Presentation Information
[T13-P-11]Timing of mylonitization based on zircon U–Pb ages of the Ryoke Plutonic Rocks in the eastern Kii Peninsula: Geological structure of 75 Ma mafic to intermediate rocks and granite rocks in the southern Misugi area, Mie Prefecture
*Yuto HIGAKI1, Makoto TAKEUCHI1,2, Qi LI1, Yoshihiro ASAHARA1 (1. Graduate School of Environmental Studies, Nagoya University, 2. Geological Survey of Japan, National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST))
【ハイライト講演】 中央構造線そいの領家深成岩類のマイロナイト化形成史はK-Ar年代で復元されてきたが,新規貫入岩による若返りがありえるため複数回のマイロナイト化は検出しそこなう可能性がある.この研究では若返りを拾いにくいジルコンU-Pb年代を測定することによって高精度の火成活動史や変形史を考察するものである. ※ハイライト講演とは...
Keywords:
mylonite,zircon U–Pb age,Cretaceous,Ryoke Plutonic Rocks,Mie Prefecture
中央構造線は,日本において重要な構造線の一つであり,その北側には領家帯の領家変成岩類や領家深成岩類だけでなく,それらの岩体がマイロナイト化を受けている剪断帯も分布している.紀伊半島東部においては,領家深成岩類のマイロナイト構造の形成環境やK–Ar年代を用いた冷却史などから,地質構造発達様式についての考察がされてきた(Sakakibara, 1995; 島田ほか, 1998).しかしながら,K–Ar年代では,より新期の貫入岩の熱的イベントによる年代の若返りが起きるため,複数回のマイロナイト化を検出できていない可能性がある.ジルコンのU–Pb年代は閉鎖温度が高いため,年代の若返りが比較的起こりにくい.そこで,ジルコンのU–Pb年代測定によって,火成岩の貫入年代を詳細に決定し,マイロナイト構造などの変形構造と合わせて,火成活動史や変形史を考察する.
高見山地域において,竹内ほか(2025)はジルコンU–Pb年代と岩相から領家深成岩類を区分し,端山ほか(1982)で畑井トーナル岩とされていた一部の岩体について,74.7 ± 1.3 Maの平倉トーナル岩と69.3 ± 0.8 Maの三峰山トーナル岩に区分した.本研究地域では,ジルコンU–Pb年代と岩相から,畑井トーナル岩(85.3 ± 0.8 Ma),中粒黒雲母花崗岩(79.2 ± 0.8 Ma, 78.8 ± 0.9 Ma, 78.9 ± 1.9 Ma),平倉トーナル岩(74.2 ± 1.3 Ma, 75.2 ± 2.7 Ma),苦鉄質岩~中間質岩類(75.3 ± 4.6 Ma, 75.5 ± 0.7 Ma),細粒黒雲母花崗岩(72.2 ± 1.2 Ma),三峰山トーナル岩(69.9 ± 1.2 Ma)に区分した(Fig. 1).
変形構造について,85 Ma以前の高温型マイロナイト形成期(高木, 1997; 本研究ではM1とする)と合わせて,マイロナイト化した岩体と非変形あるいは異なるタイプのマイロナイト化した岩体の地質関係およびジルコンU–Pb年代から,マイロナイト化の時期を制約することで,M1からM3の3段階のマイロナイト化が認められた.まず,畑井トーナル岩の周辺部に分布するマイロナイト構造を持った約79 Maの中粒黒雲母花崗岩が,変形していない約75 Maの苦鉄質岩~中間質岩類に貫入されていることから,79~75 Maにマイロナイト化を受けた(M2)と考えられる.次に,72.2 ± 1.2 Maの細粒黒雲母花崗岩や69.9 ± 1.2 Maの三峰山トーナル岩がマイロナイト構造を持っていることから,72 Maまたは70 Ma以降にマイロナイト化を受けた(M3)と考えられる.
苦鉄質岩~中間質岩類の上盤側に位置する畑井トーナル岩との境界には,約79 Maの中粒黒雲母花崗岩マイロナイトが分布し,M2の面構造と貫入面がほぼ平行である.苦鉄質岩~中間質岩類は,M2の剪断帯に沿って貫入した可能性が高い.また,苦鉄質岩~中間質岩類の下盤側付近や貫入岩体内では,マイロナイト化を受けていないが,優黒質部と優白質部が縞状に引き延ばされた構造が認められる.この面構造は貫入面に平行であり,苦鉄質岩~中間質岩類と下盤側の平倉トーナル岩のジルコンU–Pb年代は共に約75 Maである.これらのことから,未固結の平倉トーナル岩に苦鉄質岩~中間質岩類が貫入した直後あるいは貫入時において剪断変形を被ったことで,縞状に引き延ばされた構造が形成されたと考えられる. 【引用文献】端山ほか, 1982, 地質雑, 88, 451-466; Sakakibara, 1995, Journal of Science, Hiroshima University, Series C, 10, 267-332; 島田ほか, 1998, 地質雑, 104, 825-844; 高木, 1997, 月刊地球, 19, 111-116; 竹内ほか, 2025, 5万分の1地質図幅「高見山」, 46-79.

