for Academic Resources and Archives Tohoku University Museum, 3. Warsaw University, 4. Tokyo University of Marine Science and Technology)
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【ハイライト講演】  T/C境界のGSSPはドイツにあり,補助境界模式地も欧米にあるのみで,北西太平洋地域においてT/C境界がどこに対比されるかは重要な問題である.この研究は北海道の古丹別において凝灰岩のアパタイト微量元素組成を用いた柱状対比により露出欠如を補完し,その上で大型化石・炭素同位体比統合層序を作成し,T/C境界を数mの制度で特定するものである. ※ハイライト講演とは...

Keywords:

Late Cretaceous,Yezo Group,Carbon-isotope stratigraphy,Turonian/Coniacian boundary


 チューロニアン/コニアシアン境界(以降T/C境界)のGSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point)は,2021年にドイツのSalzgitter-Salderセクションにおいてイノセラムス類のCremnoceramus deformis erectusの初産出をPrimary markerとして,Grauweise Wechselfolge部層のBed番号46の泥灰岩層基底に設定された(Walaszczyk et al., 2021).境界は炭素同位体比層序の顕著な負のシフトであるNavigation Eventや,二枚貝の一種であるDidymotis等の生層序のマーカー種で補完されており,欧米地域に3カ所(Słupia Nadbrzeżna, central Poland; Střeleč railway cutting, Czech Republic; El Rosario, NE Mexico)の補助的境界模式層断面が設定されている.一方で,北西太平洋地域は境界を定義する化石の産出が乏しく,模式層序との正確な年代対比が困難である.炭素同位体比層序は国際対比に有効なツールとされており,特にT/C境界付近では従来Inoceramus uwajimensisの初産出層準がT/C境界と一致すると考えられていたのに対し(利光ほか, 1995),近年の炭素同位体比層序に基づく年代対比は本種の初産出層準が上部チューロニアンであることを示唆している(Takashima et al., 2010; Hayakawa and Hirano, 2013).しかし,北西太平洋地域のT/C境界付近における炭素同位体比層序の解像度は欧米地域と比較して低く,生層序による制約も不十分のため,年代対比に依然として不確実性が残されている.
北海道中軸部に分布する蝦夷層群は北西太平洋地域における白亜系の標準層序であり,保存良好な大型化石,微化石が多産する.白亜系層序の研究の中心である欧米地域と異なり活動的大陸縁辺に位置していたことから凝灰岩層を頻繫に挟むほか,主に陸源性砕屑物からなるため堆積速度が非常に速く,高解像度の研究が可能である.しかし,堆積速度の速さに伴い層厚が非常に厚いため大型化石の産出が散発的になりやすいほか,小規模な断層や褶曲により連続層序を得ることが困難である.蝦夷層群におけるT/C境界付近では先行研究において炭素同位体比層序,浮遊性有孔虫化石層序,凝灰岩層の放射年代測定により大まかな年代モデルが確立されている(Kuwabara et al., 2019; Takashima et al., 2019).一方で,欧米地域と比較してステージ境界の位置に大きな誤差範囲が存在しており,堆積速度を十分に活かした高解像度の研究の障害となっている.
本研究では,北海道苫前地域の蝦夷層群羽幌川層が分布する古丹別セクションにおいて,より高解像度でT/C境界付近の大型化石,炭素同位体比統合層序を作成した.さらに,欠如区間の補完と断層の影響を評価するために,凝灰岩層に含まれるアパタイトの微量元素組成を用いた柱状図間の正確な対比を行った.この結果,調査区間に伏在していた断層の影響を補正することで,T/C境界の基準となるNavigation Event の他,従来確認できていなかった複数の炭素同位体比イベント(Beeding Event, Light Point Event, East Cliff Event等)を検出できる高解像度の炭素同位体比曲線が得られた.また,国際対比に有用な大型化石を複数得たことで,炭素同位体比曲線に厳密な生層序の制約を与えられるようになった.本研究の新たな統合層序により欧米地域と北西太平洋地域の年代対比精度は飛躍的に向上し,T/C境界及び下部/中部コニアシアン境界の位置を数m単位で特定することができた.これにより,古丹別セクションは北西太平洋地域におけるT/C境界の標準模式層序とできる可能性がある.また,調査区間には頻繁に凝灰岩層が挟まるため,今後これらの年代測定によりステージ境界や古環境イベント層準に絶対年代の数値を直接,高解像度で入れられると考えられる.

引用文献
Hayakawa and Hirano, 2013, Acta Geol. Pol., 63, 239–263.
Kuwabara et al., 2019, Cretaceous Res., 103, 104158.
利光ほか, 1995, 地質雑, 101, 19–29.
Takashima et al., 2010, Earth Planet. Sci. Lett., 289, 570–582.
Takashima et al., 2019, Newsl. Stratigr., 52(3), 341–376.
Walaszczyk et al., 2021, Episodes, 45(2), 181–220.