Presentation Information
[T13-O-14]Field occurrence and zircon U-Pb age of Miocene volcanic rocks in the Sai area, western Shimokita Peninsula, Aomori prefecture, Japan
*Yui KANAZASHI1, Yuji ORIHASHI1, Mizuha TAKEMORI1, Hideki IWANO2,3, Sota NIKI4, Minoru SASAKI1, Syu MORIAI5, Yoshihiro ASAHARA4, Tadashi AMANO6, Koji UMEDA1, Takafumi HIRATA3 (1. Hirosaki Univ. , 2. Kyoto FT, 3. Univ. of Tokyo, 4. Nagoya Univ., 5. Sanriku Geopark Promotion Council, 6. J-POWER)
【ハイライト講演】 東北日本の中期中新世は引張場と圧縮場が共存したリフト・ポストリフト遷移期であり,背弧海盆火山活動から島弧火山活動へ移行した時期でもある.この研究では佐井地域の地質踏査にもとづく地質図をベースに,火山岩の年代測定・全岩化学分析結果に基づいて引張テクトニクスの継続時期やマグマ成因について議論する. ※ハイライト講演とは...
Keywords:
Shimokita Peninsula,Miocene,Kinpachizawa Formation,Hinokigawa Formation,U-Pb age,subaqueous volcanic rocks
はじめに 青森県は中部~上部中新統がほぼ連続的に産し,火山岩・火砕岩を伴うことから,日本海拡大以降の火山フロントにおけるマグマ変遷を考える上で最も適した地域である(例えば,周藤ほか,1988).本研究では下北半島西部,佐井地域において地質踏査を行い,新たに地質図を作成した.また,同域に産する流紋岩質火山岩類,貫入岩についてジルコンU-Pb年代測定および全岩化学組成分析を行い年代層序の再検討を行った.
地質概要 下北半島西部の中新統は西岸域中央部に産する先第三系長浜層を取り囲むように分布し,その北部と南部の層序区分について見解が異なっていた(上村,1962;1975;箕浦ほか,1998).その後,伝法谷ほか(1998)や河野ほか(1998)は放射年代値を加えた中新統の年代層序の再検討を行い,北部の佐井層(上村,1962)とされた中新統を南部の金八沢層と桧川層(上村,1975)にまとめ,下位から金八沢層(Kp)・桧川層(Hg)・大間層(Om)および易国間層(Ik)に区分した.また, Kp・Omは頁岩・泥岩主体で流紋岩質火山岩・火砕岩主体のHgと安山岩質火山岩・火砕岩主体のIkがこれらと指交あるいは漸移関係にあることから,中新統は頁岩・泥岩の堆積場に流紋岩質―安山岩質火山岩・火砕岩の順に堆積したと考えた(伝法谷ほか,1998).しかしながら,Kp上部は玄武岩質溶岩および玄武岩質貫入岩が卓越しており(例えば,上村,1975),同域の中新世における火山岩類は玄武岩質―流紋岩質―安山岩質へと変化する.この火山岩類について,テクトニクスの変遷と合わせたマグマ成因の構築はこれまで行われていない.また,Kp・Hgの凝灰岩について約20~15 Maの既報FT年代(伝法谷ほか,1998)があるが,最近,南部のHg中流紋岩質溶岩から有意に若い13.3 MaのジルコンU-Pb年代が報告された(盛合ほか,2024).このことから,北部のHgについても年代層序の再検討が必要である.
結果と考察 佐井地域におけるHgは北西-南東に流れる古佐井川流域より以北約6 km2の陥没構造内に分布し,全体的に南西に緩傾斜している.下位のKpとは古佐井川流域を境に高角度不整合または正断層関係で接しており,分布域北東部では不整合の関係にある.分布域北西部では上位のIkに不整合に覆われている.Hgの産状は大部分が流紋岩質水中火山岩類からなり,稀に薄層の酸性凝灰岩を狭有する.流紋岩質ハイアロクラスタイトから13.318±0.072 Ma(2σ)のU-Pb年代値が得られ,盛合ほか(2024)が報告した南部HgのU-Pb年代と不確かさの範囲で一致した.Kpの産状は上村(1975)のいう南部の同層上部の産状と類似しており,玄武岩質の溶岩および貫入岩が卓越し,局所的に珪質泥岩が産する.また,本研究では佐井漁港南東部において珪質泥岩の上位に流紋岩質溶岩が産することを新たに見出し,14.63 ± 0.15 Ma(2σ)のジルコンU-Pb年代値を得た.本研究で作成した地質図において同流紋岩質溶岩はKp上部に属することから,これがKpの堆積年代の上限を示すと考えられる.Hg, Kp両層には斑晶鉱物組み合わせや斑晶量の異なる流紋岩質貫入岩脈が多数貫入しており,Hgでは玄武岩質貫入岩を伴わない.流紋岩質貫入岩は岩石学的特徴から磯谷型と願掛岩型に大別され,それぞれから13.440±0.087 Ma(2σ),11.635±0.082 Ma(2σ)のU-Pb年代値を得た.このことから流紋岩質貫入岩はHgの火成活動期の他に少なくとももう1つの活動期があったことが示唆される.
東北日本の中期中新世は引張場と圧縮場が共存したリフト・ポストリフト遷移期であり(中嶋,2018),この時期の火成活動は背弧海盆火山活動から島弧火山活動へ移行したとされる(例えば,吉田ほか,2020).佐井地域における中期中新世のテクトニクスは,本研究で得られた堆積構造や層序から少なくともHgの火成活動期まで引張場に置かれ,北西-南東方向の正断層を境に北東-南西方向伸張のハーフグラーベンが形成されたと考えられる.
本講演では更なる全岩化学組成データを加え,上述したテクトニクスの変遷に伴うマグマ成因についても考察する予定である.
引用文献 伝法谷ほか,1998,日本地質学会第105年学術大会講演要旨/河野ほか,1998,日本地質学会第105年学術大会講演要旨/箕浦ほか,1998,青森県の地質/盛合ほか,2024,地質雑,130,169-187./中嶋,2018,地質雑,124,693-722./周藤ほか,1988,地質雑,94,155-172./上村,1962,5万分の1図幅 佐井/上村1975,5万分の1図幅 陸奥川内/吉田ほか,2020,地学雑,129,529-563.
